第6話:お風呂上がりの水滴を消し去る謎の魔石
第6話をお読みいただきありがとうございます!
今回はお風呂上がり&洗面所編! 珪藻土バスマットと突っ張り棒という、現代の家庭でおなじみの便利アイテムが異世界人を困惑させます。
「はぁ〜……極楽、極楽」
ログハウスの脱衣所で、タクミは湯上がりの白い湯気をさせながらタオルで髪を拭いていた。
【極限加工】で自作したヒノキ風の浴槽に、温水器付きのボイラー(※魔石と配管の応用)。仕事終わりの一番風呂は、元ホームセンター店員にとって至高の癒やしタイムだ。
「タクミ様、お召し替えと新しいタオルをお持ちいたしました」
脱衣所の外から声をけてきたのは、すっかりログハウスの「お掃除担当」が板についた大聖女フィオナだった。
タクミが「ありがとうございます」とドアを開けると、フィオナの視線が、タクミの足元に敷かれたグレーの平らな板にくぎ付けになった。
「……? タクミ様、失礼ですが、その板は……? 濡れたお体のままお立ちですが、布のマットは敷かないのですか?」
「ああ、これですか? これは『珪藻土バスマット』ですよ。布のマットだと洗濯が大変ですし、カビが生えやすいですからね」
タクミが足をマットから一歩踏み外すと、フィオナは息をのんだ。
「え……!?」
つい先ほどまで濡れていたタクミの足裏が、まるで最初から濡れていなかったかのように完全にサラサラになっていたのだ。さらに、マットについた湿った足跡が、目に見えるスピードでスーッと色を失い、完全に乾いていく。
「す、水足が一瞬で消えた……!? 吸水……いいえ、水分そのものを異次元へ瞬間追放(追放魔術)したというのですか……!?」
「いやいや、追放なんて物騒な。微細な穴がたくさん開いていて、水分の蒸発が早いだけですよ。干す手間もいらないし、最高なんです」
フィオナは「微細な穴……次元の裂け目か……!」と勝手に恐れおののいていた。
◇
さらにその時、洗面所の奥でタオルの整理をしていたアルヴィスが、叫び声をあげた。
「な、なんという重力制御……! タクミ様! この壁と壁の間に浮かぶ『白い棒』はいったい何なのですか!?」
アルヴィスが指さしていたのは、洗面所の上の空間に取り付けられた『強力のぞみ突っ張り棒』だった。
ネジも釘も使わず、ただ壁と壁の間に突っ張って固定され、そこには何枚もの濡れたバスタオルが掛けられている。
「ああ、それは『突っ張り棒』です。壁に穴を開けずに収納スペースを増やせる優れものですよ」
「穴を開けずに……!? バスタオル数枚の重量を支え、空間に浮遊固定されているだと!? もしや、両端から相反する超高圧の『反発重力波』を壁面に叩きつけ、摩擦力を無限大に引き上げているのか……!?」
アルヴィスは狂ったように突っ張り棒の構造を観察し、ノートに『反発重力式・空中固定柱』と興奮気味に書き込んでいく。
「――ふぅーっ! 最高の湯であった……!」
そこへ、外で薪割りを終えたあとタクミの許可を得て二番風呂に与かったガルドが、湯気を立ち上らせながら脱衣所へ入ってきた。
腰にタオルを巻き、すっかり満足気な顔をしたガルドだったが、濡れた素足で珪藻土バスマットを踏んだ瞬間――その身体が硬直した。
「うおっ!? な、なんだこれは……!? 足の裏の水分が一瞬で消え去ったぞ!? これが神殿の『水デバフ瞬間解除の魔石』か……!?」
「ガルド様まで……! やはりあの魔石は、濡れた足裏から不浄を吸い尽くす神器……!」
「素晴らしい……! 重力制御の棒(突っ張り棒)に続き、水分追放の魔石まであるとは……!」
湯上がりでバスタオル一発のガルド、バスマットを拝むフィオナ、ノートに狂ったようにメモを取るアルヴィス。洗面所は一瞬でカオスと化した。
「……みんな、お風呂上がりに早く服着ないと僕湯冷めしちゃいますよ。ほら、冷えた麦茶でも飲んで落ち着いてください」
タクミは苦笑しながら自作の冷蔵庫から氷の浮かんだ麦茶を差し出し、脱衣所で騒ぐ一同をリビングへと促すのだった。
第6話をお読みいただきありがとうございました!
薪割りを終えて一汗かいたガルドが最高のお風呂とバスマットを体験し、洗面所での勘違い祭りに拍車がかかりました。
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