第5話:悪臭を消し去る曲がったパイプと、聖なる薬品
第5話をお読みいただきありがとうございます!
今回は宮廷魔導士アルヴィスが室内へ上がり、Pトラップ(排水管のS字構造)や水切りネットなどの水回り設備に大興奮する回となります。
「素晴らしい……! なんという神聖な居住空間なのだ……!」
スリッパを履かされ、リビングに通されたアルヴィスは、足元から伝わる床暖房の温もりにも震え上がっていた。
しかし、理系研究者としての彼の視線は、すぐにキッチン下の収納スペースへと向けられた。
「タクミ様! 不躾な質問をお許しください! この水回り……地下の悪臭や魔気が一切逆流してこないのはなぜです!? 通常の城や館なら、排水口から瘴気が上がってくるはずだ!」
「え? ああ、それは下に『S字パイプ(Pトラップ)』を取り付けてあるからですよ」
タクミはシンク下の扉を開けて見せた。
そこには、曲がりくねった金属製のパイプが通っている。
「わざと配管を曲げて、途中に水を溜めてるんです。この『封水』が蓋の役割をするから、下水……いや、地下の臭いが上がってこないんですよ」
「ひ、配管を……曲げて……水を溜める……だけ……!?」
アルヴィスは頭を抱えてガタガタと震え出した。
(重力と水圧の物理法則を利用して、完全に不可視の『重力水封障壁』を作り出しているというのか……!? 大掛かりな浄化魔導陣も使わず、ただのパイプの屈曲構造だけで瘴気を封殺するとは……なんという圧倒的な設計思想……!)
「それに、排水口にはこれをつけてますしね」
タクミが排水口のカゴから取り出したのは、ごく普通の『水切りネット』だった。
「この細かい網でゴミを受け止めて、詰まりを防ぐんです。もしぬめりが出たら、この『パイプ掃除用洗剤(パイプユニッシュ風)』を流せば一発で綺麗になりますよ」
「な……ッ!? その網目、先ほどの網戸と同じ『微細選別』の技術……! しかもその青い液はなんだ!? 配管内に潜む魔物のぬめりと邪気を分子レベルで溶解・浄化する『超強酸の聖液』か!?」
「いや、ただのアルカリ性洗剤ですけど……」
アルヴィスはノートに狂ったような速度で『重力水封理論』『溶解の聖液』と書き殴っていく。
「神よ……! 私は今日、世界の真理に触れてしまった……! どうか、私をこの神殿の『設備研究員』として置かせてください! 掃除でも何でもします!」
「ええと……じゃあ、アルヴィスさんはお風呂場の排水口掃除と、ネットの交換をお願いできますか?」
「ははぁっ! 喜んで聖液の儀式(パイプ掃除)を執り行わせていただきます!!」
こうして、大聖女、剣聖に続き、王国最高の天才魔導士までもがタクミの家で排水口を磨く生活がスタートしたのだった。
第5話をお読みいただきありがとうございました!
Pトラップと水切りネット、そしてパイプ洗剤のコンボで天才魔導士の理性が完全に吹き飛びました。
次回第6話では、お風呂上がりの「珪藻土バスマット」や収納の「突っ張り棒」を導入し、さらに異世界人たちを驚かせていく展開となります!




