第40話:暗雲の氾濫危機と、流体をつなぐ竹製サイフォン
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水上浮き畝によって豊かな食料拠点ができた南の湿地帯。
しかし今回、上流の山間部で凄まじい集中豪雨が発生! 押し寄せる大量の濁流と泥流に対し、タクミとリゼットの流体力学タッグが「電気も魔導も使わない自動排水インフラ」で立ち向かいます!
南の空を、見たこともない薄気味悪い紫黒色の暗雲が覆い尽くしていた。
風が湿り気を帯びて激しく吹き荒れ、湿原の葦が一斉に倒れ込む。
「たくみさん、大変です……! 上流の山脈観測点からの数値データが異常値を示しています!」
リゼットが作業着の袖をまくり上げ、泥のついた野帳を広げて駆け寄ってきた。メガネの奥の瞳には、珍しく焦りの色が浮かんでいる。
「上流での総降水量は過去最高レベル……あと数時間で、処理能力を超えた大量の濁流とスラッジ(泥流)がこの湿地全体へ一気に流れ込みます! 木道や高床小屋はもちろん、あの水上浮き畝まで完全に水没・全滅しますわ!」
「な、なんだと!? 立ち退く猶予すらないというのか!?」
ガルドが息を呑み、アルヴィスもペンを握りしめたまま息を詰める。
「避難はさせません……この場所を、僕たちのDIYインフラで守り抜きます!」
タクミの強い言葉に、リゼットがハッと息を呑んだ。
「でも、どうやって!? 外部動力を引いて大掛かりな排水ポンプを組む時間なんてありませんわ!」
「動力はいりません。自然の力――『サイフォンの原理』と『水圧と浮力』で動かすんです!」
タクミは【万能資材目録】と【極限加工】を同時起動!
太く強固な太竹を幾本も連結し、空気を遮断した密閉竹チューブを網の目のように湿地から下流の河川へと敷設する。
さらに、水門の可動部には『竹の空気浮き(フロート)』と逆流防止パッキンをセットした。
「増水して水位が上がると、竹フロートの浮力で水門が自動で一気に開放されます! そして位置エネルギーの差を利用した『竹製サイフォン排水管』が、連続して大量の水を下流へ吸い出し続ける仕組みです!」
「大気圧と高低差を利用した無電源の自動連続排水システム機能……!? まさに流体力学の極致……!」
リゼットは計算尺を弾き、タクミの設計図へ即座に加筆していく。
「たくみさん! サイフォン管の径をあと10%広げ、吐出ロのサイフォン頭部高さを調整してください! そうすれば排流効率は1.4倍に跳ね上がります!」
「了解です! リゼットさん、完璧な流体計算をありがとう!」
二人の完璧な連携によって、突貫工事で巨大な『自動逆流防止・竹製サイフォン水門』が集落の外周にそびえ立った。
直後――ゴォォォォォォッ!! という咆哮とともに、山から膨大な濁流が集落へ押し寄せた!
「来た……っ!!」
水位が急上昇したその瞬間――
――ガコンッ! ズズズズズッ!!
動力など一切使われていないはずの水門が、浮力によってスムーズに持ち上がり、連結された数十本の竹製サイフォン管が豪快な音を立てて濁流を吸引し始めた!
「吸ってる……! 大量の濁流が、集落を迂回してどんどん下流へ吐き出されていくわ!!」
リゼットが帳簿を抱え、大歓声を上げる。
集落の敷地内と水上浮き畝の水位はピタリと安全水域で止まり、襲いかかる氾濫の脅威を見事に受け流してみせたのだ!
「すごい……! 自然の猛威を、自然の理で制した……!」
アルヴィスが真鍮の万年筆で、その歴史的瞬間をノートへ激しく刻み込む。
しかし、タクミは静かに上流を見据えていた。
「水は防げた……。でも、本当の勝負はこれからだ。水の後ろから押し寄せてくる『超大量の泥流』を止めないと……!」
第40話をお読みいただきありがとうございました!
無電源のサイフォン水門DIYにより、第一波の大氾濫を見事にシャットアウト! タクミとリゼットの理系・現場タッグが輝く回となりました。
次回第41話は湿地編のクライマックス(前編)!
水門に押し寄せる膨大な泥流に対し、泥を瞬時に硬化させて堅牢な防壁に変える「多段式泥質改良ブロック(スラッジ・ロック)」で決戦に挑みます!




