【閑話⑬】明日へ紡ぐ言葉と、一本のペン(後編)
【閑話⑬】をお読みいただきありがとうございます!
アルヴィスが秘めていた過去の挫折と、タクミのDIYに対する真摯な情熱を聞いた前編。
今回は後編として、彼の思いを受け止めたタクミからの心温まるサプライズと、二人の深い友情と信頼を描きます!
「……そんな過去があったんですね。話してくれて、ありがとうございます」
静かに耳を傾けていたタクミは、温かいハーブティーのカップを置くと、優しく微笑んだ。
「でも、アルヴィスさん。僕は大賢者なんて大層な人間じゃないですよ。ただ……目の前で困っている人や、寒さに震えている人がいたら『もっと快適にできないかな』って考えて、手を動かしているだけなんです」
「それこそが……私には眩しく、尊いものに見えるのです」
アルヴィスが古びたノートを愛おしそうに撫でる。
「僕のDIYをそんなふうに見て、ずっと大事に記録してくれていたなんて……本当に嬉しいです。だから――これ、アルヴィスさんに受け取ってほしいんです」
そう言ってタクミがポケットから取り出したのは、見たこともない小さな木箱だった。
【万能資材目録】と【極限加工】によって、今夜のアルヴィスの話を聞きながら心を込めて組み上げたものだ。
「これは……?」
「アルヴィスさんの新しい相棒です」
木箱を開けると、そこには洗練された流線型の『真鍮と木目のハイブリッド万年筆』と、しっとりとした手触りの『合成紙(ユポ紙)製・高耐久防水製本ノート』が収められていた。
「万年筆のペン先には摩耗に強いイリジウム合金を使い、インクは耐水性・耐光性に優れた特殊顔料インクを入れています。そしてノートは水に濡れても破れず、百年経っても劣化しない特殊な紙で作りました」
タクミはアルヴィスの目を見つめ、まっすぐに語りかけた。
「アルヴィスさんが僕たちの旅やDIYを記録してくれるから、僕も安心して前に進めるんです。アルヴィスさんのペンと言葉は、僕たちの『道しるべ』なんですよ」
「私……の言葉が……タクミ様の……道しるべ……」
アルヴィスは震える手で、ずっしりとした重みのある万年筆を取り出した。
キャップを外し、防水ノートの頁にそっと滑らせる。
――サラサラ……ッ。
まるで氷の上を滑るような滑らかな書き心地とともに、深みのある漆黒のインクが、滲むことなく美しく羊皮紙に刻まれていく。
「な……なんという滑らかな書き味……! インクを浸す手間もなく、掠れることもなく、思い描いた言葉がそのまま紙へと紡がれていく……!」
「これから先、どんな大雨や湿地地帯に行っても、そのノートとペンならアルヴィスさんの大切な記録が濡れて消えることはありません。だから……これからも僕の隣で、世界を記録し続けてくれませんか?」
タクミがニッコリと手を差し伸べる。
アルヴィスは溢れ出る涙を拭うことも忘れ、握りしめた万年筆を胸に抱きしめると、深々と頭を下げた。
「はい……! はいっ……! 喜んで……! この命ある限り、大賢者タクミ様が切り拓く『希望の軌跡』を……一枚残らず、このペンで後世へと書き残してみせます……!!」
夜空に輝く満天の星々と、温かい焚き火の火光の下。
一本のペンによって強く結ばれた二人の絆は、これからの過酷な開拓の旅を照らす、何よりも確かな光となるのだった。
【閑話⑬】をお読みいただきありがとうございました!
アルヴィスの過去と決意、そしてタクミからの手作り万年筆&防水ノートのプレゼント描いた感動系閑話の完結です。
次回からは、いよいよ新章『第5部:南の広大な湿地・泥沼開拓DIY編(第37話〜)』へと突入します!
足場の悪さと湿気に苦しむ南の地で、泥上敷板や竹網蛇籠、高床式通風建築といった「湿地・泥沼攻略DIY」がいよいよスタートします! 引き続き応援よろしくお願いいたします!




