【閑話⑧】留守中のログハウスと、秘密の快適ライフ
本編の合間の閑話をお届けします!
タクミたちが港町や北の開拓地へ長旅に出ている頃……王都郊外の誰もいないはずのログハウスで、なにやら怪しい(?)人影が……?
元・魔王軍四天王ヴァルガの、秘密のお留守番エピソードです!
タクミたちが王都を離れ、遠く北の地で開拓に奮闘していた頃――。
王都郊外の静かな森に建つ、タクミの自宅兼拠点である『DIYログハウス』。
無人のはずのその家の中に、ひとりの大男がいた。
元・魔王軍四天王の一角、『剛雷のヴァルガ』である。
「む……今日の温水洗浄便座の水加減も絶妙だな……『中』から『弱』への切り替えが至高……」
重厚な鎧を脱ぎ捨て、タクミからもらった快適な綿100%の部屋着に身を包んだヴァルガは、スッキリとした表情でトイレから出てきた。
魔王バアルから「留守中のログハウスの管理と庭の畑の水やり」を命じられたヴァルガであったが、今やその役割を遥かに超えて、この劇的ビフォーアフターされた現代DIY住宅の虜となっていたのだ。
「フッ……次はキッチンか。大賢者タクミ殿の『秘伝のレシピ帳』によれば、IHクッキングヒーターとテフロン加工のフライパンを使えば、火加減の失敗なく極上のオムレツができるはず……」
ピカピカに磨き上げられたシステムキッチンの前に立ち、手際よく卵を割り入れるヴァルガ。
かつて人間たちを恐怖に陥れた四天王の手つきとは到底思えない、洗練された手さばきでふわとろのオムレツを完成させると、高級ソファへと腰を下ろした。
「高気密・高断熱の室内……適切な湿度……そして腰を優しく包み込む低反発クッション……。はぁぁぁ……至福……魔王城の冷たく硬い玉座とは比べものにならん……」
ヴァルガは幸せそうに目を細め、だらしなくソファに深々と埋もれながらオムレツを口に運んだ。
――ガチャ。
「あ、すみません。タクミ様から頼まれていた昔の図面を取りに……って、ええええぇぇぇっ!?」
合鍵を使ってドアを開けたアルヴィスが、入口で固まった。
目に入ったのは、部屋着姿でソファに寝そべり、ハフハフとオムレツを食べながら快適空間を満喫しきっている元・四天王の姿だった。
「ヴ、ヴァルガ殿……!? あなた、ここで一体なにを……!?」
「あ……アルヴィス殿っ!?? ち、違う! これはだな! 我が主・バアル様からの命令で、この家の防犯と設備の動作確認を……その、入念に行っていただけであってだな……っ!」
跳ね起き、真っ赤な顔で言い訳を叫ぶヴァルガ。
アルヴィスは呆れたように深々と溜め息をつくと、そっとノートを開いてペンを走らせたのだった。
『観察手記:現代DIYの快適性は、かつての凶悪な四天王すらも牙を抜いてダラけさせる模様。恐るべき破壊力である……』
閑話をお読みいただきありがとうございました!
留守中のログハウスで、すっかり現代DIYの快適性の虜になっていたヴァルガのお留守番回でした。




