第30話:氷世界の温室ドックと、熱々味噌鍋の宴(北の開拓地編完結)
第30話をお読みいただきありがとうございます!
住宅の防寒、床暖房、融雪ロードヒーティングと開拓村フロストビルの環境を劇的に改善してきたタクミたち。
今回は『北の極寒開拓地編』の完結回! 氷点下でも新鮮な野菜が育つ「大規模バイオマス温室ドック」の設置と、村人たちとの温かいお別れ宴会を描きます!
寒風が吹きすさぶフロストビル。しかし、村の中央にはこれまで見たこともない巨大な「光り輝くドーム」がそびえ立っていた。
「た、タクミ殿……! これが本当に……雪の中で野菜が育つという『温室』なのですか……!?」
開拓リーダーのレイノルトが、見上げるような透明ドームを前に声をもらす。
「はい! 耐候性と高断熱性を兼ね備えた『二重中空ポリカーボネートパネル』で覆った『バイオマス温室ドック』です!」
タクミが入口の二重気密ドアを開けると――
――ふんわりっ。
外の極寒が嘘のように、まるで春の陽気のような温かい空気と湿った土の香りが一行を包み込んだ。
ドーム内では、ペレットストーブの余熱と前作で作ったコンポスト(有機堆肥)のぬくもりを利用した『地熱循環式・高床菜園』が整備され、青々とみずみずしい白菜やネギ、大根、ニンジンがすくすくと育っていた。
「「「雪の中で……青々とした野菜が実っている……!?」」」
村人たちが感涙を流しながら、採れたての白菜や大根を手に取る。
「冬場にビタミンやフレッシュな野菜が摂れないのは、寒冷地での大きな健康リスクですからね。これで一年中、安全で新鮮な野菜が食べられますよ!」
「寒冷地の過酷な気候を、半透過性高分子パネル(ポリカーボネート)とバイオマス熱で『常春の領域』へと変えてしまうとは……! まさに天地開闢の偉業です……!」
アルヴィスが激しい勢いでノートに筆を走らせる。
「よし! 温室の完成とフロストビルの大改修成功を祝って、今夜は『極上海鮮&採れたて野菜の熱々味噌鍋パーティー』にしましょう!」
その夜、集会所のあたたかな床暖房の上で、特大のステンレス鍋がぐつぐつと音を立てた。
港町ポート・ヴィルから真空パックで運んできた鮮魚や貝、そして温室で収穫したばかりのシャキシャキの白菜や甘い大根が、濃厚な味噌だしと合わさり極上の湯気を立ち上らせる。
「〜〜〜〜〜っ!? う、うめぇぇぇっ!! 体が芯からじんわり温まっていくぞ!!」
「外は猛吹雪なのに、家の中はポカポカで、こんなに甘くて美味しい野菜と魚介が食べられるなんて……夢のようです……!」
レイノルトをはじめ、村人たちが笑顔で熱々の鍋をつつく。
「ふはは! このミソナベというやつ、濃厚なスープが身に染み渡る! 寒冷地のDIYも乙なものだな、タクミ殿!」
作業着姿の魔王バアルも、ガルドやフィオナと並んでハフハフと熱々の大根を頬張っていた。
「タクミ様、寒さに震えていた村の皆さんが、こんなにも温かく幸せそうな顔をしていますね」
「ええ。住む場所が温かくなって、美味しくて温かいご飯が食べられれば、どんな過酷な土地でも人は笑顔で暮らせますから」
タクミが優しく微笑んでいると、アルヴィスが新たな羊皮紙の巻物を広げた。
「タクミ様、王都からの緊急連絡です! 次は王国東部に位置する『広大な乾燥荒野&岩山地帯』にて、大規模な大規模水路建設と岩盤掘削、そして砂塵対策の要請が届いております!」
「荒野と岩山ですか……! よーし、待ち受ける困難が大きいほど、DIYのやり甲斐がありますね!」
タクミは力強く頷いた。
「レイノルトさん、皆さん! フロストビルはもう大丈夫です。僕たちは次の街へ向かいます!」
「タクミ殿……! あなた方からいただいたこの『温もり』と『DIYの心』は、絶対に絶やしません! 本当にありがとうございました!!」
村人たちの心からの感謝と温かい歓声に見送られながら、タクミたちは次なる開拓の舞台――『東の乾燥荒野地帯』へと向けて旅立つのだった。
(第3部:北の極寒開拓地編 ―フロストビル編・完―)
第30話をお読みいただきありがとうございました!
中空ポリカーボネート製温室ドックと、熱々味噌鍋パーティーを経て、北の極寒開拓地編が見事に完結となりました!
次回第31話からは、舞台を広大な『東の乾燥荒野・岩山地帯』へと移し、硬質岩盤の掘削・集水パイプライン・防塵シェルターといった「荒野・岩山開拓DIY編」がスタートします! 引き続き応援よろしくお願いいたします!




