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魔境に自分好みの家をDIYで建てたら、居心地が良すぎて「絶対不可侵の神殿」と拝まれていた件  作者: dapon


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第2話:スリッパを履かせたら、足元から天国が見えたらしい

第2話をお読みいただきありがとうございます!

今回は「ただのおもてなし」のつもりが、異世界人にとっては至高の体験になってしまうお話です。

「あのー……大丈夫ですか?」


玄関ドアを開けたタクミの視界に飛び込んできたのは、血まみれで真っ青な顔をした少女と、今にも倒れそうな大柄の剣士だった。


「ひっ……!」

「大聖女様、お下がりを……っ!」


二人は弾かれたように身構えたが、タクミの手にはノコギリも包丁もなく、ただの『お客様用スリッパ』が二足握られていた。


「すごい怪我じゃないですか。まあ立ち話もなんですし、中で休んでいってください。あ、靴は脱いでこれ履いてくださいね」


タクミは玄関のたたきに、ホームセンターで三足セット九八〇円で売っていた低反発スリッパをポン、と置いた。


「く、靴を脱ぐ……? 館の中でか……?」


ガルドは戸惑いながらも、タクミの醸し出すあまりにも無害な雰囲気に毒気を抜かれ、指示通りにゴツイ鉄のブーツを脱ぎ捨てた。フィオナも震える手で靴を脱ぎ、揃えられたスリッパにそっと足を滑らせる。


――その瞬間。


「「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」」


二人の身体が、落雷に打たれたように激しく硬直した。


(な、なんだこの心地よい弾力と、足裏を包み込むような優しさは……!? 歩くたびに、脚の疲労と蓄積した魔力酔いが綺麗に霧散していく……!?)


ガルドは驚愕のあまり、己の足元を二度見した。

タクミが提供したのは、単なる『ウレタン製の低反発スリッパ』だ。しかし、【居住域絶対補正】が効いた室内で着用したことにより、あらゆる衝撃を吸収し疲労を回復させる『衝撃緩和と治癒の神具』へと昇華されていた。


「あ、足元から天国の洗礼が……! わ、私の足を、柔らかい雲が抱きしめてくれています……!」


フィオナはポロポロと涙を流しながら、室内へと一歩を踏み出した。

すると、さらなる衝撃が二人を襲う。


「温かい……!?」


裸足の裏(スリッパ越し)から、じわ〜っと心地よい温もりと、身体の芯まで温まるような熱が伝わってきたのだ。


「ええ、木造の床は冷えますからね。床下に『温水パイプ』を通して床暖房にしてあるんです。寒かったでしょう」


タクミは何でもないことのように笑う。

極寒の魔境において、床から均一に熱が立ち上るなどあり得ない。二人の眼精魔術には、床下に張り巡らされた無数の管から、聖水のような熱エネルギーが循環しているのが見えていた。


(床下に大魔導陣を組み込み、空間全体の温度を完璧に制御しているだと……!? この神殿の主、やはりただ者ではない……!)


「ささ、リビングのソファへどうぞ。今、温かいお茶淹れますね」


タクミに促され、二人はふかふかの三人がけレザーソファー(※タクミが合皮と木枠で自作したもの)に腰を下ろした。沈み込むような座り心地に、ガルドは「くっ……体が溶ける……!」と声を漏らし、剣士としての理性を失いかけていた。


しばらくして、タクミが湯気の立つ湯飲みを二つのせて運んできた。


「はい、緑茶です。急ピッチで家を建てたから、これくらいしかなくて」


「あ、ありがとうございます……」


フィオナは震える両手で湯飲みを受け取った。

一口、口に含む。


「――っ!?」


瞬間、フィオナの瞳が大きく見開かれた。

全身の細胞が歓喜の声を上げる。体内に溜まっていた瘴気が、喉を通る温かい液体によって一瞬で分解・浄化されていくのが分かった。


(なんという密度の高潔な聖水……! 一口飲んだだけで、私の傷と魔力枯渇が完全に癒えていく……!? これが『緑茶』と呼ばれる神の秘薬……!)


「ふぅー、生き返るなぁ。やっぱり家を作った後の緑茶は最高だ」


タクミは自分の湯飲みをズズッとすすり、心底幸せそうに目を細めた。


ガルドもまた、お茶を飲み干すとボロボロだった体力が完全に回復していることに気づき、意を決してソファーから立ち上がり、床に両膝をついた。


「お戯れはここまででございます、大賢者様……! 我々を救うため、あえてお姿を偽り、この極上の秘薬と神器(スリッパ)を下さったこと、深く感謝申し上げます!」


「……はい?」


タクミは湯飲みを持ったまま固まった。


「私は聖王国大聖女フィオナ! そしてこちらは剣聖ガルド! 神託に従い、この死の樹海へ参りました! どうか……どうか我ら愚かな人間に、そのお力をお貸しください!」


美しい大聖女が、スリッパを履いたまま床に額をこすりつけて拝んでくる。


「え、いや、あの……僕、ただのホームセンター店員なんですけど……?」


タクミの困惑をよそに、異世界人たちの盛大な勘違いは、ますます深まっていくのだった。

お読みいただきありがとうございました!

スリッパ、床暖房、そして緑茶(ただの市販品)によって、タクミは完全に「隠棲中の大賢者」として認定されてしまいました。


次回は、二人があまりの居心地の良さに「ここから帰りたくない」と言い出し、さらに網戸やキッチン周りでカルチャーショックを受けるお話です!


「面白かった!」「タクミの勘違いされっぷりが良い」と思ってくださったら、ぜひブックマークや評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると嬉しいです!

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