第11話:神殿に戻ったら、魔王軍の幹部が正座していた
第11話をお読みいただきありがとうございます!
子爵領のリフォームを終えてログハウスへ帰ってきたタクミたち。
しかし、留守中に「ある不審者」が神殿へ侵入を試みていたようで……? 新たな勘違い被害者の登場です!
「ふぅ、無事にリフォームも終わって、やっぱり我が家が一番落ち着きますね」
バルカス領での大規模DIYを終え、数日ぶりに『死の樹海』のログハウスへ戻ってきたタクミ。玄関の引き戸を開け、スリッパに履き替えようとしたところで、リビングの光景に固まった。
「……あれ?」
リビングのローテーブルの前で、禍々しい角と黒い翼を生やした巨漢が、深々と正座をして震えていた。
「な、なんですかあの方は……!?」
タクミの後ろから入ってきたフィオナが息をのむ。ガルドとアルヴィスが一瞬で武器と魔導書を構えた。
「フィオナ様、お下がりに! あいつは……魔王軍四天王の一角、『滅殺のヴァルガ』だ!!」
「な、なぜ四天王がこの神殿の中に……!?」
ガルドの叫びにも、当のヴァルガは微動だにしない。いや、正座したままガタガタと膝を震わせ、蒼白な顔で滝のような汗を流している。
「お、お許しくだされ……神よ……ッ!」
魔王軍最強と恐れられる男が、蚊の鳴くような声で命乞いを始めた。
「一体どうしたんですか?」
タクミが首をかしげると、ヴァルガは震える指で玄関脇の壁を指さした。
「わ、我は……主(魔王様)の命を受け、この地に突如現れた怪しき結界の調査に参ったのだ……。留守と知り、ドアの隙間から内部へ忍び込もうとしたのだが……」
ヴァルガの回想によると、こうだ。
留守中のログハウスに侵入しようとドアノブに手をかけた瞬間――ドア枠に貼られた『高密度ウレタン隙間テープ』の絶対空間圧着に跳ね返された。
ならばと勝手口へ回ったが、そこには『人感センサーライト』の爆光と『防犯砂利』の爆音が待ち受けており、精神を削られた。
命からがら窓の隙間からすり抜けようとしたものの、今度は『網戸(24メッシュ)』の微細防魔網に激突して魔力を削ぎ落とされ、命からがら室内へ滑り込んだ時には、全身の魔力を使い果たして文句なしの完全敗北を喫していたのである。
「そして……土足でこの聖域に踏み込んだ瞬間、足元に敷かれた『玄関マット』が我の靴裏の穢れと魔気を一切合切吸い尽くしたのだ……ッ!」
「あー、泥落とし用のコイルマット(屋外用)ですね。靴の泥をしっかり落とさないと、リビングが汚れちゃいますから」
タクミがあっさり言うと、ヴァルガは「ひぃぃっ! 泥落とし(穢れ祓い)の神器……!」とさらに体を丸めた。
「戦わずして四天王を無力化し、正座させて改心させるとは……! やはりタクミ様の神域は、魔王軍すら一瞬で浄化してしまうのですね……!」
フィオナが胸の前で手を組み、うっとりとタクミを仰ぎ見る。アルヴィスは狂ったようにノートへ『自動捕縛・改心陣(泥落としマット)』と書き込んだ。
「ええい、お前! 神殿の主に無礼だぞ! ほら、これでも飲んで頭を冷やせ!」
ガルドが冷蔵庫から出してきた冷えた麦茶をヴァルガの前にドンッと置く。恐る恐る口をつけたヴァルガは――
「――ッ!? な、なんだこの頭が冴え渡る聖水は……!? 邪気が……我の中の破壊衝動が綺麗に消えていく……!?」
麦茶の一口で完全に毒気を抜かれた四天王ヴァルガは、涙を流しながら叫んだ。
「我は決めた! 魔王城へ戻り、魔王様にもこの『スリッパ』と『麦茶』の素晴らしさを伝え、人間との和解を進言する!!」
「えっ、あ、はい。お気をつけて……?」
こうして、タクミが留守にしていた間に、魔王軍との全面戦争の危機はただの防犯DIYグッズと麦茶によってあっさり回避されるのだった。
第11話をお読みいただきありがとうございました!
留守中の自動防衛DIY(隙間テープ、防犯砂利、網戸、泥落としマット)のフルコンボにより、魔王軍四天王があっさり正座・改心してしまいました。
次回第12話は、ヴァルガの報告を受けた魔王本人が「ならば余自らがその神殿を確かめる!」と忍び込んできて、今度は『温水洗浄便座』の衝撃に打たれるお話です! 引き続きよろしくお願いいたします!




