第25話 ―僕らは皆、ついている―
そういえば、ナジーム爺さんに聞きたい事があったのを思い出した。俺はその話題に触れようとしたのだが、その前に爺さんから声をかけられる。
「そういえば、いつだったか、この国の第12王女を名乗るプリシア・アクシアスというお方が、お主の事を訪ねてきたが、もう会えたかのう?」
――はぁ……。
俺は、あの姫のせいで散々な目に遭ったことを、ナジーム爺さんに愚痴った。
「ふぉっふぉっふぉ。そうかそうか。そりゃ、さぞ災難な目に遭ったのぅ」
「さすがに笑えないんだが……」
「ふぉっふぉ……しかし、まぁ。またあの御仁がお主の知恵を拝借したいと言ってきたら、その時もまた手を貸してやるといいぞい」
「普通に嫌だけど?」
「世の中、長い物には巻かれろ。これもまた、生きていく上での知恵だからのう」
ああ、肝に銘じるまでもないし、出来ればもう会いたくもないけどね。
「ところで、爺さん、ちょっと聞きたいんだけどさ、あの呼び鐘ってもしかして・・・魔法の道具的なものだったり?」
「うんむ、中心街でそれなりの屋敷ならどこにでも付いてるぞい。なんでも微弱な魔力を飛ばして屋敷の中のある呼び鈴を鳴らしてくれるようじゃ」
「へぇ――」
俺は、一応メモ帳にその仕組みを書きとどめておく。どの道いずれ王立図書館にも行く事になるのだ、気になる事はメモっておいて損はない。
「よし、それじゃあさっそくマルコー商会へ行ってみるわ」
「うんむ。あちらさんはうちの重要なお客さんじゃて、失礼にならんようにな」
―モテキ到来?
マルコー商会は、ナジーム商会からだとさらに1時間程。
現代人だとここはやっぱり何かしらの交通手段が欲しくなるところ。
しかし、整地されているとはいえ、石が敷き詰められた道はゴツゴツしているし、馬車以外での通行は逆に危険か。
などと思っていると、辺りの雰囲気がどんどん怪しく変わり始めてくる。先ほどの洗練された空気は一転し、お店もド派手なピンクの看板だったり、一体何を提供しているのかよく分からない謎のお店も・・・。
――こりゃ歓楽街というやつかな?夜の街だけに今は閉まっているお店も多いし。何にしても今まで見てきた街の顔が表だとすれば、こっちはどうみても裏って感じだよなぁ…。
「あら、旦那。こんな真昼間から店探しかい?残念だけどこの時間じゃどこもまだ空いてないよ」
歩いていると、気軽に店の周りを掃除している女性が話しかけてきた。年齢は割と高めだが、素晴らしいまでのナイスバディである。質素な服を着ていると言うのに出るところが出すぎて、かえって目のやり場に困る・・・。
うん、実際にこういうお店は謎過ぎて行こうと思わなかったがこのお姉さんが相手してくれるなら、全然問題ない。寧ろ、今すぐにでも求婚してささやかながらも慎ましい家庭を築けるんじゃないかと思えるぐらい・・・・。
「ちょっと旦那?・・・なんだいさっきから私の胸ばっか見てぼーっとして・・・本当にそういう事だったら、夜にまた来なよ。相手してア・ゲ・ルから♡」
あかん、これは堕ちる・・・。
というかそういう目的でここへ来たわけではない。
「いやいやぁ、お姉さんが本当に美人なんで、ちょっと一目惚れしちゃった」
「あらまぁ、お世辞でもうれしいねぇ。でも、本当はとっくに隠居して今はお店の方を任されているのさ。ホント、歳取ってババアになると私らみたいな女はすぐに相手にされなくなっちまう・・・因果な商売さ」
「そんな歳って…失礼ですけどいくつなんですか?」
「どうだろう、もう30超えたのには違いないねぇ・・・お客を取れるのはもっと若くないとダメだね。女の人生って儚く短い、だからこそ男はそれを貪りたくて仕方ない――ま、これからの人生もあるしさ、若い子の相談役として切り盛りしてるのも―――」
俺は唐突に、その箒ごと女性の手を握りしめていた。
「全然、まだまだ美しいですし!30だなんて本当に若いですよ!!というか、お姉さんならきっと40でも50でも美しいですし、これから絶対に良い出会いもありますって!」
「・・・そ、そうかい・・・?いやだぁ、何だか柄にもなく照れちゃうじゃないか~///」
いかん、柄にもなく熱くなってしまった。
と言うか30でもうババア扱いなんて、この世界の基準は一体どうなっているんだ?いや、違うな。年齢なんて関係ない、見た目が重要なんだ。こんな奇麗なお姉さんを店番にしている時点で美意識が低いと言わざるを得ない。
「あ、それで話の腰を折るようですみませんが、マルコー商会ってこの辺にあるんですよね?」
と、言った瞬間、なぜかお姉さんの目が少し冷めたように見えた。
「マルコー商会?・・・ふぅ、なんだい、あんたもそっちの気なのかい?ちょっと期待して損しちゃったよ」
なんだなんだその急な熱の冷め方は。
「いや、俺はナジーム商会のもので、まぁいわばお使いみたいなものっす」
「ああ、ナジームさんところの。いいねぇ、ああいう誰も思いつかない事で大きな一発当てられる御仁様って…私も少しはお近づきになりたいものだねぇ」
あかん、今後は目がお金になってしまっている・・・。
そうして色々と出会いがあった中、俺はようやくマルコー商会を見つける事が出来た。場所が歓楽街なのもあって、その風貌もひと際場所に馴染む感じに仕上がっている。
そういや、マルコー商会ってそもそもどんな商会なんだろう?
爺さんが言うに、特段あくどい事はしてないとは言ってはいたが・・・。
幸い、こちらは門番らしき男がいたのですぐに要件を言う事ができた。
「なんだおめぇ、って…おめぇあの時の男じゃねぇか!」
その小太りな男は記憶にある。前に工房に乗り込んできた借金取りの一人だ。
「なんでぇ、お前、わざわざ俺に会いに来てくれたのかぁ?嬉しいねぇ」
と、言いながら何故か俺の体を撫でながら色んな部位を触りまくってくる。
「違いますよ!カリメアさんに会いにきたんですよ!!」
ここは断固拒否の姿勢を貫かないと男で男を捨てるハメになりかねない。
「チッ、なんだよ。また姐さん目当てか。ちょっと待ってな」
そして数分も待たないうちに俺はすぐに屋敷の奥へと案内された。屋敷中になにやら薔薇のような甘い匂いが漂っている。
それにしても‥‥
「あらぁ、可愛い坊ちゃんねぇ」
「いいの?こんな真昼間からこんな所来ちゃって」
「私の部屋ここだから、終わったら寄ってねぇ~」
と、現れるは美女軍団。
それも皆何故か俺に好意的すぎる。
もしかすると、とうとう、ついにやってきたかもなぁ・・・。
モテキってやつが!!!
そんな数多の誘惑を越えて、ようやく俺はマルコー商会代表、カリメアの部屋へと案内された。
「おや、やっと私の元へ来てくれたのかい?坊や」
この部屋に入った途端、先ほどの香りが一段と強くなる。相変わらず燃えるようなワインレッドの髪とその瞳、そして少しの老いも感じさせないそのナイスバディは健在だった。
「お久しぶりです、今日はナジームさんに代わって話をしにきました」
「ふぅん、ナジーム爺のねぇ…でも、まぁそんな固い話は抜きにして・・・」
そう言うと、カリメアはその白い手を俺の首に回し、顔を急接近させてきた。
「ねぇ、分かるだろう?そのいい体で、アタイを満足させておくれよ・・・ねぇ」
おうおうおう!待て待て待て!俺のマテ貝よ!!
今日はそういう事を、けしてそのような不埒なことを望んで来たわけじゃない。個人的にはそのままそういうことを進めても全然いいんだけど!
「き、気持ちは嬉しいんですけど、今日は商売の話をですね・・・」
「なんだい、つれないねぇ…アタイのココはもうこんなに我慢できなくなっているというのに…」
ヤバイ、カリメアはもう完全にスイッチが入ってしまっているらしい。
首に両手を絡ませながら、体を密着させ、俺の背後に回り込み耳元で少し荒い息遣いを混ぜるように囁いてくる。
ああ…やばい耳がなんだか変な気持ちになっちゃう。
それに、そんなにいやらしく体を密着させられたらさすがに俺のマテ貝も我慢できなく・・・・・・。
ん?
あれ?
俺のケツの後ろになにかもう一つのマテ貝・・・いや、これは、なんだ・・・なんだかとてつもなくぶっとくて巨大な、ナニかが当たっている気がするのだけど・・・?
「ん、んん・・・はぁ、はやくぅ・・・」
「あの、カリメアさん?」
「なんだい、もう焦らないでおくれ」
「いえ・・・その・・・さっきから俺のお尻を突き刺そうとしているそのコレは一体?」
「なんだい・・・興が覚めるねぇ。そりゃついているんだから当たり前だろう?」
「つい・・・てる?」
「そう、ついてるのよ♡」
―――それって、つまり・・・アレがついて今まさに俺の穴を狙っている。
なるほど、そういう・・・そういう――――
「い、いやだああああああああああああああ!!!!!」




