三鬼
同時刻。四鬼が溜まっている場所では氷鬼、炎鬼、風鬼は相変わらず言葉を交わすことなく各々の時が流れていた。
しばらくすると、窓際に立って真っ暗闇の外を眺めていた風鬼がふと口を開いた。
「雷鬼、死んだって」
風鬼がそう言うと椅子に腰掛け本を読んでいた氷鬼は本から一度視線を外し、風鬼を見た。しかし、何も言葉を発することなく再び本に視線を戻した。炎鬼は一度も風鬼を見ることなく、机に置かれているキャンドルを眺めていた。
「二人とも冷たいなぁ。別に仲間ってわけじゃないけど、それなりに一緒に過ごした仲なのに」
風鬼はそう言うとため息をついた。
「…で、なんで死んだの? まさか、殺されたとか言わないでしょうね」
氷鬼は本から目を離すことなく興味が無さそうに尋ねた。
「そのまさかでやられたみたいだよ。四郎園楓に」
風鬼がそう言うと氷鬼は本に栞を挟んで閉じた。そして、組んでいた足を組み替えると風鬼に「詳しく聞かせてもらえる?」と尋ねた。
風鬼は事の顛末を説明した。
「まぁ、雨も降っているし、風が完全に教えてくれたわけじゃないけど、今入った情報ではそんな感じかな。でも四郎園の件に関しては本当かどうか分からない。風も錯綜としているんだ」
「でも、雷鬼が殺されてその場に四郎園もいたのでしょう? それなら確定事項よ。
最近、雑魚と群れてお山の大将を気取っていたのが悪かったのでしょうよ。当然の報いだわ」
氷鬼はそう言うと再び本を広げた。
「氷鬼は相変わらず自分に関わること以外には興味を持たないんだね」
「まぁ、その通りね。だって、どうでもいいじゃない。誰がどこで何をしてどう死のうと。私の人生に何一つ彩を与えるわけではないでしょ」
「彩って。自分に関わる誰かが死んだら楽しいわけ?」
「あら、それは心外だわ。復讐の為に鬼になった貴方達と一緒にしないでもらえる? 私は私である為に、私自身を守るために鬼になったのよ」
「ふーん、それってもしかしてボクたちのことを侮辱しているの?」
風鬼は少し氷鬼へ詰め寄る。氷鬼も同じように風鬼へ詰め寄った。すると、今まで黙って見ていた炎鬼は二人の間に割って入った。
「よせ、我々は互い同士で戦わないという約束でここにいるのだろう」
炎鬼が重く低い声でそう言うと氷鬼は鼻で笑った。
「約束なんて無意味なことよ。口約束も書面に書かれた正式な約束も全て等しく無意味だわ。クズは平気な顔して約束を破るのよ」
「で、結局どうしたいの? オバサン」
「あんまり調子に乗んなよクソガキ。あの日のようにボコボコにしてやろうか?」
氷鬼がそう言うと風鬼はニヤリと笑った。
「あの日と同じだと思わないでよ。ボクはあれから人をたくさん喰ってきたんだ。ざっと一万ぐらいかな。それだけ力をつけてきたんだよ」
「馬鹿か。桁があと二つ足りないわよ。そこまで言うなら相手してあげてもいいけど」
二人は臨戦態勢に入る。すると炎鬼が再び口を開いた。
「そこまでだ。これ以上は俺も黙っていられない」
炎鬼の体の周りに熱が集まる。それで膠着状態になり、徐々に戦いの空気は収まっていった。
「はぁ、私は寝るわ。寝込みを襲うなんてつまらないことしないでね」
氷鬼はそう言うと部屋を後にした。残された炎鬼と風鬼も部屋を出て自室へと戻っていった。




