7.ARダンジョン
「トレーニングバトル」を通しで試した俺は、もう一つの追加要素である「ARダンジョン」をやってみることにした。
「ARダンジョン」の項目をタップすると、画面に表示されたのは…近隣の地図?
中心に表示された人型のマークは…ああ、これ俺だ、場所が俺の家だもん。
で、マップ上にはもう一つアイコンが表示されている。
木…いや、森みたいに見える。
この場所は…確か、森林公園だっけか?
家からは2kmほど離れているハズだ。
む、そうか…コレ現地に赴かないといけないんだったな。
…仕方ない、ちょっと着替えて出かけてみるか。
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マップを見ながらやって来たのは…「禍津日森林公園」、か。
入口に公園名の書かれた銘鈑が設置されている。
お、マップ上のアイコン表示が点滅している。
タップしてみるとポップアップが開いた。
『「禊の森」に侵入しますか?Y/N』
「みそぎのもり」…か。
よっしゃ、いっちょ行ってみるか!
俺は「Yes」をタップする。すると──
スマホのカメラが起動し、画面には周囲の風景が映し出される。
そこに表示された映像に覆いかぶさるように、不気味に歪んだ樹木の迷宮が姿を現した。
おおおお、ちゃんとカメラの動きに連動してる!
スマホ越しに見ると完全に森林系ダンジョンの中だ!
なるほど…こうやってスマホを構えながらダンジョンを探索していくって事か…。
…完全に歩きスマホじゃねぇか…。
これ下手な場所でプレイしてたら怒られるんじゃね?
…いい年したオッサンが歩きスマホで怒られるとか…社会的に終わってるだろ…。
…幸い、今回は森林公園内だ。
辺りの安全に細心の注意を払いながらプレイしてみよう。
良く見れば画面下部に幾つかの四角い枠と、人型のアイコンが並んでいるが…この辺は実際にプレイしながら確認すればいいか。
しばらく不気味な樹海ダンジョンを歩くと、画面内に人影が見えた。
お、散歩してる人かな?…と思い、スマホを除けて見直すと…誰も居ない。
…ん?見間違いか?さっきスマホ越しに見た時には確かに人影が──
【亡者】Lv.3
…モンスターじゃねぇか!うわっリアル!きもっ!!
頭の上に名前とレベル表示が出ていなかったら、現実と見間違えるレベルだなぁ…。
モンスターとはまだ距離は離れているけれど、こちらの存在には気付いているらしく、ゆっくりと近づいてきている。
…相手がのろまなモンスターで助かった。トレーニングバトルの時みたいに速度特化のモンスターだったら、既に殺られていたかもしれない。
…ところで、そのトレーニングバトルの時と違って「コマンド」が何処にも見当たらないんだけど…これ、どうやって戦うんだ?…もしかして、戦闘システムが違うのか?
試しに画面に映るモンスター【亡者】をタップしてみると、何処からか照準マークが現れてモンスターに固定された。
…これは、「攻撃対象としてロックオンしましたよ」って演出かな?
もう一度モンスターをタップしてみると、今度はダメージエフェクトが表示されて敵の頭部が粉々に吹き飛…だからグロいって!!ヘッドショットしたみたいになってるから!!
そのまま倒れた【亡者】の身体が、光の粒子となり消えて行く。
『3ポイントの経験値を獲得しました。』
経験値…そうだった、ダンジョンではレベルアップするんだったな。
モンスターのドロップは…無さそうだな。ポップアップ等も特に無し。
一度敵の居ない安全な場所まで撤退し、改めてシステムを確認する事にした。
どうやら通常攻撃は画面内の敵をタップやスワイプする事で行うらしい。
タップなら単体への打撃、スワイプなら範囲打撃…みたいな判定のようだ。
これは俺が何も装備していないからで、ゲーム内で武器を装備したならば装備に応じた判定に変わるようだ。
剣や槍ならタップで突き、スワイプで切り払い…みたいな。
そして画面下部に並んだ十個の四角い枠…これはショートカットで、スキルや魔法、アイテムを登録しておくとタップする事で使用できるようだ。
…まさか「トレーニングバトル」と「ARダンジョン」で、ここまでシステムが違うとは…迂闊だった。
システムのヘルプが少し分かりにくい部分にあったのもアレだったけど、元はと言えば戦闘が始まるまでに確認しなかった俺が悪い。
そして…こりゃあスキル重要だわ。
今の俺は武器も無く、攻撃方法は素手。
しかし武器等の入手方法は現状不明…恐らくドロップで手に入るのか?
そうなってくると、出来れば魔法スキルを取得したい。
遠距離攻撃や広範囲攻撃の手立てがあると、ダンジョン攻略がグッと楽になりそうだ。
MPと魔力にいくらかTPを振って、その上で魔法スキルを取得するとなると…そこそこのTPを消費しそうだ。
…うん、これは一度ダンジョンから出て、ステ振りとスキル構成をしっかりやった方が良さそうだな。
そう決めた俺は、スマホの画面右上に表示された『非常口』に似たマークをタップする。
『「禊の森」を脱出しますか?Y/N』
結局、戦闘は一度しか行わなかったが…ここは迷わず「Yes」だ。
するとスマホの画面が明滅し、霧になって散っていくように不気味な樹海が消えて行く。
…俺は近くにあったベンチに腰を下ろすと、その後しばらく真剣にスマホと向き合っていた。
…土曜日の朝から、良い年したオッサンが公園の入口でスマホに熱中してるとか…世も末だな。




