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35歳会社員、ダイエットアプリだと思ってDLしたら謎の超人育成プログラムだった件  作者: 須藤 蓮司


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28.責任

「本当に…本当にすいませんでしたっ!陰キャの分際で自分…調子にのってました!…このお詫びは命をもって…!!」


 テンパったように謝罪の言葉をまくし立てる乾さん。

 急に顔を上げたかと思ったら、その右手にはいつの間にか鈍い光を放つナイフが…って──


「大島押さえろっ!」


「えっ?うわなにやってんのマジで!!!」


 自らの喉にナイフを突き立てようとする乾さんを、隣に居た大島が手首を掴んで止め…止め…止められない!?

 おいおいマジかよ、どんだけ【力】のステータス上げてるんだ…?


「ちょっ…なんて馬鹿力なんスか!?刺さっちゃう刺さっちゃう!」


「ぐうっ…し…死なせて下さいっ!」


「…手伝うよ大島君。」


 山里さんが反対側から助力して、やっと乾さんは止まった。


「危ねぇ…ナイフなんて何処に隠し持って…って、アイテムストレージか。…しっかり使いこなしてるなぁ…。」


 …いやいや、いきなり自刃しようとするとか…一体何をしたってんだよ、乾さん…?


 大島によってナイフを奪われ呆然とする彼女に、俺は出来る限り優しい声色で話しかける。


「乾さん…絶対に怒らないから、何をしたのか話してくれるかな?」


「うぅ…は、はい…。」


 短く返事をすると、おずおずと語り始めた。



「わ、私…前に夢野さんと大島さんが話してるのを、こっそり聞いてたんです。…何か、スマホアプリを紹介してて…ダウンロードURLを付箋メモに書いて渡してて…。」


 …いつだかの昼休みに、大島をDDTに招待した時の話だな。

 …そういえば乾さんの席って、パーテーションを挟んで俺の対面なんだっけ。

 あの時、乾さんも自分の席で昼食を摂っていたのか。


「…夢野さんが席を離れた隙を伺って…付箋メモを一枚、勝手に拝借しました。…筆圧で薄っすらとURLが残っていたので、こう…鉛筆でサササッ…と。」


 ああ…ボールペンで書いたから、下の紙にまで跡が残ってたのか。

 それを鉛筆の腹…芯の側面で擦って、文字を浮き出させて…小学生の頃やったなぁ、そういうの。


「…てっきりスマホゲームだと思って、良く調べもせずダウンロードしたんです。…きょ、共通の話題ができたら、お話しする切っ掛けになるかなぁ、なんて…私の様な陰キャが、身の程を知らず…うう…。」


 …ああ!そういう事だったのか!

 ずっと謎だったんだよ、アレ!


「…だからあの日、招待報酬が二人分だったのか。」


 そう、大島をDDTに招待した日、何故か招待報酬のTPが二人分入っていた。

 俺自身が他の誰かに紹介した覚えが無かったから、何かの間違いだと思っていたんだが…ようやく合点がいった。


 …ん?でも待てよ…?


「…それがそんなに謝るような事か?」


「えっ!?…だ、だって…勝手に付箋盗っちゃいましたし…プライバシー的な問題とか…。」


「まぁ付箋の一枚位、別に…盗み聞きの件だって、目の前の席なんだから聞こえちゃっても仕方が無い…つーか、聞かれて不味い話ならもっと場所を選んで話すしな。」


 実際、俺はDDTを秘匿していたワケじゃ無い。

 アプリ自体誰でもダウンロードできる状態だったし、規制するつもりもなかった。

 ただ…DDTの事を説明し、理解してもらうのが難しいと判断していたダケだ。

 …たった数日で目に見えて痩せたり力が強くなるアプリとか言い出したら、頭を疑われるだろうしな?


 それでも、乾さんは納得しなかった。


「…私、会話の仲間に入りたくってそんな事したんですよ?…自分で言うのもアレですけど…キモくないですか?」


「う~ん…どうなんだろ?俺は別に…それに理由はどうであれ、乾さんがDDTやり込んでいてくれてたのは…想定外の幸運?みたいな?…現に鬼から会社の皆を守ってくれたわけだし。」


「…それこそ結果論ですよ…いくらなんでも、動機が不純すぎます…。」


「…自分で自覚してるんなら、それで良いんじゃないか?乾さんは自己嫌悪に陥ってるんだろうけど…別に誰にも迷惑かけて無いし、少なくとも俺は気にしないぞ?」


「…。」


 急に俯き、黙る乾さん。

 何だ?と思い覗き込むと、なんかキョトンとしてる。


「…え…じゃあアレですか…?…怒ってない?」


「怒る理由が無い。…少なくとも、乾さんが自害する必要性はゼロだよ。」


 俺がそう言い終わると、みるみるうちに顔をくしゃくしゃに歪めて泣き出した。

 えぇ~!?…コレ俺が泣かしたの?俺何かしたか?


「ごめんなさい…安心したら何か…だって…出来心で始めたDDTが予想外に面白くって、当初の目的も忘れてハマってたらなんか世界がこんなことになっちゃってて…いつの間にか全人類にDDTが標準装備になってるし、もうワケわかんないですし!事前にDDTの事知ってただけに何か…こんなことが起こる前に、何か出来たんじゃないかって…責任感じちゃって…うぅ…。」


 …あ~、うん。そうか。

 乾さんは単純に、DDTをゲームとして楽しんでたんだな。


 現実のトレーニングと連動して育つキャラクター。

 育ったキャラでトレーニングバトルやARダンジョンを攻略する…。

 …うん、そう見ると完全にゲームだわDDT。

 …思えばVer.2.0のアプデがゲームに寄り過ぎてたんだよなぁ…。


 きっとあのカウントダウンも、ゲーム内イベントの事前告知だとでも思ってたんだろう。

 …それが、実際に起こってみれば全世界規模の異常事態。

 …しかもガッツリDDTが絡んでるとなれば…。



 …あれ?

 …もしかして俺、もっと責任感じるべき?

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