22.『六道輪廻・栄螺堂』攻略①
──ウォォォォォォォン──
渦巻く木造の階段…今まさに進み出そうとしたその奥から、まるで獣の様な咆哮が響き渡った。
おぉ…不気味じゃねぇかオイ…。
「…どんな敵が出るか分からんし、慎重に行こう。」
「…うん、分かった。」
「ひぇ~…。」
残念ながらビビってる時間は無いんだよ、俺達には。
歩く度にギシギシと軋む階段…本当、今にも踏み抜きそうで危なっかしいな。
…随分立派な建物に見えたんだが、ずぅっと誰も手入れしていないんだろうか?
…いや、そもそもダンジョンを手入れするヤツなんか居ないか。
薄暗い階段はどこまでも同じ景色が続き、同じ場所をループしてるように錯覚してしまう。
…錯覚だよな?…マジでループしてたら、どうしよう…。
「…あ。」
最前列を歩いていた大島の声に身構えると、揺れる蝋燭の灯に照らされた何者かの姿が見えた。
…敵だ…!
長巻を両手に持ち直し、徐々に姿を現す敵を待ち構える。
【アラカン】Lv.10
全貌を現したそのモンスターは、まるで木彫りの仏像の様な姿をしていた。
荒々しい表情のまま固まった顔に、筋張った身体…その表面には年輪の様な模様が浮かぶ。
…そんな姿なのに、パントマイムの様な不気味な歩法で歩み寄ってくる…。
…球体関節ってワケでも無さそうなのに、どんな体の構造してるんだ?
「…きっも!」
「えぇ…自分キモいって言うより怖いんですけど…。」
「これはまた…なんとも不気味な…。」
…ああ、この動きアレだ!
昔見た、なんちゃらハウゼンとかいう映画監督の…ストップモーションの動きに良く似てる!
…子供ながらに不気味に思ったもんだが、実際に見ると更に不気味だな…。
『…щ!』
唸るような声を上げると、鋭い拳を突き出してきた…!
…が、大島はそれを難なく避ける。
「…思ったより遅いっすね、こいつ。」
そう呟くと、両手で構えた大剣を横薙ぎに振るう。
ボクッという乾いた音を立て、あっけなく上下に両断されるアラカン。
「…弱いかも。」
「…まぁ、通常モンスターなんだろうし…こんなもんなんじゃないかな?」
何だよ、拍子抜けだな。
あんな和風ホラーみたいな見た目なのに弱いのかよ。
…まぁレベル10程度じゃ、今の俺達には正直雑魚だよな。
…なんか警戒してたのが馬鹿らしく思えてきたな。
「…悪い、ちょっと方針を変えよう。」
「…と、言いますと?」
俺は疑問顔の大島と山里さんに、分かりやすい言葉で言い放った。
「…ここからは、『ガンガンいこうぜ』だ!」
へ_\○ へ_\○ へ_\○ へ_\○ へ_\○
『…щ!』『Ё!』『…ёж!』『…ющ!』
次々に飛び掛かってくるアラカン達を切り伏せ、貫き、叩き割る。
なんか弱いけど数だけは多いな、コイツ等。
人型だし攻撃方法もそこまで突拍子もないワケじゃない…。
うん、正にレベル上げには理想的な雑魚だな!
『『『…щ!』』』
三体のアラカンが一斉に俺へと飛び掛かる!…が。
刹那に吐き出した『フレアブレス』でまとめて炭へと変えてやる。
「熱っ!!…ちょっと夢野先輩っ!こんな狭い場所で無詠唱ブレス止めて下さいよ!」
「えぇ?ああすまん、咄嗟だったんでつい。」
「…ダンジョンは燃えないとはいえ、僕達は普通に燃えるからね?」
…そりゃそうだ、危うくフレンドリーファイアする所だった。
…便利なんだけど、パーティープレイには注意が必要だな、このEXスキル。
EXスキル ◆【阿吽】:詠唱を必要とする魔法・魔術系スキルを瞬時に発動する。
これはとある竹藪の奥にあったダンジョン『鳥居の迷宮回廊』で、大きな白い狐『テンコ・アギョウ』と『テンコ・ウンギョウ』という対のボスを倒して取得したEXスキルだ。
強制的に二対一を強いられた上、『アギョウ』は狐火、『ウンギョウ』は幻影やスキル封じを使ってきて非常に面倒な相手だった。
散々苦労して倒した結果、取得できたEXスキルは一つのみ…当初はガッカリもしたが、魔術スキルを実質無詠唱で使えるのはかなり強い。
…正直チートだ、チート。
体感だが、EXスキルの中にはチートじみた性能のスキルが多い気がする。
…だもんで、余計に『ARダンジョン』攻略に夢中になっちまったんだよな…てへぺろ。
「…でもさぁ、そもそもブレス攻撃に詠唱が必要っていう、そもそもの仕様が変だと思わない?」
「まぁ…ソレを言っちゃうと、DDTはほとんどのアクティブスキルが技名叫ばないといけない仕様なので…。」
「緊急時には隙になるし…この先、その辺りを省略できるスキルが必須になるかもね。夢野君の【阿吽】みたいな。」
…どうも、一歩先を行く男、夢野です!
フッ…世間のスタンダードは俺が作るのさ…。
…恥ずかしくなってきたから、先を急ごう…。




