抹消した街の行末 4
全てが無くなり、存在も消え失せ、何も残らない『とある街』
その場から出る事を選んだ存在、その場から逃げる事を選んだ存在。そしてまた、その場に残る事を選んだ存在も居た。
何もない、だた一つだけ存在するその場所に。残された者達は、集うのだった。
「………」
澄みきっていた空が雲に包まれ、日の光を遮られた大地。空間を切り出されたかのように残るありのままの自然は、残された存在達の居る草原だけ。心地よさを感じさせない淀んだ空気が、ただただ静かに横切っていた。
「私達、何をしているのかしらね……… ココで。」
「さぁな。……でも、乙女がこの場に居るのに。俺様達が出る事を選ぶなんて、あり得るわけねぇだろ。」
「それもそうね。」
草原に立っていた妖精とジャッカルは軽く応答する様に話しかけ、石座の元で膝を折る。持っていた花束を静かに供え、ただその場にいる事。
それが、今残る彼等の行うただ一つの行いだった。
街を壊滅にまで追い込んだ機械兵の暴走は誰にも止められず、立ち並んでいた建物は全て元から消された。逃げ惑う存在達に血の華を咲かせ、逆らおうとする者に制裁を行う。誰にも止められない機械兵の行いを、頭の上から望む茶色の猫。
彼もまた、その行いそのものに意味など感じていなかった。
『ニャーには最初から、何も無かった。ラプソディの涙が嫌いだった、ラプソディの苦しみが嫌いだった……… ただ、それだけなのニャ。』
機械兵の行いを見ていた二人もまた、その世界から取り残された者達。行いに反抗する事も肯定する事もせず、何時しか傍観者へと成り下がっていた彼等は、今こうして行うのは謝罪のみ。大切な存在へ対する、手向けの花だけだった。
カサッ……
「……?」
そんな彼等の元に、周囲の草花を踏んだ音が聞こえてきた。この街に居る存在は居ないと思っていた彼等は、驚きながら音のした方向を見た。そこにはコートを纏った一人の青年が立っており、彼等が『改革者』と呼んでいたストレンジャーであり、リダスだった。しかしそれはその時の肩書であり、今ではそうは慣れなかった存在にすぎない。
彼等の顔が自分に向けられた事を見た彼は、静かに口を開きながら手元にあった花を見せた。そこにあったのは小さな竜胆の花束であり、自分なりに餞別し摘んできた様だった。
「取り込み中にすまない……… ……俺も、花を添えていいか。」
「………」
持っていた花束を見せ終えると、リダスは二人に向かってそう言い彼等の添えた花と同じところに添えて良いかと問いかけた。問いかけに対し二人は黙り込み、互いに顔を見てアイコンタクトでどうするかを考えていた。
「無理に、とは言わない。……俺も、あの人を守りきれなかった存在にすぎない。こんなことを出来る身分でもない事は、十分承知の上だ………」
そんな二人の様子を見た彼は考えている事を告げ、許可を貰えなければそのまま引き下がると言った。彼もメイリー、アスピセス同様にラプソディを守りきれなかった存在の一人であり、そんな事を出来る身分でもない事は解っていた。
初めはこの街を変える事だけのために行動していた身であり、事実彼等の敵であった。だからこそ馴れ馴れしくはせず、彼等の許しが無い限りそうはしないと言うのだった。
「……分かったわ。」
「あぁ…… ……良いぜ。」
「ありがとう………メイリー アスピセス。」
そんな彼の考えを聞き入れたのか、二人は口々にそう言い座っていた位置から少しだけ横へとずれ道を開けた。彼等の言葉を聞いたリダスは改めて礼を言うと、静かにその場に歩み寄り膝をついた。
そこには小さな石版に掛かれた彼女の名前があり、姿は無くともそこに眠っていると言う事を証明する物だった。それを見たリダスはその場が添えるべき場所だと言う事を改めて知った後、持っていた花束を静かにその場に添えた。
彼の持ってきた花束は全て『リンドウ』の花であり、元々クラウの管理していた宮殿奥の庭園に咲いていた物だ。今は亡き彼女の宮殿で咲いていた、その上彼はラプソディがこの花を好きだと言う事も知っていた。ゆえにこの花だけを摘み、なおかつ自分なりに餞別した花だけをこの場所に持ってきたのだ。
本当に想っていた相手であり、守りきれなかった事に対する謝罪。
ただそれだけの想いだけで、彼等はそうするのだった。
その行動を目にしたメイリーとアスピセスは再びその場で泣きだし、顔に手をやり必死にその涙を拭うのだった。彼の眠るその場所に、これ以上涙を流すまいと。ただそれだけの想いで、必死にこらえているのだった。
「……ラプソディ。……ゴメン………な……」
そんな二人の間に立っていたリダスは、震える手を握りしめ静かに呟いた。それを耳にしたメイリーとアスピセスは我慢出来なくなった様子で、大声でその場で泣き出してしまった。
「あぁああっ…… ラプソディ様ぁああ!!!」
「乙女ぇえっ、乙女ぇええっ、乙女ぇえええええっ!!!!」
「テリスター………ッ! うわぁあああああーーー!!!」
二人の悲しみを双方から浴び、リダスもその場で泣き出してしまった。もう何も苦しむ事が無くなり、永遠の眠りについた一人の姫君に向けて。
彼等は謝罪と想いの涙を、枯れるまでその場で泣き続けるのだった。誰も救えない、誰も優しい言葉を向けらずただその場で眠り続ける相手に。
ただ……… 詫びる様に、泣くのであった………
-EPISODE BAT END-
Do you really desire this end?
お前等はこの結末を、本当に望むのか?
連日更新しておりましたこちらの本編は、今回のお話を持って一つの節目を迎える事となりました。ありがとうございます。
明日以降は一度別のお話を更新いたしますので、またしばらくの猶予の後。楽しんで頂ければ幸いです。




