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英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
本編・リダスシナリオ
93/155

抹消した街の行末 3

「ニャーは一つの頼まれごとを、今ここで成し遂げただけニャ。ニャーの大切な大切な、哀れな姫のための行動ニャ。」

突如刃を向けてきたネコSは流星石を握ったまま、リダスからの問いかけに答えた。自らの意思と願いのために行動したと彼は告げ、その行動は彼女ためにやったと言った。だが味方同士だった、ましてや守ろうとしていた相手を襲ったのか、それを彼は理解出来ないでいた。

「ネコ…… わた……し……」

「もういいのニャ。これ以上何かをしようとしたとしても、ラプソディには無理なのニャ。」

「……ぅっ」


フラッ


「!! テリスター!!」

何とか立っていられたラプソディであったが、ネコSの声と共に引き抜かれた爪のダメージが来た様子でそのまま体制を崩し倒れた。慌てたリダスはそれを見かね、彼女を支えようと抱きかかえた。

彼の腹部分には鎧であったのにもかかわらず爪が貫通したと思われる穴が複数開いており、血と思われる赤い液体が込み上げていた。

「ネコS…… お前、これがお前が頼まれた事なのか……!!」

「そうニャ。ラプソディに頼まれた事、すなわちニャーの願いは『ラプソディの不幸を取り除く事』なのニャ。これ以上の苦しみや悲しみを、ニャーは与えないようにしただけニャ。」

支えるも正気が見られない彼女を見て、リダスはネコSに対し行いが正しかったのかと問いかけた。すると彼は静かにそう答え、この行いそのものも全てを終わらせるために等しい儀式だと答えた。

彼自身もそうはしたくなかったかのように、持っていた瓶を投げ捨てながら静かに彼女を見ていた。

「他人を憎み、幸せを願うも不発に終わる現実。もうそれは、ラプソディの身体には毒以上の効果をもたらす。ニャーはそんな彼女を見るのは、もう嫌なのニャ。」

「ネコ……… ……ごめんね、私の……ために……… 貴方の……手を………!」

泣きながら叫ぶリダスを見て、ネコSは淡々とそう言い静かに彼に歩み寄った。そんなネコの姿を見て、ラプソディは残された体力を使って口を動かし、最後であるがゆえに伝えなければならない事を彼に告げた。

しかし彼の行いも自らが頼んだ事であり、最愛の友人であったのにも関わらず命を絶つ事を願った事に対し涙を流していた。

「もういいのニャ。一度目を閉じて、夢だって思えばいいのニャ。大切な人を、これ以上傷つける必要はないのだからニャ。」

泣きながらも弱って行く彼を見て、ネコは静かに頬を撫でながらそう言った。すると、ラプソディは嬉しかった様子で涙目のまま優しい笑顔を彼に見せた。

「……あ………り……が…………とう………」

そして、彼に向かって一言を告げた、その瞬間。


パサッ……


「……ぅっ……… えっぐっ………」

一生懸命に上げようとしていた両手がゆっくりと地面に向かって降下し、リダスを見ていた目は静かに瞑り顔が横へと逸れた。そしてその様子を見たリダスは、顔が驚愕しながらも掴んだ手だけは決して離そうとはしなかった。

手を繋いだままゆっくりと身体を引き寄せると、リダスは目を強く瞑り涙を流した。

「なんで……… なんで……貴女が……死なないと………行けなかったんだ………」

「……もう手遅れなのニャ。ニャー達がいくら何かをしたところで、ラプソディにはもう生きる気力が残されていなかったのだからニャ。」


バタバタバタ……!


「……ぁっ、居たっ ストレン……… ……!!」

「ラプ!!」

そんな二人の居る空間に、何処からともなく駆け寄ってくる数人の足音が聞こえてきた。聞こえてくる足音を見て、泣いているリダスを見たネコは代わりに誰が来たのかを静かに見た。

するとそこには、改革者となり平和に過ごしていたはずのカツキ達が立っており、彼等を探しに来た様子だった。しかしその場に広がっていた光景を見て、言葉を詰まらせたカツキに対しシップスはそう叫んだ。

「おいっ、しっかりしろっ!! 目を開けろ!!」

「………」

「ッ…… 今、出来る手当てしてや」


「良いんだ…… シップス。」

「……… ストレンジャー……」

動けない集団を見かねたシップスは一人ラプソディの元へと駆け寄り、目を閉じてしまっている状態と身体の状態を見比べ手当てをしようと言った。しかしそれに対しリダスは震える声でそう言い、それ以上何もしないでくれと彼に頼んだ。

何かをしたくてたまらない様子のシップスの手を遠ざけさせると、リダスはゆっくりと目をとじたラプソディを地面に横にさせた。そして着ていた上着を脱ぐと、身体が冷えないようにとラプソディの上に優しくかけた。

「……もう、生きてないのか………」

「あぁ……」

「……ッ!! お前か………お前がやったのか!! ネコ!!」

先ほどからの丁寧な扱いを見て、シップスは静かにリダスに問いかけた。すると軽く返事をしたもそれでもラプソディをずっと見ている彼を見て、シップスは近くに立っていたネコSに対し声を張り上げながら問いただした。

「………」

「何で……こんなことをしたんだ!! お前は俺等と違って、ラプのそばに居たんじゃねぇのかよ!!!」

問いかけに対し特に返事をしなかったネコを見て、シップスは再度声を張り上げながらネコの元へと移動し彼の胸ぐらを掴んだ。しかしそれでも返事をしないネコを見て、彼は苛立ちながらも振り上げた拳を留めさせながらゆっくりと下ろした。

「ラプが……死んだ………?」

「どう……して……」

「嘘だ…… なぁ、ラプがそんな事になるわけねぇよな……? コレはアイツの造りだした物語なんだぞ!?」

目の前で行われていたやり取りを見て、ハンメルと涼は事実を受け入れられない様子で言葉を漏らした。だが事実を受け入れたくない人も中にはおり、クロは涙目になりながらもその場にいた全員に向かってそう言った。

しかしそれに対し返事が返ってこない事をわかっていた様子で、苛立つ様子で静かにその場から移動し近くに立っていた灰ビルを殴った。

「クソッ……!!」


バンッ!


「嘘だ………嘘だ……… 俺何かよりも、ずっとずっと幸せボケしてるほどのアイツが…… こんな事……望むわけない………」

拳をビルに付けたままクロは呟きながら、その場に立っていたカツキ達には見えないようにと涙を流していた。その場にいた集団の中で一番事実を受け入れたくない様子で、しかしだからといって何も出来ない今を処理しようにも出来ない様だった。

「……でも、事実ラプは死んだんだ…… 俺等の前に居るのがその証拠で、周辺についている血痕が……そうとしか………」

「ッ!」


ガシッ!


「そんな事実が聞きたいんじゃねぇんだよ!! こんな状態であっても、俺達は何も出来ないんだよ!! わかってんのか!?」

冷静にその場を分析するも、信じたくない様子で言ったソニルスの発言が気に食わない様子で、クロは彼の元へと移動し服を掴みながらそう言った。もう何がなんなのかわからない様子で、周囲に当たり散らすしか今の彼女には出来ない様だった。

「わかってるさ……… ……でも、だからと言って叫んでも泣いても……ラプは何も喜ばない………」

「………」


「俺達は人であるがゆえに、仲違いしないと生きていけない。人一人死ぬだけで、こんな気分になるなんて思わなかった……… ましてや敵サイドに居た、ラプが死んだとしても……同様だ。」

服を掴まれた状態ではあったものの、ソニルスは彼女同様に事実を受け入れたくない事には変わりはないようだった。誰もが泣きたい、ありえない現状が目の前に広がっていたとしても決して受け入れたくない。それだけ、今の現状が残酷で惨いのだ。

集団の落ち着かない様子を静かに割ったのは、カツキの一言だった。周囲に当たる事無く皆のやり取りを聞いていた様子で、立ち尽くしていたその場から移動しシップスの隣で腰を下ろしラプソディを見た。すでに身体は冷たくなっており、それでも笑顔のまま亡くなっているのを見て幸せだったことを彼は悟った。

「ネコ…… 何でこうなったのか、お前は知ってるんだろ。俺達に、教えてくれないか。」

「………」

「……… 言う気がなかったら、別に良い。俺達が居なくても、笑顔で死…… 笑顔で寝たラプが、どういう気分だったのかわかるからな。」

いろいろ見て知るべき事を知った様子で、カツキはそう言うと頬についていた涙を指先で軽く取り除いた。その後その場に立ち上がり、上からであったが静かに彼の事を見ていた。




「全ての原因は、ニャー達全員ニャ。」



静かに聞こえてきた涼達の泣く声を聞き、ネコSはその場にいた存在全員に聞こえるような声量で静かに答えた。すると、その声を聞いたカツキ達の視線は彼に集まり、その場を軽く歩き出したネコの口は開かれた。

「ニャーよりも最近に知り合って、最近の現状を全て知ってるであろうおミャー等は知ってるんニャろ? 知らずにやって居た事も、厚意でやって居た事も。ラプソディには毒でしかなかったのニャ。」

軽く移動していたネコは喋りながらそう言い、先ほど捨てた血痕付きの流星石を拾った。まだ血は凝固しておらず液体のままであり、触れた彼の指先を静かに赤く染めた。

「ニャーは知ってるのニャ。他人に裏切られた、大切な存在達であった人達に見捨てられるのが怖い、一人で処理出来ずに泣きすがってくるラプソディをニャ。」

「ラプが……泣く?」

「その光景をニャーに見せたのは、少なくとも二回ニャ。大好きだった友人達に裏切られた、何かをしたくてもそれでも考えを拒絶されて一人処理しようにも出来なくて、鬱だったのニャ。きっと話していて涙を見せた事は、おミャー等には無かっただろうニャ。」

「……確かに、ラプが泣いた所って見た事ない………かも。」

「ってか、普通見せないけどな。友達であっても、泣くなんて早々の事が無い限り…… 普通だろ。」


「その『普通』が、出来なくなっていたのニャ。ラプソディは。」

「………」

流星石を見ながら話をするネコに対し、時折相槌を入れるかのようにシップス達は言った。それに対しソニルスは知っている範囲でそんな光景を見た事が無いと言うと、クロは涙を見せる事自体が普通ないとその考えを言った。

だがその普通が出来なくなっていたのだと、ネコは補足を付けた。

「ラプソディもいっぱいいっぱいだったのだろうニャ。ニャーに話す前も、一生懸命に自分で処理しようとしていたし、話す事も疎らで考えが処理できていなかった事まるわかりなのニャ。」

「………」

「おミャー等は知ってるかニャ? この流星石が、何で出来ているか。」

「?」

話を打ち明けられた時の事を思い出しながらネコは言うと、不意に持っていた流星石を見せながら彼等に質問を投げかけてきた。質問に対し、カツキ達はそれぞれが持っている流星石をポケットから取り出し静かに見だした。

「……ただの特殊な液体じゃないのか? 外側は、香水瓶っぽいけど。」

「確かにただの液体じゃないニャ。……それの原料は『ラプソディの涙』なのニャ。」


「「えっ!?」」


軽く見ていたシップスは不意にそう言うと、ネコはその回答は一部が正しいが正解ではないと言った。だが正解に近い事を言った事には変わりはない様子で、彼は流星石の原料を言った。すると、その中身を聞いてカツキ達は驚きながら声を上げた。

「コレ、ラプの涙で出来てんのか!?」

「正しく言えば、想いの涙ニャ。泣いて気分を紛らわせようとして涙を流して、それが空気中のあらゆる元素と交わって出来たのがそれニャ。無論、泣いただけのその涙をずっと溜めこませるわけにはいかなかったから、ニャー達はある日から散布を開始したのニャ。」

「……そうだったのか。」



「ゆえに、もうニャーには後悔は無い。ラプソディの居なくなったこの街は、もう何も生まない………生み出せない、英雄達の消えた街。そんな街は、ニャーが直々に壊してあげるのニャ。」

一通り話すだけの事を話し終えると、ネコは静かにその場を歩きだし放り投げた機械兵の流星石を回収した。

その後静かにその場にいた全員を一瞥した後、再び瓶へと視線を移した。

「ぇっ……! ネコ、何を!!」

「もうこんな街は、ニャーは大嫌いなのニャ。マシリーン、ニャー達管理課の祈りが壊れた今、こんな街に生み出された結論そのものを………! 壊すのニャァアアーーー!!!」

何をし出すのかと思ったリダスは慌てて立ち上がり、彼に問いかけた。しかし彼はその問いかけに答える事無く言葉を口にし、そして瓶そのものを指先の力で砕き天高く放り投げた。

すると、瓶自体が砕け散り液体が空気と融合し、封印されていた【機械兵(マシリーン)】が出現し降り立った。眼は赤く光っており、一度リダスが対峙した時とは違う輝きを放っていた。

そして、


ビカンッ……!


《グルゥァアアアアーーーー!!!》

「ッ!!」

まるでネコの声に答える様に機械兵は雄叫びを上げ、瞳を輝かせたまま大きく吠え続けた。雄叫びと同時に街を豪風が駆け抜け、その場にいたカツキ達は足に力を込め飛ばされない様にと踏ん張った。

一度吠え風が弱まったと同時にネコは機械兵へと乗り上げ、操作盤を弄りコードを入力した。すると怪しく光っていた機械兵の瞳は一度光りを失うも、再度灯った瞳と共に身体中から機械的な音が聞こえてきた。

一定量しか出ていなかった爪が伸び、尾の全体に刺が生え、身体の造りも一度シャープになり止まる事のない存在の化身のような姿へと変わった。そして、

「壊すのニャ、壊すのニャ!! ラプソディの願いそのものが消えた街なんか、ニャーはいらないのニャ! 彼女の崩壊はニャーの崩壊、街の事象ごと消してしまうのニャー!」

ネコは怒り狂う様に現状を否定し、機械兵は彼の願いを聞く様にその場を跳び出した。そして目に付いた建物を薙ぎ払うかのように爪で引き裂き、小さな存在達諸共命の灯火を狩りに向かって行ってしまった。

何時しか操作盤を離しているネコの様子を見ると、もう誰にも止められない様にと入力されてしまった様だ。

「ぉ、おいどうすんだよ!! アイツ、マジでこの街消すつもりだぞ!!」

「だからって、あの流星石は管理課最強の力だろ!? 俺達の力で……どうにかなるわけが!」

突如暴れ出したネコを見たクロは慌てながら皆に言い、早く止めようと言い出した。しかし彼等も知ってのとおりの身体を機械兵は持っており、今いる全員の力を合わせても太刀打ちどころか皆殺しにされてしまうかもしれない。混乱に混乱の追い打ちをかける様に、彼等はどうする事も出来ず慌てる事しか出来なかった。

その時だ。



ガタガタンッ!


「!? ヒロ、クラウ!!」

「何が起こっているのか解らないが、早く乗りなっ!! 避難するんだ!」

彼等の元に街の床と車輪が擦れる音が聞こえ、彼等の元に一台の馬車がやって来た。そこに乗っていたのは怪我を負ったクラウとぼうくんであり、危険を感じ彼等の事を助けにやってきたのだ。

何時の間にか回収した様子の【幻想車(ファンタジア)】を、クラウは慣れた手付きで手綱を握っていた。

「ぉ、おうっ! ストレンジャー!」

「………」

突如現れた救世主を見た皆は我先にと馬車に乗り込み、カツキは一人立ち尽くしているリダスを見て声をかけた。しかし彼の目線は幻想車でも機械兵でもなく、ただそこに横たわるラプソディの事を見ていた。

「……おいっ!! 何やってんだよ!! ラプを積んでる暇なんて、もうねぇんだぞ!?」

「……… 行ってくれ。」

「な、何言って」


「行ってくれっ!! テリスターの居なくなってしまった今なんて、俺も……必要性が無い……… あの人の事を………助けられなかったんだ……!!」

「ストレンジャー………」

声が届いていないのかと再度カツキは言うも、リダスは呟き混じりにそう言い置いて言ってくれと言い出した。ネコS同様彼にも必要性が無くなってしまい、街の外へ出たとしても今まで通りの暮らしが出来ない。本当に助けたかった相手を助けられなかった不甲斐なさからか、乗る事を拒んでいた。そんな彼の気持ちを知ってか、カツキは無理にでも乗せようかどうか迷っていた。


今の彼を連れて行ったとしても、この先に彼の望む幸せがあるのか。


そう思うだけで、その手が震える事しか出来なかったのだ。

「……… クラウ! 出して!!」

「あ、あぁっ! ………」

そんな二人のやり取りを見て、ぼうくんはしばし様子を見た後クラウに馬車を出すよう指示した。それを聞いたクラウは手綱を握り馬達に指示を出し、カツキを振り落とさない様に手を取って出発した。

出発する最中、彼の目に映った一人の姫がとても安らかな顔をして目を閉じているのを彼は見逃さなかった。そして、ある違和感を覚えていた。

『あの人………確か…… どこかで………』

そんな違和感を持ったまま彼等は街を出発し、機械兵の襲撃をされる前にと街を去って行ってしまった。



ガタガタガタ………


「……… ……俺、何も出来なかったんだな……… ……テリスターさえも、助けれず………街も、皆さえも……… ……護れなかった。」

自分を置いて行った馬車の姿を見送りながら、リダスは独り寂しそうに呟き涙を流した。誰かに託され、そして自分自身の考えのままに行動した結果。それが今の現状であり、ネコにも言われた通り『もう何も進めない今』を、彼は悟るしかなかったのだった。



「お前の負けだな、ストレンジャー」

「えぇ。 そして、私(わたくし)達の………負け。」

そんな彼と姫の様子を見た背後の二人も、街が終わる様子をただ静かに見守るのだった………


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