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英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
本編・リダスシナリオ
92/155

抹消した街の行末 2

「……ぅっ。」

「! クラウ……!」

突如発生した風が徐々に弱まって行くと、不意に起きないと思われていたクラウが声を発した。それと同時に身体が少し動いたことを見たぼうくんはベットサイドへと向かうと、彼の行動を見たラプソディは静かにベットを降りリダスの元へと向かって行った。自分の元へと戻って来た彼女をリダスは静かに見ていると、彼女はとても嬉しそうな表情をしている反面、何処か名残惜しそうな後悔が見え隠れしていた。

大好きだった人と永遠に居られる誓いを失い、自分の事を彼は忘れてしまった。得られるはずだった想いはその瞬間に消えてしまい、たった今から彼の中から自分が消えてしまった。

その事がとても寂しくて、まだまだ彼と離れたくない思いが顔に映っていた。

「クラウ…… クラウ……っ」

「……ぼう…くん………?」

「!! 良かった……! クラウッ!!!」


ガシッ!


そんな対価として時間が巻き戻ったのか、意識を取り戻したクラウを見てぼうくんは涙目になったまま彼に抱き着いた。何がどうしてこうなったのかまだ良く分かっていない様子の彼であったものの、自分の大好きな相手がそうしてきた事を見て彼は静かに頭に手を置き優しく撫でた。

頭に置かれた手を感じぼうくんは彼に泣きすがり、本当に良かったと何度も何度も連呼していた。

「ぼうくん、どうして泣いているんだ……ツッ!」

未だに状況が分からない様子の彼を見て、クラウは彼の事を気遣いながら質問を返した。しかし質問をしたのも束の間、彼の身体に痛みが走りクラウは軽く呻き右腹部を抑え出した。彼の行動を見て慌てたぼうくんは手を離し離れた後、彼の身体を気遣うように傷の具合を見だした。

「ぁっ、悪いッ!! ゴメン、お前怪我して傷だらけなのに……なんか、無性に嬉しくってさ。お前が死んだんじゃないかって、ずっと思っちゃってたから………」

「俺が、死んだ……? ぼうくん、何があったんだ…… 俺、何時からココ寝てたんだ? 俺はぼうくん以外に、誰か大切な人が出来てしまったのか?」

「ぇっ……?」

ぼうくんの心配そうな顔を見たクラウは一言「大丈夫」だと告げ、包帯の巻かれた傷を抑えつつそう言った。それを聞いたぼうくんは安堵した様子でそう言い、ベットに軽く腰かけつい行動してしまった理由を話した。彼の話を静かに聞いていると、不意にクラウは彼に幾つか質問を同時に投げかけた。

そのうちの一つを聞いたぼうくんは驚いた様子で彼の顔を見ると、クラウは不思議そうな顔をしてぼうくんの事を見つめていた。


まるで最初から、自分以外に誰も大切な人が居なかった。


そんな事を言っているかのような、嘘のない真実の顔だった。

「クラウ、あの人の事を覚えてな…… ……あれ、ラプソディ………さん……?」

彼の様子を見て軽く慌てたぼうくんはベットから降り、近くに居た相手の顔を見せてあげようとした。しかし何時の間にか彼の居た部屋には誰もおらず、まるで最初から誰も居なかったかのように静かな空間が出来上がっていた。

扉も最初から開いていなかったかのようにキチンと閉まっており、誰かが居た痕跡は何処にもなかった。

「……ぼうくん?」

「嘘だろ……… 何で、居ないんだ…… ……ッ!」

ぼうくんの様子を見てクラウは再び悪い事を言ってしまったのかと心配する中、ぼうくんはその場を駆け出しベット周辺を調べ出した。


何処かに隠れているのかもしれない。これが最初から仕組まれていて、リダスと一緒に何処かで見ているのかもしれない。大がかりなトリックが自分の知らない所で仕組まれていて、最初からあの人が笑顔を見せてくれる切欠を創ってくれているのかもしれない。

彼の脳裏に仮説を考えだし、そんな事をしそうな彼女の笑顔が何度も何度も目に浮かんだ。だからこそ何処かに居て欲しい、彼の起きた今早く出てきてほしい。血相を抱えて柄にもなく慌てている自分を見て、小馬鹿にして欲しい。

そう思いながら彼は部屋の隅々まで調べ、クラウが自分を見る中懸命に部屋を捜索した。そして捜索を終えると、彼はその場で肩を落とした。

「……ラプソディ……さん……… 本当に、クラウを……俺の所に帰す気かよ…… ……何で。」

「ぼうくん、どうしたんだ。なぁ、ぼうく」


「何で俺なんかに……! こんな馬鹿な結果を、創ったんだぁああああーーー!!!」


肩を震わせながら呟く彼を見て、クラウはゆっくりベットから降り立ち上がった。その後足の痛む箇所が限られている事を確認したうえでぼうくんの近くへと移動し、何をそんなにショックを受けているのかを知ろうとしていた。すると、突然ぼうくんはその場で叫び声を上げ吠えだした。

そして一通り叫び終えると、先ほどとは別の理由でその場に崩れ泣き出してしまった。彼の心情が落ち着かないのを見たクラウは静かに彼の肩に手を置き、優しく彼の身体を引き寄せた。するとぼうくんは彼の服にしがみ付き、泣きじゃくりながら言った。

「お前に大切な人が居たのに、俺よりももっと大事にしてもらいたい相手が居たんだ……!! でももうその人は、俺とクラウの平和を創るために…・…自分の事を犠牲にしやがったんだ!! 何でこんな事したんだ……よ! ラプソディさん!!」

「ぼうくん……」

「ゴメンな、クラウ…… 俺がもっとちゃんと考える事が出来たら、お前に俺がこんな事で泣く姿なんて見せなくて済んだのに…… お前に出来た、新しい大切な人を……忘れさせずに済んだのに………!」

「………」

泣きながらぼうくんはそう叫び、彼に会わせてあげたかった相手が居た事を告げた。自分よりもクラウの事を大事にしてくれている、それだけ好きだと言ってくれた相手に酷い事をさせてしまった。もう彼の中に二度と出来上がる事のない『繋がり』が亡くなってしまった事を、ぼうくんはただただ後悔するしかなかった。

そんな彼を見たクラウも、自分が忘れてしまったからに彼を不幸にさせてしまったのだと理解した。そして、同じように後悔するのだった。


『……ゴメンな、ぼうくん………』






「………」

『テリスター……』

一方その頃、彼等の居たホテルから離れた道路にリダスとラプソディは歩いていた。風が止みクラウが目覚めた事を見た後、彼は彼女から握って来た手に連れられるがままに外へと出てきた。

彼女に声をかけようにもかけられない、何を言ったらいいのかも分からない。本当に心から大切だと思っていた相手との繋がりを亡くし、思い出してもらう行動すらもとらずに去ってきてしまった事。きっと彼女の中で最もして欲しかった事をしてもらえず、リダスはどうしたら良いのだろうかと悩んでいた。今でも声をかければ、きっと顔を見せに行ってくれるかもしれない。でもそれが彼女にとっての苦痛なら、それを促す自分は愚かなのかもしれない。

何度も何度も自分の中で繰り返される自問自答の中、リダスは不意に彼女の足が止まった事に気付いた。自然と顔が俯いていた事を知り顔を上げると、そこにはいつもの顔を見せるラプソディの姿があった。

「リダスさん、ゴメンね。私のワガママに、付き合わせちゃって。」

「ワガママなんて…… ……テリスターは、良かったのか。クラウと話をすれば、もう一度その感覚を思い出してくれたのかもしれないぜ。」

静かに振り返りながら言った言葉を聞いて、リダスは再度彼の元に行ってみないかと提案した。

後からでもきっと、クラウの居る部屋にぼうくんは入れてくれる。彼女が思う彼の反応と、きっと違う事をしてくれる。そんな淡い期待も含めて言うも、彼女は静かに首を振り行かないと言った。

「……ううん、それは無いよ。あの指輪は、元々クラウさんがこの街に来た切欠を消失させるための物でもあったから。私は自分のモノを得るためだけに、そうした。本当に、極悪人。」

「そんな事ない……! 俺はテリスターに会うためだけに、この街に来たんだ! 貴女が極悪人だなんて、誰が決めたんだ!!」

「………」

「ぁっ…… ………」

彼の提案を振りながら彼女はそう言い、指輪に込められた意味が別にある事を告げた。


自分と一緒に居てくれる相手が欲しかった、彼の目的と共にずっと自分と一緒に居て欲しかった。だた一方的な願いだけで生成した指輪が無くなった今、思い出す以前に自分に良い印象を抱いてくれるはずがない。彼女はそう思っているだろうと言うと、リダスはつい本気になり誰もそんな事は言っていないと言った。

しかしそれを聞いた彼女が黙ってしまったのを見て、彼は口を閉じ言った言葉に後悔した。

「……リダスさんは、やっぱり優しいね。こんな事になってまでも、貴方は私と居る事を望んでくれる。これももしかしたら、貴方を苦しめる記憶の鎖かもしれないのに。」

「そんな事は……無い。俺は、俺が信じるモノを信じて貴女の前まで来れたんだ。例え記憶が俺と貴方を結ぶためのモノだったとしても、俺はそんな事で苦しんだりはしていない。貴女と居る事を、俺は自ら望んでココに居るんだ。……それに、貴女はそんな事をする人じゃないって、俺が一番良く分かってるつもりだ。ネコやメイリー、アスピセスよりも貴女と居た時間は短いかもしれない。それでも俺は、貴女が無理をしてぼうくんのために行動を起こしたってことくらい、解ってるつもりだぜ。」

「………」

「もう一度会う事が今叶わないなら、俺は後からでも貴女と一緒にクラウの元に行くぜ。いくら時間が掛かったって、俺は構わない。テリスターと居る事を、俺は選んだんだ。」

そんな彼の言った言葉を聞いて、ラプソディは静かにそう言い彼すらも自分の仕組みにはまってしまっているだけかもしれないと言った。彼女の言った言葉を聞いたリダスは静かに首を横に振り、再度自分が信じた事をして今この瞬間まで来れている事を言った。

誰かが指図したわけでもなく、誰かが示したわけでもなく、自分で全てを選んできた。感覚で全てを選んできた結果がここにあり、それは誰からのコトバでもなく全て自分の結果だと。言いたい事を全て言うと、ラプソディは不意に彼の身体にすがり付いてきた。

「……ッ。 リダスさんっ………!」


ガシッ


「………」

「私、クラウさんと離れたくなんて無かった…… もっともっと、皆と一緒に居たかった……! でも………もう私にはどうしたら良いのか、自分じゃ見つけられない。独りじゃ、生きられない!!」

「………」

「皆ともっと一緒だと思いたかった、クラウさんも……ムーンも、もっともっと一緒に居たかった。……私って、本当に馬鹿……… もう何も、物語すらも戻せない……」

「テリスター……」

彼の身体にすがりついた彼女は再び涙を流し、もう何も自分の力では解決出来ない所まで来てしまったと言った。誰かが言葉をくれたとしても、誰かが止まる事を教えてくれたとしても、それは結局自分で選ばなければならない。選び、選び、選び続けた結果が今であり、もう何も自分の元には残っていないと泣きながら話していた。

そんな彼女の苦痛の声を聞いて、リダスはただただ身体で受け止める事しか出来なかった。

「……でも、最後の最後で。私、一緒に居てくれるってくれた人を信じられるかも……… リダス……さん。」

泣きながら彼女は一言いうと、静かに彼の身体から離れ涙をこぼしたまま彼に笑顔を見せ、名前を呼んだ。苦しみの中たった一人でも、自分の元に居てくれる人が居た事が今の彼女にとっての幸せであり、もっと早くその感覚に気付きたかった。

そうすれば何も間違う事なんてなく、きっともっと幸せな終わり方があったかもしれない。そんな事を想わせる、最高の笑顔だった。

「テリスター……… ……俺は、」




グサッ……!!


「っぁ!」

「テリスター……? ………!!」

そんな彼女に向かって一言を言おうとした瞬間、鈍い物音と共に彼女の身体が揺れた。揺れた身体と共に彼女から発せられた声を聞いた彼は、何が起こったのかと後方に視線を向けて見た。するとそこには、鋭い爪が生えた巨大な機械の手が瓶先から生えていた。

彼にも見覚えのある手の色の先には、瓶を持つ小柄な存在の姿があった。

「……ネコ、エス……!!」

「もう、このお話はこれ以上の必要性が無いのニャ。終わりは、ニャーが全て引き受けるのニャ。」

そこに居た存在は静かにそう言いながら、全てが終わっている事を彼に告げた。彼の言った言葉を弾みにしてか、爪を伝う一滴の鮮血がリダスの目に映った。


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