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英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
本編・リダスシナリオ
91/155

抹消した街の行末 1

「………」

「……クラウさん………」

一足先にベットへと着いたラプソディは、彼の寝ている姿を静かに見た後彼の顔に触れられる位置へと移動した。そんな様子を2人はただ静かに見ており、これと言った変貌が無い限り見守ろうと決めた様子だった。

見守られている彼は、そのままベットに足を乗せクラウの額を優しく撫でつつ髪を撫でた。彼の綺麗な藍色の髪が静かに流れ、手に沿ってゆっくりと流れ落ちる。額に着けられているバンダナには手を出さず、その後ラプソディは静かに涙を流し手で拭っていた。

元より裏切り者として見ていなかったラプソディにとって、この再開は酷く動揺している様だった。


彼がそんなことをするはずがない。でも、事実そうだったらどうする。


そんな問いかけを自分の中で繰り返し行われ、自問自答を繰り返していた様だ。軽く落ち着くと、ラプソディはベットから降りぼうくんを見た。

「ソイト。一つだけ、聞かせて。」

「何かな。」

少し顔が赤いものの、表情は真剣な眼差しを彼に向けつつそんな問いかけをラプソディはした。この後何かをするつもりなのであろうが、その前に彼の答えを聞きたかったのだろう。両手を固く握り、問いかけに対する答えがなんて返ってくるのかを考えしばらく身構えていた。

「貴方の願いは、何……? 今、一番叶えて欲しい願いって何?」

「願い?」

「うん…… ……私に出来る、最初で最後の願いを叶えさせてほしいの。……彼をこんな目にあわせておきながら、言えた義理ではない事は分かってるけど…… でも、教えて欲しいの。」

「………」

彼にそう問いかけると、ラプソディは軽く説明を入れつつ詫びを入れつつを繰り返しつつ問いかけていた。大好きだったクラウをこんな目にあわせておきながら、それで償いを出来るとは思っていないと言う事を踏まえつつ、彼なりに何かをしたかった様だった。

唯一この街に残った存在であり、この場から離れようとしない彼のために。出来る事をしたいと、彼女は必死に伝えていた。その考えに軽く気付いたのか、ぼうくんは少し考えつつ再びラプソディを見た。

「それは…… ラプソディさんに出来て、俺に出来ない事をしろって意味?」

「ううん。貴方が出来て、私が出来そうにない事でもいい。もちろん、共に出来ても出来なくても……… ……私も、彼にやれることをしてあげたいの。」

問いかけに対し軽く質問をすると、彼女はそう答えた。互いに出来ても出来なくても構わない、何かをしたいという事だけ。彼女はぼうくんにそう告げると、彼は納得したように返事をしつつ頷いた。

その後、隣に立っているリダスの事を見た。

「……リダス。」

「なんだ。」

「俺は、この街から出る事を望むつもりは無い。外へ出た所で、またあの集団の中へ帰るつもりは無いし外の空間に馴染むつもりもない。……だから。」

軽く声をかけ、今自分が考えている事を彼に告げた。直接ラプソディに言うよりは、まだ何か考えが整理できていない様子で話しつつ彼は整理していた。だが、肝心な意味を告げる前にどうしても口が閉じてしまう様子で、考えすら告げられない自分を軽く責めている様子だった。

そんな彼を見ると、リダスは軽くぼうくんの肩に手を置き「大丈夫」と声をかけ、安心させながらラプソディを見た。

「……テリスター 彼の望みは、これだ。」

「うん、わかった…… ……私、もう後悔しない。」

「ぇっ………」

その後リダスは彼女にそう言い、今の話だけで何をしてほしいかを告げた。まさかこれだけで伝わったのかと彼は驚いていたが、ラプソディも納得したようにそう言い後から気になる台詞を言った。

それに対し、ぼうくんは少し驚きつつ再び彼女を見た。

「何を……する気………?」

「貴方の願い。……それは、貴方をこれ以上独りにしない事。そして貴方をもっとも理解する人をそばに置く事。……だから、私はクラウさんを起こしてみせる。」

気になる台詞に対し問いかけると、ラプソディはそう答えベットで寝ているクラウの頭を撫でた。今一番叶えたい願いであり自分が赴いた理由がそこにある事を同時に告げた後、ラプソディはクラウの右側へとベットの周りを歩きつつ移動した。その後彼の手を取り、二人に見せるように掌を見せた。

そこには中指に着けられている1つの指輪があり、それがどうやら何かを意味している事を二人に教えていた。

「これはね、私がクラウさんにあげた物なんだ。ずっと一緒に居たいって言ってくれた、彼と私を繋ぎとめるための願いをかけた指輪。彼の行動に迷いを生まないようにって、この場所に付けたの。」

軽く指輪を見せつつラプソディは説明すると、軽く指輪に触れ軽く撫でるように人差し指を動かした。すると、撫でられた指輪の先端についていた宝石が軽く輝きだし何かを認証したようにほのかに煌めいていた。

「……でも、だからってどうするの。」

説明は受けたものの、その後彼は何をしたいのかが分からず再度ぼうくんは問いかけていた。何かしらの意味がありつけた物であることは分かったが、それと叶えて欲しい願いがどうやったら繋がるのかが分からない様子。

軽く周囲にハテナを浮かべながら、彼はラプソディを見ていた。

「私との関係を途絶えさせれば、指輪を付ける前の彼に戻る。その瞬間を利用して、時間を巻き戻し、彼を起こして見せる。」

「えっ…… で、でもっ! そんなことをしたら!! クラウはラプソディさんの事を忘れるんだろ!? そんなの間違ってる!」

そんな彼にラプソディはそう言うと、説明の趣旨とやる事に推測が立った様子で叫びだした。やり取りに対しリダスは何も言わず、二人で和解し事が進行する事を静かに見守っていた。

「ううん、私はもう迷わないって決めたの。……それに、私のせいで周りの皆を苦しめた。もう、私との繋がりを残しておく必要なんて……ない………」

「だからって!! クラウは……… ……ラプソディさんの事が……好きなのに………!」

彼が怒るのも無理はないと思いつつ、ラプソディはこの後行う事に対し迷いがない事を再度彼に説明した。


今までの行いと望んでいた考えが、願いが変わる前の街を生み出した。他人への幸せを願っていた自分がいつしか、他人を妬み不幸にし支配下に置いているかのように自分を錯覚させた。それに反抗し、間違いだと教えてくれる存在にであった。この数か月の間に街で起こった事全てを走馬灯のように思い出しながら、ラプソディは彼に言った。

だがぼうくんは自分ではなく、寝てしまっているクラウの事を想いながらそう叫んだ。彼は間違いなくラプソディが好きであり、自分と同じかそれ以上好きだと言ってくれる。そんな大切であり今まで支えになってくれていた彼の記憶から消してしまえば、絶対にラプソディが不幸になる。そうなる事を望みたくないと、もう一度引き止めるようにぼうくんは言った。

その時だ。

「お願い……分かって、ソイト………」


ポタッ…… ポタッ………


「………」

引き止めに対しラプソディはそう言いつつ、ベットに両手を付きながら涙を流した。そして発言と目の前で泣いている彼を見て、ぼうくんはそれ以上何も言うことが出来ないでいた。彼もクラウが自分の事を忘れてしまう事を望んでおらず、むしろ覚えてて再度目を覚ましてほしいと願っていた。だがそれはもう手遅れであり、自分のせいで彼を死なせてしまったに等しい。

だからこそ、目覚めさせる対価にその記憶を差し出す決意を固め今この場にやってきた。それをぼうくんは知ると、それ以上彼女を引き止める事は苦しめる事なのだと同時に悟った。

「私も……! クラウさんの事を忘れたくない!! 皆と離れたくなんてなかった! ……でも、私が起こした事が今の現実を作った…… だから私は、その対価を支払わないといけない。」

「………」

「それに…… たとえ記憶がなくなっても、クラウさんは苦しまないよ……? そばにはソイトが居るし、この街は平和だし私はもうこの場所から消えるから。」

「えっ………」

クラウの事を忘れたくない上、彼が自分を忘れてしまう事を考えただけでラプソディは胸が苦しくなるような感覚に襲われていた。今までたくさんの人達の幸せを願った結果、その平和と幸せのサイクルを見つめて彼は今まで生きてきた。しかし、いつしかその平和に憧れを抱き自らの身にやってこない幸運をねだり、相手の幸せ振りを見ては恨む様になってしまった。

それが改革前の街であり、それを変えようとしたのがアルダート達を含む改革者であり、リダス自身だった。今までやってきてしまった事へ対する償いをすると同時に、その後を生きるクラウは何も苦しくないと彼は言った。それに対し、ぼうくんはその後に告げた『街から消える』と言う単語に何か引っかかった様子を見せた。

「消えるって…… ラプソディさん、街から出ていくの……?」

「出ていくっていうか、本当に消失するっていう言い方が正しいかな…… もう生きる意味合いは無いし、これ以上気を付けて生きても無駄だったって思うくらいなら。そうするしかないって思うから……… ムーンもノイルもカウザも、コリズもエルもソリウスも…… そしてソイトも、もう苦しまなくて良いんだよ。」

問いかけに対しラプソディはそう答えつつ、今はいない外へと出て行った存在であり友人の事を気にしていた。


皆が忘れてしまえば、その時の記憶を想いだし苦しまなくて済む。彼等が平和に暮らしていれば、自分が居ても居なくても大丈夫な空間がいずれ出来上がる。今は孤独なぼうくんも、彼を支える相手が居れば心配はいらない。

ラプソディはそう考えており、笑顔でぼうくんを見ながらそう言った。しかし目からは涙が流れ落ちており、頬を伝い襟元の布地を徐々に湿らせていった。笑いながら自分のためだと言うラプソディを見て、ぼうくんはただ静かに彼を見る事しかできないでいた。

その後何かできないかと思い辺りを見渡すが、リダスは静かに首を振りそれは望んでいない事を彼に悟らせた。言ったら聞かないのが彼女であり、直せるくらいなら苦労はしないのだろう。リダスはそれをわかっている様子で、ぼうくんにそれを見送ってほしいと目で訴えていた。

「……… ……分かった。」

その後彼は何も言わず、再びラプソディを見た後こう言った。



「ラプソディさん…… クラウを、起こして……… 俺のそばに、ずっといてくれるクラウを……! 起こしてくれ!!」

軽く涙目になりながらも、ぼうくんはそう叫び願いを彼に告げた。彼の言葉を聞き、ラプソディは流れ出ていた涙を拭い手を服で拭くと、クラウの手を再度握り自分の顔へと近づけた。

その後クラウを一度見た後、こう呟いた。

「ごめんね、クラウさん……… ……今まで、ありがとね。」


スッ


彼に向けて笑顔で一言いった後、ラプソディはそのまま彼の指輪に口づけをした。すると、指輪は宝石を中心にしてヒビが入りだした。


ピキッ……ピキッ!


徐々に銀の指輪にヒビが広がりだし、小さくもあった溝が徐々に深まって行った。宝石はその間もほのかに輝いており、一瞬強力に輝いた。すると、


パキンッ!


指輪は大きな音を立てて砕け散り、彼の指の間を抜けて粉々になってしまった。その後彼等を纏う様に風が何処からともなく吹き荒れ、優しく彼等を包み込んだ。

急に噴き出した風に驚き手を前に置きながら、リダスとぼうくんはその光景を見ながら何が起こっているのかを把握しようと彼等を見ていた。口付けしていたラプソディはいつしか顔が離れており、そのままクラウの事を見つめていた。相変わらずクラウは目を瞑ったままであり、風に髪を靡かせているもののまったく起きそうな気配はなかった。

その後風が吹かれている間、彼等はずっと体制を変えることなく続けていた。


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