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英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
本編・リダスシナリオ
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悟りの乙女 1

雲間から降り注がれた光の道を通って、リダスは一人空の道を進んで行った。背に広げた翼を羽ばたかせ、初めてこの街へとやってきた当初の事を思い出しながら。彼は一人、大切な人に会うために進んで行った。



バサッ………


「……… ……テリスター」

管理課の塔へとやってくると、リダスは一人塔のふもとへと降り立った。改革当初の時と違い地区を繋ぐ橋が彼の後ろにあり、今では誰でもこの塔へと入る事が出来る状況となっていた。彼等の行いによって道の建設が許可され、先日出来上がったばかりのこの橋はとても綺麗に作られ、まるで当初からあったかのような雰囲気さえもあった。それだけ塔とのミスマッチを無くした、出来栄えであった。

背後に広がる大きな石橋を一瞥した後、彼は一人塔の中へと入って行った。

『メイリーとアスピセス、それにネコにもあれから会っていない……… もし彼等がここへ居るのであれば、テリスターに会う前に……話がしたい。』

当初塔を昇った時同様に転送装置を起動させ、彼はゆっくりと上層部を目指して進んで行く。その場で出会うべき相手の事、そして話をするべき相手に出会える事を彼は望んでいた。しかし転送先に広がる空間一つ一つを確認しながら進むも、彼の前に現れる者は誰も居ない。

噂通りの静寂が、塔の中には広がっていた。

『……居ないのか。』

そう思い諦めかけた彼は装置を起動させ、次のフロアへと向かった。すると、



シュンッ


「………?」

先ほどまでとは違った空間に彼は迷い込んでいた。やって来たのは一面が白く、照明とは違った白さに包まれた空間。中には台座と思われる石で出来た置物が五つ置かれており、台座の上には奇妙な形をしたオブジェが乗っていた。静かに彼は台座の元へと向かい見てみると、そこには管理課の存在達5人の彫刻が置かれていた。

小さなネコSの適当さが分かるポーズも、メイリーの気高さが分かる脚線美の彫刻。アスピセスの構えた武器の造りも細かく、クラウの髪や体毛も細部にこだわり見事に表現されていた。そんな四人に見守られるように中心にはラプソディの彫刻があり、胸の前で手を組み何かを祈っているような体制だった。

「……テリスター」



「まさか、この部屋にまでやってこれるなんてな。ストレンジャー」

「?」

目の前にある彫刻を見ていると、不意に彼の耳に声がやってきた。静かに辺りを見渡し声の主を探すと、彼の上からゆっくりと降りてくるアスピセスの姿があった。出会い当初から持っていたステッキに乗り下降してくる彼を見て、リダスは静かに後方へと下がり彼が降りられるよう見ていた。

「この部屋は元々俺達管理課と、それに認められた相手しか入れない次元の狭間。お前がここへ来れるほどに、乙女は認めたって事なのか。」

「………」

「まぁでも、少なくともネコとクラウが認めてたのも事実か。半数を締めれば入れるし、そんなに不審に思う事もねっか。何か用か、改革を済ませたのならこの塔に来る理由もないと思うんだけどさ。」

話をしながら彼は床へと降り立つと、静かにステッキを手にし正面からリダスと話をし出した。彼が迷い込んだ空間は本来ならば次元の狭間に位置する空間の様で、普通の存在ならば入り込む事は出来ないと彼は話した。

現に改革当初はココを通る事は無く上層部へと彼等は移動したため、今だからこそ入れる場所なのだとリダスは認識し彼に要件を告げた。

「テリスターに会いに……… そしてアスピセス、君と話がしたくてココへ来た。」

「へぇー そりゃご苦労様。」

要件を聞きアスピセスは納得すると、ステッキを手元から消した。互いに戦う気が無い事を改めて証明し話を聞く体制に入った事を見ると、リダスは話をしだした。

「君は確か、テリスターのためにこの街を変えたと言っていたな。この街に居た君は、何を願ってそうしたんだ……?」

「この街に住む奴等は、最初は平和に暮らしていた。裕福な奴もいれば貧民も居て、格差もあれば平等もあるよくある街さ。俺様はどっちかって言うと貧民で、働かなければ生活できない側だった。」

「………」

「乙女と会ったのは仕事先で、俺様へ依頼をしてきた。クラウが管理を任された宮殿の、ガラス清掃にな。そこで乙女にあった。」

彼の質問に対しアスピセスは話しをしだし、何処でどう出会ったのかを話出した。




彼等の住まう街は、元々良し悪しのバランスが取れたどこにでもあるありふれた街の平和があった。金を持つ者もいれば持たない者もおり、治安はそこそこ人々の暮らしはそれ次第とも言えるほど、全てが全て約束された場所ではなかった。

アスピセスは街に当初から住んでおり、自らの生活を支えるため得意とする仕事を日々こなしていた。苦労とは裏腹にあまり得られない金銭は何時も彼と共に居て、それ以上の幸せを彼は望む事が無かった。



 自分が出来る事はこれくらいであって、それ以上に何かが出来る事も無い。



それが、その頃の彼の考え方だった。

「乙女は他に仕事を寄越してくる奴等と違って、見た目に似合う優しい性格をしていてな。どっちかって言うと平和ボケしていたとも言えるし、俺もそんな人が少しだけ羨ましかった。静かに暮らせて、時々仕事にやってくる人達を出迎える。そんな風に暮らしてみたいって言う願望も、その時はあった。」

「………」

「お前と共に改革をした奴等と会って居た事も俺は知ってる。その時の乙女の笑顔はとても輝いていたし、乙女も彼等の事が好きだったんだと思う。『ずっと楽しい事が続けばいい』って、俺が休憩する際に持ってきた茶と一緒に話を持ってくるほどだった。」

宮殿に住んでいた姫はアスピセスと関わりを持っており、仕事の合間に持ってきたお茶で休憩をさせる事が基本だった。一部自分で行う事を望んでいる姫が淹れてきたお茶はどれも美味しく、その際に持ってきた話の種はどれも楽しそうに彼女は話していた。

自身が汚れる仕事を行っているのにも関わらず彼女は親切にしてくれていた事が、彼にとっても嬉しかった事の様だった。

「でも、ある日乙女がそんな楽しげな会話とは違った話をする事が増えてきてな。それからだ、乙女から笑顔が消えたのは……」

「笑顔………」

「大体の理由は関わっていた連中なんだろうなって思ったが、それ以上に気に食わない事とかが多かったらしい。住処も住処で格差が目立つ事も、一つの要因だったのかもな。周りと違って『苦労を知らない』って言う話も、俺の耳に入ってくる事もあった。陰口を叩かれる事も、多かったんだろうな。羨ましくて。」

「………

それからも仕事で赴く事の多かった彼は、姫の変化を見ていた。お茶をしていても楽しくなさそうな表情を浮かべる事が増え、なおかつ話の話題も何処となく妬みが多かった。周りの評価もそれから耳にする事が多かった彼にとって、姫にはつらい現状だったのだろうと言った。

「俺様も段々と寂しそうにする乙女を見るのが辛かったし、暮らしが暮らしだから言われる辛さも解ってるつもりだ。……でも、ある日な。乙女が俺に休憩用のお茶を持ってこない日があったんだ。」

「………」

「あの時が、俺達管理課の存在達が街を変えた時だな。俺達は乙女の未来を取り戻したくて、四人で手を組んだ。」

そしてある日の切欠を境に、彼等は街の存在達を敵視する事を選んだ。自分達と同じように苦しむ姫を護りたかった、自分達と違う未来を手に入れて欲しかった。

全ての希望を託すように、彼等は街を変え支配したのだった………



彼女のそばに居たネコS、仕事で話しをする事の多かったメイリー ある日街へと迷い込み、互いに好きになった姫を護りたいと誓ったクラウ。三人と意見があった事もあり彼等は宮殿を捨て、街を統括するための塔を築きあげた。

無論街の存在達からの否定も多く簡単に叶う願いでは無かったが、そんな自分達のためにと姫は自らの一部を対価にした。その際に出来上がったのが『流星石』であり、ネコSを初め破壊を試み、メイリーと共にアスピセスは塔を護る行いをした。無論その際の姫を一人にさせないようにと、クラウはずっと一緒に居る事を望んだのだった。

「……俺様の願いは『乙女の未来を取り戻す事』 乙女は俺達とは違う考えもあるし、手段も自ら創りだす事が出来る程だ。裕福とか幸せだから助けたいんじゃなくて、俺達に出来ない未来の幸せを乙女から貰いたかったのかもしれない。犠牲と言えるほど、俺様も街の存在達は好きじゃなかったしな。」

「テリスターの未来……か。クラウも、同じことを言っていたな。」

「だろうな。俺様以上にクラウは乙女のそばに居たし、乙女もクラウが好きだった。発足は俺様だったけど、俺様はクラウにどの面でも負けていた。だから何時しか敵視していて、願った当初と違う結末を俺は迎えたのかもしれない。そんな考えを暴走させなければ、アイツも死ぬ事はなかったのかもしれないしな。」

「………」

アスピセスの話を聞いて、リダスは静かに彼の事を見ていた。何処か寂しげな彼はラプソディの石造の元へと向かい、胸の前で組んだ手を静かに握っていた。その目は遠い場所に居る最愛の人を見つめる眼差しを向けており、相手の事が本当に大切でなければ見せる事すら出来ない瞳だった。

彼の願いであり管理課皆の願いを知り、リダスは静かに彼の元へと向かって行った。

「……これからテリスターの元に行こうと思うんだが、君は否定するか……?」

「んや、否定はしないだろうな。俺様に出来る事はもう無くなっちまったし、クラウももう居ない。後何かを託せる相手って言ったら、あんな連中よりもお前だけだ。そのために、この場所にやって来たくらいだしな。行ってこいよ、乙女の所に。」

最愛の瞳を向ける相手と会う事を否定するかと聞くと、アスピセスは顔を横へ振った。自分達が助けられると信じ自分よりも行動が出来ると信じた相手が居ない今、その願いを叶えてくれる相手は彼からみてもリダスしかいないと思っていた。

塔のバルコニーから落ちてしまった姫の話を交わした際、カツキ達に何かを託す気に彼はならなかったのかもしれない。自分が出来る事が無くなってしまった今、それだけの事が出来信じられる相手である事を彼は言っていた。

「……ありがとう、アスピセス。」

そんな彼の考えを聞き終えると、リダスは礼を言い静かに頭を下げた。その後出口を彼から聞くと、外へ出るべく彼は石造を背に白い空間の外へと出て行ってしまった。




『……… ……心優しい龍にしか、もう乙女を助ける事は出来ないんだろうな……… 俺も何か出来たら、全力で行いたいのに。』

リダスがその場を去ると、アスピセスはラプソディの石造を背にその場に座り込んだ。その後寂しそうに心の中で呟くと、静かに涙を流していた。


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