星へと変わった感情 4
バンッ!!
「!! あぁっ……!!」
「乙女ぇぇええええーーー!!!」
不意に彼等しかいなかった空間に、勢いよく扉が開く音が響いた。その場にいたアルダート達が目を向けると、そこには開いた扉の向こうからやって来たメイリーとアスピセスがおり、テラスから落ち行くプリンセスとストレンジャーの姿を見て叫んでいた。
その光景を目にし、人は慌ててテラスの元へと向かい下を覗くも、塔は高い位置にあり厚い雲によって地上が見えなかった。落ちて行ったストレンジャー達を目視出来ず、二人はその場に泣き崩れた。
「くそっ……! 俺様が……俺様が居たのに………!! 何で!!!」
「あぁぁぁっ………」
自らが居たのにも関わらず、相手を守れなかったとアスピセスは悔しそうに叫びながらテラスの淵を掴んでいた。隣では悲しみのあまり両手を顔に当て泣いているメイリーもおり、背後の羽根は静かに畳まれその場に座り込んでしまった。
ガシャンッ!!
「ぁっ……!」
不意にやって来た二人の様子を見ていると、何故か捕獲されていたカツキ達の鎖籠の底が抜け落ちた。それにより半ば転落する形で彼等はホールの床へと降り立つと、テラスで泣いている二人を静かに見ていた。
「なぁ……… お前らの言うプリンセスって言うのは『ラプ』の事だったのか……?」
二人を見ていると、不意にシップスは彼等の元へと向かい声をかけた。最初に彼等が見た時にこの部屋に居たのは、間違いなく彼等の知り合いである『ラプソディ』だった。しかし雰囲気も言動も違い様子が変だったため、決定打に欠ける様子で彼は質問していた。
「……… そうだ……」
「やっぱりっ……! 何でアイツは、あんな事を俺等に」
「おめぇらに言って解んのかよっ!!! 乙女がどんな思いで、お前らと対峙したと思ってんだ!!!」
「事…… えっ………?」
問いかけに対しアスピセスは静かに答えると、確信を持ったようにクロは彼等に問いかけようとした。しかしそれを遮るかのように彼は怒鳴り声を上げ、理由を答えて理解するのかと反論した。
とはいえ不意な事だったためか、その場にいた全員が言葉の意味に理解が出来ず彼の事を見るしかなかった。
「乙女は元々敵なんかじゃねぇんだよ……! 環境が変わって苦しむ中、たった一人で俺達の事を支え続けてくれた………そんな乙女の気持ちが、本当に分かって聞いてんのかよ!!」
「そ、そんなのはお前らの言いがかりじゃねぇか!! 俺達ばっか苦しめるような区域にしたくせに」
「そんな言い訳吐くんじゃねぇぇええ!!!! 屑共が!!!」
「っ………」
怒鳴り声を上げた後、彼は続けて呟き混じりにその場で行動していたラプソディの事を告げた。しかしその当時の気持ちを本当に理解して聞いてるのかと叫ぶと、それに対しソニルスは反論をしようとした。
だが言った言葉にありきたりな意味合いが含まれていると思ったのか、再度アスピセスは怒鳴り言葉を遮った。
「だからテメェらは何も生み出せねぇんだ!!! そんな表向きの自分を立てるような言い訳ばっかりして、自分の事を棚に上げて!! 苦しんでいる意味を、全然理解してねぇだろ!!!」
「………」
「ああっ………!!」
「ぁっ! お、おいっ!!」
怒り狂い反論さえも許さない怒鳴り声を聞き、彼等はただアスピセスの言動を受け流す事しか出来ずにいた。すると、不意に泣いていたメイリーが我慢しきれなくなった様子でその場を飛び立ち彼等の横を顔を隠したまま飛んで行ってしまった。彼女の様子を見たミークは制止させようとするも、声は届かなかった様子で彼女はそのまま扉の向こうへと姿を消してしまった。
「………お前等と話してても拉致がねぇ。とっとと消えろ。乙女に寄るな!!!」
泣いているメイリーを見たアスピセスは苦虫を噛んだ様な表情でそう告げ、彼等の横を静かに通り過ぎて行った。気持ちさえも理解出来ない輩がこの塔に居るのが不愉快な様子で、扉の近くに立っていた存在全てを睨みつけ扉の先へと消えて行った。
「……なんだよ、アイツ………」
「俺等がラプの気持ちをわかってないって、なんで偉そうに………」
二人の姿が消えてしばらくすると、ハンメルとソニルスは口々にぼやいた。彼等はラプソディの友人であり、接してきた年数もあってか大抵の事は理解し行動してきた。
しかしあれだけの反論をされては納得いかない様子で、苛立っていた。
「……カツキさん、ラプソディって………」
「俺の友達……だった人だ。もう全然会ってなかったんだけど、まさかこんな所に居るなんてな………」
「俺等同様に街の中に居ると思ってたのに、こんな所で管理課を名乗ってたんだもんな。ウゼェ。」
そんな彼等を気にしながらも、アルダートはカツキに気になっている事柄を問いかけた。プリンセスの存在を知っていた彼等ではあったものの、その本人の本当の名前は知らないに等しい。その上共に行動してきた人達の知り合いだと聞くと、何故今のような状況が出来てしまったのかが気になる様だ。
問いかけに対しカツキは静かにそう答え、断言しようとした言葉を濁らせそう言った。知り合ってから年数が立った今となっては会う事は少なく、それっきりで行方が分からなくなっていたに等しい。事実を知り気持ちが落ち着かない様子で苛立つシップスを見て、アルダートはそれ以上は聞かず皆悲しいのだと悟るのだった。
「……と、とにかく。ストレンジャーを探しましょ! 一緒に落ちて行ったって事は、まだ一緒に居るはずよ……!」
「そうねっ カツキさん、クロさん、シップスさん。皆さんも、一緒にお願いできませんか……?」
再びやって来た沈黙に耐え切れず、ペルティは不意に提案する様に彼等に言った。その場で立ち止まっていても仕方のない事であり、何も生まない上に出て行くよう言われてしまったのでは先も危うい。
彼女の提案を聞きベルミリオンも賛同すると、気分が落ちているであろうカツキ達に声をかけ一緒に探してほしいと言った。プリンセスの行動もだが、一緒に落ちて行ってしまったストレンジャーの事も気がかりなのだろう。
手をそれぞれ取り、彼女は一人一人に頭を下げお願いしていた。
「ぅ、うんっ ストレンジャーが心配だしねっ!」
「そうだな! 行くぞ、皆!!」
必死に頼み込んでくる彼女を見て、涼は一生懸命に口を動かし彼等に声をかけた。それに対しクロは返事をし、皆を纏めるかのように声をかけ扉の外へと向かって行った。同様にカツキ達もその後を追いかけ、ホールは次第に静寂に包まれていくのだった。
「………」
『……皆さん、ラプソディって呼んでた人の事……心配じゃないのかな………』
そんな中一人最後に残ったアルダートは、不意に彼等の言っていた言動に気になる点が浮かび考えていた。自分もストレンジャーの事は心配でありすぐにでも会いたいと思うのだが、知り合いであったプリンセスの事は誰一人名前を言わず探そうと宣言しない。
ましてや言葉の綾でもストレンジャー【が】心配、という言い方も気にかかっており少しさみしく思うのだった。
『アスピセスさんの言う事、ちょっと間違っていないような気がします………』
気にかかる点が多々上がるものの、アルダートはそれ以上は考えないようにしようと思い顔を左右に振り扉の向こうへと向かって行くのだった。




