星へと変わった感情 3
ガシャガシャガシャン……!!!
「! 何事!?」
ホールでの決別を誓ったストレンジャー達が動き出す、その前の事。管理課の塔のふもとで戦っていたドリフト達の耳に、塔のガラス窓が割れ落ちてくる音が聞こえてきた。音を耳にしたメイリーとアスピセスは慌てて上空を見ると、細かく粒子となったガラスの破片がその場にいた皆目掛けて降り注出来た。
「ガラス!?」
「な、何処から降って来たのだっ!! に、逃げるのだぁあーーー!!」
不意に襲来してくる攻撃を目の当たりにし、ギラルドは皆に逃げるよう指示しながら慌てて振ってこないであろう茂みの中へと隠れこんだ。彼の行動を目にしたアシュレー達も慌ててその場から離れ、皆散り散りになってガラスを避けた。
そんな彼等をしり目に、アスピセスは冷静に砂嵐でガラスの破片を回収し塔の外へと吹き飛ばした。彼の近くに居たメイリーも目を瞑りその行動に身を任せ、攻撃の手から逃れて行った。
「何で急にガラスが……… ……!! まさか!!」
「乙女……!! 奴等が辿りついたって言うのか!! チッ、ネコの奴しくじりやがったな!!!」
全てのガラスを飛ばし終え何故降り注いできたのかを、彼等は冷静に分析した。落ちてくる前の姿が何処にあったのかを考えると、不意にメイリーの頭に過る一人の存在の姿があった。彼女の危険を感じアスピセスは相手の名前を口にし、振って来たガラスがホールの物ではないかと察した。
慌てた二人は周囲に強く砂嵐を展開すると、塔の中へと飛び込み急いで上層部へと向かって走り出して行った。
「くっそっ、急になんだって言うんだよ……… ……あれ。」
「メイリーと、アスピセスは何処行った?」
降ってくるガラスの音が止むと、ドリフト達は外の様子をうかがいつつ茂みから這い出てきた。高調子になり相手を制圧出来るかと思った瞬間の出来事であったため、気分が害された様だ。
苛立ちながら辺りを見渡すと、そこには二人の存在の気配がない事を知った。
「………カツキ達、やったのかな……」
それを見たドリフトはその場に立ち、ゆっくり塔の上層部を見上げていた。
無造作にやってくる鎖達を避けつつ、ストレンジャーは先頭に立ちプリンセスの元へと向けて駆け出した。その際も攻撃の波は止まらず、彼の行動を止めようと鎖達は襲ってきた。
しかし、今の彼は先ほどとは違い前へと向かう事を止めずに進む事が出来ていた。
ジャキンッ!!
「ッ! ベルミリオン、頼む!!」
「炎達……お願い! ストレンジャーのためにも、鎖を退かしてっ!!」
上方へと上がり彼目掛けて突撃しようとしていた鎖に対し、ベルミリオンは手にした流星石【熱風烈波】で鎖を吹き飛ばした。何度も何度も炎は渦巻いて彼の上や横から手が伸び、襲いかかってくる鎖を次々に払って行った。その際もストレンジャーは避けられる攻撃は全て回避し、可能な限り鎖を蹴り払い根元を折る事を意識していた。
相手の流星石は無限に生成されるが、それでも根本的に使いまわしている事には変わりはない。何度も地面へと突き刺さり壁から飛び出し、何度となく襲い掛かってくる相手に向けて足を止めるよう警告するかのように襲っていた。姫の叫びに往古する瞬間が、生成され動きが早くなるのを彼等は解っていた。だからこそその時が来るまでは、長い攻撃を無力化する様に鎖を切っていたのだ。
「ぁっ、そろそろ液が切れるわっ!」
しかし原液の残りが少なる事は変わりなく、彼等の持つ流星石では防ぐ事が無限に出来るわけでは無い。原液は全て有益であり、補充している暇も無い現状では切れたら護る事が出来ない事になる。だが徐々に少なくなる頃には、次の攻撃手段の準備が整っていた。
「ベルミリオン、今度は俺がやるぜ!!」
「ミーク、お願い!!」
事前に準備運動を終えていた様子で、彼女の隣に居たミークは自身の手足に流星石【直感反抗】の液体を振りかけていた。そして準備が整った事を告げると、すぐさまベルミリオンは身を引き彼の行動がしやすい位置へと下がった。
「いっくぜぇええーーー!! ハァアアッ!!」
バンッ!!
「………!! 飛び出せぇえ!!」
気合を入れてミークは叫ぶと、地面に向けて拳を握りしめ渾身の一撃を放った。その後再び彼は吠えストレンジャーに襲い掛かろうとしていた鎖達目がけて、地面から彼の巨大化した拳が幻影となって打ちあがった。幻影が命中した鎖は移動していた進路を反れ、壁へと向かって激突して行った。
その後も絶えずやってくる鎖を目にし、今度は軽くジャンプし彼は右足を蹴り上げた。
「そこだぁあ!」
ガキンッ!!
すると今度は彼の後方に位置する壁から巨大化した靴が飛び出し、彼が蹴った進路の通りに幻影が移動し鎖を蹴り落として行った。自らが放った一撃をどの壁からも出す頃が出来る彼の流星石は、ストレンジャーの移動進路に合わせて事前に読み放っている。
そんな戦闘慣れしたサポートもあり、ストレンジャーも飛んでくる幻影に注意を払いつつも前へと進んで行った。
「いやぁあ…… 来ないでぇええーーー!!!」
ジャキンジャキンジャキンッ!!
自分の元へとやってくる気配を感じ、風向きが変わった事を知らせる姫の叫びが周囲に響き渡った。すると再び姫の足もとから鎖が何本も突き出し、新しく生成された鎖達がストレンジャーの元へと迫って来た。
それを見たミークは再度拳と足で鎖を払うも、徐々に幻影が薄くなっていくのを彼は見た。付けていた液体の感触も徐々に手袋から消えているのを見て、付着した原液が薄くなっているのを感じた。
「チッ! 原液が乾き出した!!」
「なら、今度はアタシの番よっ! ストレンジャー! 屈んで!!」
彼の力が弱まって来た事を察し、ペルティは持っていた流星石【跳躍美星】の栓を抜き大きく振りかぶった。行動と同時に自分がサポートする事をストレンジャーに告げ終えると、彼女は高く振り上げた両手を一気に振り下ろし、周囲に生成した流星弾を弾ませた。星の形となった弾丸はボールの様に弾み、彼を護る様に周囲を跳び交い鎖一つ一つを弾き飛ばした。
しかし先ほどのカツキ達同様に彼女の流星石が消費しない力もあってか、一つ弾く毎に星は消えて行き彼を護る力が無くなっていく。それでもなお鎖の攻撃は止まず、彼の事を襲い続けた。
すると、次の瞬間。
ジャラジャラジャラ!!
「……! マズイっ!!」
彼が向かっていた方角の上空から鎖が絡まる音を、ストレンジャーは耳にした。何事かと目を向けて見ると、そこには鎖達が幾多も集まりちょっとやそっとでは弾けない鎖の束となって襲い掛かろうとしていた。慌ててそれを見たストレンジャーは攻撃を防ごうと流星石の瓶を構えるも、彼が攻撃する前に鎖達が動き出した。
「ストレンジャー!! 危ないッ!!!」
「クッ!!」
「ストレンジャーさんっ!!!」
ガキンッ!!!
「……!! アルダート!!」
不意な攻撃を防ぐ前に動かれ再び掴まれる事を覚悟したその時、ストレンジャーの前に一つの影が割り込み鎖の間に立ちはだかった。その直後に金属同士が強くぶつかりあう音が響き渡り、彼は割り込んだ相手の名前を呼んだ。
そこに居たのは、先ほどまでミーク達と同じ場に居てサポートをするつもりだったアルダートだった。両手で強く握った流星石【一点集中】光っており、剣刃で鎖を受け止めていた。
「行って……下さい!! 僕の力じゃ、一分も持ちません!!」
必死に剣を握りしめながらアルダートはそう言い、自分自身の体力の無さを自覚したうえで行動している事を彼に告げた。瞬発力だけは自身のあった彼の脚力で難を逃れると、ストレンジャーは頷き翼を羽ばたかせ宙へと飛び出した。
その行動をアルダートは見届けると、受け止めていた鎖を切る様に剣を振り下ろし、剣刃が駄目になったのを見届けた後ミーク達の居る場所へと転がり込んで行った。彼が無事である事を見届けると、ストレンジャーは握っていた流星石【氷彩零刃】の栓を引き抜き、周囲に液体を散布した。
「破ッ!!」
シャキンッ!
「!!」
すると液体は霧となり瞬時に氷の刃を無数に生成し、姫目がけて突撃を開始した。……と思われた。
しかし、
ガシュンガシュンガシュン!!
「キャッ!」
大きく鋭い氷柱になった氷達は姫の元には攻撃をせず、彼女の手前に襲撃を開始したのだ。そこには渦巻いていた鎖達が居た事もあり氷の圧力に耐え切れず粉々になり、周囲を照らしていた日光によって氷が乱反射した。不意に視覚で捕えていた以上の光を目の当たりにし、姫は一瞬たじろぎ両手を顔の前にかざし光を防いだ。
すると、
ピキッ……パキッ!!
突き刺さった氷達はひび割れだし、光の屈折が変わり姫の元からそれ周りに弾け跳んだ。その瞬間を見てストレンジャーは姫の居る場所とは反対側に位置する氷の裏へと降り立ち、握りしめた拳を思いきりぶつけた。彼の降り立ったその瞬間に氷はストレンジャーの姿を余す事なく映し出し、まるで幾多も存在する鏡に映ったかのようにストレンジャーの姿を姫に向けて投影した。
「りゅ………う……… ドラゴン………」
その姿を見て姫が呟いた、その瞬間。
パキパキンッ!!
殴られた事によって氷達ははじけ飛び、トンネルを造る様に氷が飛び交った。姫の目には幻影から本人の姿を映しだし、無造作に飛び交う氷達を抜ける様にストレンジャーは走り込み、そのまま姫の事を抱きしめながら翼を羽ばたかせた。
身体を強く抱かれた姫は成すすべもなく彼に運ばれ、そしてそのままホールの外へと向かった。
「ッ!!」
次に気づいた時には二人は窓辺から空へと飛び出し、重力に身を任せて転落して行った。




