星へと変わった感情 2
管理課の塔へとやって来たアルダート達の前に立ちはだかったのは、プリンセス自らをも縛り付ける禁断の流星石の力だった。彼女の悲鳴を引き金としてか、不意に周囲に生成された無数の鎖達はカツキ達を拘束し宙へと吊り上げてしまった。
同時にアルダート達にも襲い掛かり、捕まえようと縦横無尽に襲い掛かっていた。
シュンシュンシュンッ!
「くそっ! これじゃ迎撃どころか攻める事すら無理じゃねぇか!」
一つ一つ冷静に避けながらも苛立ちが募ったのか、ミークは怒りながら発生元の姫を見た。すでに彼女の周辺には【鉄槌鞭】によって生成された鎖が渦巻いており、徐々に姫の身体に絡みつき自身の身動きすらも止めようとしていた。
流星石で出来た鎖を撃退するにも、自身の流星石は中和され溶けてしまう事も、彼等が動けない理由であった。
「ど、どうしましょう………! 僕達もですが、カツキさん達が!」
「ラプ、もう止めろ!! 今なら、まだ酷い事なんて」
「酷い………結末……なんて………!! あぁああああーーー!!」
ガキンッ!!
「うわあっ!!」
何とか避けながら一生懸命考えていたアルダートの声を聞いて、シップスは止めようと言葉をかけてみた。しかし今の彼女を余計に混乱させるだけであり、止めるどころか鎖のスピードが上がる一方だった。
不意に飛んできた鎖が自身を拘束する鎖にぶつかり、火花が散った。
「何か言っても駄目! 今のあの人を、余計に混乱させるだけよ!!」
「じゃあどうしろって言うんだよ!! 流星石が使えないんじゃ、俺達ここでくたばるしかねぇぞ!!」
彼の選んだ手法が間違っている事をベルミリオンは叫び、再びやって来た鎖を何度か避けていた。すでに混乱状態にある皆の意見を言うように、シップスはどうにかして欲しいと叫んでいた。
だが彼等はすでに拘束された身であり、何時自分自身に刃がやってくるかもわからない状態だ。その気になれば鎖の間から別の鎖を差しこまれ、身体に突き刺さる可能性だってあった。先ほどの一撃が不意に発動した事が、彼の命を奪うまでの結果に至らなかっただけ。次はどうなるか、彼にもわからない。
「………テリスター……!!」
バッ!
「!! ストレンジャーさん!!」
そんな彼等を尻目に、不意にストレンジャーは鎖を掻い潜り彼女の元へと向かって走り出した。急な事に驚きアルダートは彼の名前を叫ぶも、その声は届かずやってくる鎖達をストレンジャーは全力で避けていた。
身体を屈めたり空を飛んだりと駆使できる方法で彼は進み続け、方角によっては自分自身の足を使い蹴り飛ばして進んだ。少しずつ相手との距離が縮みだした、その時。
ガシッ!!
「ッ! しまった……!!」
「ストレンジャー!!」
不意に死角からやって来た鎖に足を取られ、即座に彼の身体が捕まってしまった。そのまま鎖は発動元からストレンジャーを遠ざける様に彼を振り回し、全く別の方向へと投げ飛ばされた。投げつけられた拍子に壁がへこみ彼の背中に痛みが走るも、ストレンジャーは気を持ち直し再びやってくる鎖を裂けようと壁を蹴った。
そしてそのままアルダートの近くへと降り立つと、少しバランスを崩した様子で彼の隣に膝を付いた。
「ストレンジャーさん、しっかりっ! ……あっ!!」
「させっかよっ!!!」
ガキンッ!!
それを見た彼は慌ててストレンジャーの身体を支え、彼等の元に跳んできた鎖をミークは蹴り飛ばした。先ほど物理的な方法であれば退けられる事を知り、果敢にも彼等の前へと立ったのだ。流星石を付着させていない靴であれば、痛くもかゆくもない様だ。
「クッ……… 早く、テリスターを…… 駄目なんだ、あの人を一人にさせたら……! 俺達への想いや、支えられていた意識が亡くなってしまう!!」
「支えられていた、意識……?」
「あの人は、強くないんだ………この環境を生み出した現実に、あの人は耐えられない。メイリー達はそれをいち早く知って、打開するために……テリスターを護るために、こんな街の姿に変えたんだ………」
痛む背中を抑えながらストレンジャーはゆっくりと立ち上がり、ミークの背中攻防を見ながら言いだした。カツキ達とは違う道を歩んできた彼は、管理課と接触するタイミングが多く管理課が出来た経緯を知っていた。
その事を話すかどうか迷っていたようだが、こんな状況となっては隠す必要もなくなったのだろう。その場にいた皆が彼女を攻めていた事を、まず変えようとしたのだ。
「早く、あの力を止めないと……… 拘束なんてしたって、あの人の望む姿には……ならないって事を……… 教えないと! クラウと、約束したんだ!!! 一人じゃないってことを、教えてやりたいんだ!!」
「ストレンジャー………」
次第に言葉に力が入り、最終的には今まで見せた事のない力量で彼は叫んでいた。それだけ大切にしていた相手を見つけられ、叶えなければならない願いを見つけられた。何時しか涙目になっていた彼の目からは、言葉を口にした途端に周囲に散布された。
飛び散った涙はそのまま床に触れ、小さな水たまりへと変わって行った。
「……… ……そうです。僕達は、もう一人じゃないんですよね。」
「アルダート………?」
今までに見せた事のない表情からの叫びを聞き、隣に居たアルダートはゆっくりと彼の身体を支えていた手を彼の掌に乗せた。不意な事に驚くストレンジャーであったが、彼のかを見た後の笑顔を見て少しだけ落ち着きを取り戻して行った。
「僕、今でもストレンジャーさんの役に立てる事が嬉しいです。ずっと一人だと思っていたから、何も踏み出せなかったしここまで来れるなんて思わなかった。……だから今度は、僕達がストレンジャーさんの力になる時です。僕は信じます、ストレンジャーさんの事を。」
「……そうね。私達はバラバラでも、最終的には皆でまた集まれた。……あの人も、きっと寂しかったのかもしれない。私に出来る事があるのなら、私もしたいわ。ストレンジャー」
「ベルミリオン………」
手を握ったままアルダートは話しだし、自分の考えもちゃんと伝えておこうと口を動かしていた。ちゃんと言えてるかもわからない、伝えきれていない所もあるかもしれない。それであっても、言わなければ何も変わらないから。
今の彼に解っている確かな部分を信じて、ストレンジャーへと向けて言葉を告げた。するとその言葉に反応してか、ベルミリオンも自分の考えを彼へと話した。
「だな。もう今となっちゃ、お前が敵の知り合いだとかはただの理由に過ぎない。……援護するぜ、ストレンジャー 大好きな相手の元に、行くんだろ。」
「アタシも手を貸すわ。……もう変わっちゃいさえすれば、こんな力に頼る必要なんてない。アタシ達は、アタシ達の力で動き出す場を創るのよ!!」
「ミーク、ペルティ……… 分かった。」
自分達を庇ってくれていたミークも自分の意見を良い、彼等の元に跳んできた鎖を蹴り飛ばしながらペルティも言い放った。この場に居る皆の心がそこにあり、誰も彼の事を否定しない事を。一人では出来ない事は皆ですればいい事を、改めてストレンジャーは知るのだった。
五人の意見が一致すると、ストレンジャーは静かに振り返りカツキ達を見た。その際も容赦なく跳んでくる鎖を見て、ミークとペルティは目で合図をし拳と蹴りで鎖を払った。
「……ゴメンな、皆。俺達、あの人を助けるぜ。………一人だと、寂しいからさ。早く、あの人を助けてやらないと。」
「ストレンジャー………」
「皆の事も助けたい。……でも、テリスターも………俺にとって、助けるべき相手だからさ。……本当に、ゴメン。」
どんな返答が来ようとも構わない、自分の考えをしっかりと持ち続けていたい。彼はその事を宙に居る皆に告げ、反対したとしても自分達はその行動をする事を宣言した。その言葉を聞いて彼等は何も言う事は無く、ただストレンジャー立の事を見る事しか出来ずにいた。
しばらくそんな彼等の視線を見た後、ストレンジャーは再度前を向き防衛してくれていたミーク達に合図をした。
「……テリスター 必ず、貴女を助けるからな……… ……皆、頼む。」
合図をした後一言言うと、ストレンジャーは後方に立つアルダート達に言葉を告げた。すると彼等はその場で頷き、自分達の持つ流星石をそれぞれ一つずつ手にしその場で構えた。
「任せてっ! 私達の力だって、ストレンジャーの役にくらい立つんだから!!」
「アタシ達の力で、あの人どころか……! この街だって変えちゃうんだからね!!」
「俺が援護側に回るなんてな。……任せろ、必ずお前を送り届けてやるからな!!」
彼の言葉に応答する様に、ベルミリオン達も同様に最後まで協力する事を約束し出した。何時しか変わり果てた街だけを変えるつもりが、こんなに大きな結末になるなんて、誰が予想しただろうか。彼等は誰も予想だにしておらず、こんな事が出来るとも彼等は誰も思っていなかった。
それでも、彼等の考えは一つだった。
「僕、皆さんを助けます。必ず、助けます! ………だから。」
『「信じて、待ってて下さいね」』
バッ!!
自分達の志が曲がらない事を意識し終え、彼等は前へと向かって大地を蹴った。変えるべき結末が、まだ終わらない事を知ったかのように。全力を尽くすのであった。




