全てを変えたあの場所で 4
突如始まった管理課の塔での戦い。塔のふもとで戦うドリフト達と、塔の頂上を目指すアルダート達。互いに待ち構えていた敵達と、それぞれが真剣勝負を挑んでいた。
「ハァアア!!」
ガキンッ!
塔のふもとで奮闘するドリフト達は、対峙するメイリーとアスピセスの攻撃を避けつつ攻め続けていた。
互いが持つ力を使い続け、相手の動きを止めるべく行動していた。この場に残った皆が『消費しない流星石』の持ち主と言う事もあってか、果敢にも相手の懐に潜り込もうとしていた。
「ヘッ、それくらいで俺様達を倒そうだなんて……あめぇんだよ!!」
「ッ!!」
しかし相手も手持ちの武器があるためか、中々一筋縄ではいかない戦いが繰り広げられていた。槍による攻撃を防いだアスピセスは、スティックで防ぎつつ相手の攻撃を払っていた。彼等の持つ武器は特殊な物のためか流星石の効力は発揮されず、切れ味の良さなど構わない鉄壁を誇っていた。
何度も何度も挑まれても欠ける事のない武器ほど、恐ろしい物は無い。
「ドリフト! 避けるのだ!!」
ババババンッ!
「チッ、また雷かっ!」
そんな攻撃を仕掛けたドリフトを見て、後方で待機していたギラルドが彼に向けて【落雷追撃銃】を乱射した。しかし飛んでくる弾丸は無く、全て対象の元へと降り注ぐ落雷と変化して彼等を襲った。それを見たアスピセスは攻撃を払いその場から移動し、雷の直撃を避け彼等との間を取ろうとした。
その隙を見て、今度は武器を手にしたスターライトが彼の元に攻撃を仕掛けだした。
「貫けっ……!!」
「そうはいくかっ!!」
彼の持つ【氷結長槍】がアスピセスを襲うとした瞬間、彼は手にしていた別の流星石を展開し周囲に砂嵐を発生させた。すると瞬時に彼等の視界を砂嵐が奪い、攻撃対象が目視出来ない状態と化してしまった。
無論それくらいでは攻撃を止めないスターライト出会ったが、続けざまに攻撃する手段は槍を水平に振るう事しか出来ない。待ち構えていたかのように振った先での金属音が、周囲に響いた。
「クッ……! 前が見えねぇ!!」
「俺様の持つ流星石は【砂漠奏】 お前等の判断材料となる視界そのものを奪い、貴様らに制裁を与えるために存在する力! 乙女の涙を誘う様な輩を……! これ以上存在させてたまるか!!」
視界を砂で覆われたドリフト達は瞬時に手で砂が目に入る事を防ごうとするも、そんな彼等に対し攻撃の手が休まる事は無い。自らの力を展開させたアスピセスはそのまま攻撃を開始し、飛び交う砂を凝縮し生成した砂の塊を彼等に向かって放った。
不意にやってくる攻撃の気配を感じ、ドリフト達は一旦その場から下がり彼との距離を置いて攻撃を避けた。しかし未だに止まない攻撃の手は視界を奪い続けており、小さくも身体に打ち続けてくる砂は徐々に彼等の体力を奪っていた。
「クゥッ、砂が邪魔なのだ!」
「こんな力があって、何で街の平和に使わないんだ!! これだけの力と天候を左右させる事が出来たのなら、もっと良い解決策があったはずだろ!?」
「お前等は間違ってる。存在を傷つける行為ばかりして、誰かを護れるわけがない! 力の使い方がそもそも間違ってる!」
視界を奪われ敵の気配が途切れ途切れになる中、ドリフト達はアスピセスに向かって抗議した。強力な流星石が彼等の力になるのにも拘らず、どうしてその力を向ける矛先を違えてしまったのか。今からでもその方法を見直しさえすれば、もっと良い事があるだろうと叫んだ。
「黙れ………!! そんな説教、貴様等なんかに言われる筋合いはねぇんだよ!!」
バシュンッ!
「!! うわぁあ!!!」
「ドリフト!!」
しかしその声は彼の耳には届かず、再度凝縮した砂の塊を相手に向けて発射した。その攻撃の反応に遅れてしまったドリフトは砂の攻撃を受け、後方に吹き飛ばされ塔を覆う壁へと激突した。慌てたギラルド達が彼の元に行くと、彼は平気だと言った後に起き上がり、再び流星石を構えていた。
「へぇー やっぱこんくらいじゃ死なねっか。じゃ、メイリー! お前の幻影でコイツ等を操り人形にしちまえよ!」
起き上がるドリフトを見たアスピセスは関心した様子で一言言うと、周囲の砂嵐をもろともせずもう一人の力の持ち主に指示を促した。それと同時に砂嵐から妙な濃霧が溢れだし、彼等の視界を続けて襲いだした。
「何……!!」
「ウフフッ、そうこなくっちゃねぇえ!! 舞いなさい!」
そんな彼からの指示を受け、何処からともなく彼女の声が周囲に響き渡った。同時に、濃霧に数体の人影が浮かび彼等の元へと勢いよく襲来し出した。彼等の元にやって来たもの、それは影の様な色合いをしたメイリーだった。
「ッ!」
ガキンッ!
「……! アシュレー!!」
幻影に襲われたドリフト達は一瞬身構えるも、攻撃を防ぐかの様に一人の針鼠が彼等の間に入り込んだ。
そして手にしていた流星石【中途製剣】で攻撃を防いだ。再び周囲に金属同士が擦れ合う音が響き、攻撃を無力化した事を知らせていた。
「幻影に惑わされるな! 幻でも攻撃は仕掛けてくるが、本物は一つだけだ!!」
「そう、私の流星石は【蜃気楼】 私達の誓願によって具現化された幻は、貴方達の悪夢となるのよ! さぁ影達、華麗に舞いなさい! 愚かな者達を奴隷にさせなさい!」
その後も再度仕掛けてくる幻影達の攻撃を見て、トライムとライトも彼同様傷ついたドリフト達の前に立ち攻防戦を繰り広げていた。しかし長銃と剛拳による力では中々相手の攻撃は払えず、悪戦苦闘を強いられていた。
すると、
「皆、伏せろ………! ……逆、噴射ぁあ!!」
バッシュンッ……!!
別の場所で力を圧縮していたフェースが力を解放し、一瞬ではあるが砂嵐と濃霧を吹き飛ばした。彼の持つ流星石【瞬散滑板】の別の使用用途であり、普段乗り物として使えるその力の発射方向を逆噴射させたのだ。それによって火力が暴走するも周囲に瞬間的な力を拡散し、今の様に攻撃を一時的に無力化したのだ。
無論暴走させる事によるデメリットも存在し、彼の腕を軽く負傷させるだけの破壊力を持っていた。
「ッ……」
「フェース、無茶は駄目なのだ!! ハニーが泣くのだ!」
力を暴走させてまで味方を庇った彼を見て、ギラルドは慌てて彼の手を見た。先ほどまで無傷に等しかった彼の手には傷が幾多も入り込んでおり、軽く触れただけで出血が出てもおかしくない状態だった。それを心配そうに見る彼を見て「平気だ」と彼は言うと、痛む腕を無視し敵を見ていた。
「制裁に誓願……… 流星石に、意味なんてあるのか。」
周囲が再び視界を削ぐ光景にならない事を警戒しつつ、ドリフトは先ほど彼等が言っていた流星石の意味を気にしていた。元々彼等の元に存在する流星石は強力な分類にまで底上げする事は可能であっても、それ以上の強化手段は無く管理課の持つ力には到底及ばない物ばかりだった。
ましてや周囲に流れ落ちる星々に意味などあるとは、考えもしなかったのだ。
「残念だけどございましてよ。私達の力が【防衛】ならば、残りの二つは【追撃】の流星石。プリンセスの元に仕える私達に託された、祈りと平和の力。」
「お前等なんかに乙女の未来は託さない。俺達が邪魔を削ぎ落とし、悪夢を追い払う。邪魔な奴等は、この場にいらない!」
質問に対しメイリーは答え、自身とアスピセスが持つ力は護るための力だと宣言した。そして残りの二つであるネコとクラウの力は攻めるための力であり、相互の力を大切な存在のために使っていると言った。彼等には彼等の考えがある事は解っていたが、やはりドリフト達にはその力の使い道は間違っていると思っていた。
誰かを護るために誰かを犠牲にする、自由を奪う事なんて。絶対に、会ってはならないと思っていた。
「戯言は言うな! 間違ってる自覚がねぇんだったら、自覚させるまでだ!! 皆!」
「おうっ! やってやらぁあ!!」
そんな彼等の話を聞いてもドリフト達は決して攻撃を休める事、その場を去る事を選ばなかった。再び流星石を持って果敢に挑みだし、何度も何度も攻撃し、そのたびに説得を試みるのだった。
正真正銘の敵ではないと、心のどこかで感じているかのように………
一方その頃………
「ニャーン、おミャーの負け~!」
「なぁっ!!」
管理課の塔の中での戦いを行う、もといゲーム勝負をしていたアルダート達。最初の挑戦者となったハンメルが挑んだトランプゲームは、苦戦を強いられる結果となっていた。
残った一枚のカードには、舌を出し挑発をするネコの絵が描かれたトランプ。
「マッシリ~ン、ぼっしゅーとー!」
ガシッ!!
「クッ!!」
「ハンメル!!」
ゲームに負けネコが一声叫ぶと、横に待機していた機械兵の手が彼の身体を掴んだ。そしてそのまま機械兵の待機する場所の足もとに運ばれてしまい、囚われの身となってしまった。
その行動を見て慌てたカツキはトライムの元へと行こうとするも、再びネコに制止され戻るよう促されてしまう。そう、この場で逆らえば瞬時に機械兵の餌食となってしまう。
「さ~ お次は誰かニャ~」
「なら、俺が相手だ!!」
ネコの独占場を見たシップスは打破すべく名乗りを上げ、待機場から身を乗り出しネコの元へと向かって行った。彼の行動を見たネコは軽く乱舞し、使用していたテーブルに座るよう指示した。
「……さぁ、何で勝負するんだ。」
「ニャー おミャーには、これニャッ!!」
彼が椅子に座ったのを見ると、ネコはそう言い何処からともなく将棋セットを取り出した。先ほどまで使用していたテーブルクロスも同時に取り出すと共に取り替えてしまい、一気に和風な雰囲気が漂い出した。
「だからどっから出してんだよ!!?」
「十三次元ポケットニャ~」
「四次元だろ! それ絶対!!」
「外野は黙るのニャ。」
「もうなんでも良いって………」
乱れに乱れる雰囲気に押され、シップスは周りとネコの意見に呆れつつゲームをするよう言うのだった。
しかし、結果は中々報われない。何故そうなったのか、理由はただ一つ。
「イカサマ使っていいなんて聞いてねぇよ!! ……ってか、それでゲームとか反則だろ反則!!」
そう、簡単な結果を仕組まれていたからだったのだ。トランプはジョーカーとすり替えられ、将棋は気付いた時には全ての駒が金へと変わっていたのだ。
その後も続く他のゲームでも、悉く素晴らしいテクニックでネコの圧勝が続いていた。
「今頃言うニャ、気づかないのが悪いのニャ。」
「なんて野郎だ! 正真正銘の悪だコイツ!!」
結果残り一人となってしまったアルダート達に残されている物は少なく、囚われてしまったクロは再び抗議の声を上げた。何度も何度も上げるも結果無意味だと言うのは、どうやら解らないらしい。
「ほれほれ、あんまり言うと機械兵から涎が出ちゃうのニャー ディナーはもうちょっとだから、我慢なのニャよ? まっしりーん。」
《グルルルゥ………》
すでにほぼ全員が機械兵の手の内にあり、爪が伸びさえしてしまえば誰か一人の首はそれだけで飛んで行ってしまう状態だ。再び大人しくなる彼女を見て、ネコは最後の挑戦者として残された相手を呼んだ。
その相手が、
「………俺、か。」
「ストレンジャー! 頑張れー!!!」
全てを託された、見知らぬ龍『ストレンジャー』であった。彼の勝負の結果によっては、自分を含め皆の命が消える事となる。とても重い勝負となりそうだ。
指名される事無く呼ばれた彼は、静かに移動しネコの前へと向かって行った。すでにテーブルは撤去されており、後半は飽きたのか単純に道具を使わないゲームを行っていた。
「じゃ、ラストは簡単に一発勝負ニャ。じゃんけんで勝負ニャ。」
「……分かった。」
そして最後のゲーム、それは一発勝負の『じゃんけん』 後出しは事前に無しと言う事は抗議の結果なっており、もう何をしてもネコは否定せず反則の場合はやり直すだろう。特にその辺は気にしていないストレンジャーは静かに右手を出し、何を出そうか考えていた。
すると、
カチャンッ………
【?】
突如周囲に錠をかけるかの様な金属音が響き渡り、彼は周囲を見渡した。すると視界は色を失ったかのようにモノトーンの世界と化しており、自分だけその中で動いているかのような感覚に陥っていた。
事実それを証明するのは、先ほどまで動いていたアルダート達の動きが、
【動きが……止まってる………!?】
表情をそのままに、完全に時間が止まっているかのように固まってしまっていたのだった。




