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英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
本編・アルダートシナリオ 対プリンセス編
71/155

全てを変えたあの場所で 1

それからしばらく時間が過ぎ、晩餐会が終わり皆が床に就いた頃。ストレンジャーはアルダートが落ち着くまで、ずっと同じ体制で彼の事を抱えていた。彼が流す涙を無くすまで、自分が言ってしまった事実に対しての優しさがなかった事に対して。全ての責任を取るまではと、彼はずっとそのままでいた。


それからアルダートが落ち着いたのは、晩餐会の賑やか差が無くなってしばらくした頃。泣き疲れてしまった様子でストレンジャーにもたれ、彼は目元を赤くしたまま寝息を立てていた。一方ストレンジャーはと言うと、そんな彼が膝枕をしたまま寝てしまった事もあり、その体制で仮眠を取っていた。

無論万全な睡眠体制ではないため何か支障が出てしまうかもしれないと思うも、何も取らないよりかは良いだろうと彼は考えていた。上着を出会い当初の時同様アルダートにかけているため、今の彼は何も羽織っていない。

時間が経っていくと、彼等を悲しみで包み込んだ夜が明け、朝日が彼等の事を出迎えだしたのだった………




「……皆、準備は良いか。」

朝日が昇りしばらく経った後、彼等は仮住まいには居なかった。皆は管理課の塔の見える崖の近くへと移動しており、数歩歩けば崖の中へと落ちてしまう場所にまで近づいていた。

崖の下から吹いてくる風を感じながら、ストレンジャーは後方に居た皆に声をかけた。

「あぁ、この日を心待ちにしていたのは事実だからなっ 何時でも行けるぜ!」

「私達がここまで来たのなら、街を変えて戻ってきましょう。管理課の人達には、もう好きにはさせないわ!」

「おうよっ! ……待ってろよー! 大悪党共!!」

その声に反応して、アシュレー達が一言ずつ意気込みを述べた。皆はこの日が来るのを待っていた、街に住む存在達も待っていた。その期待を背負っている事もあってか、あまり良くは眠れていない様子ではあるが気合だけは十分だと言わんばかりの発言をしていた。

とはいえ、寝不足ではないのも事実の為、皆元気いっぱいである。

「……ストレンジャーさん。僕がずっと泣いていたから、良く眠れなかったんじゃないですか………?」

そんな皆が再び個々で喋り出すと、アルダートは静かにストレンジャーに問いかけた。彼もまた泣き疲れてしまった1人ではあるが、今日行動する分の体力はある様子で彼の事を心配していた。

素振りや表情では疲れを見せない彼の事を、本当に心配しているのが良く分かる言動であった。

「大丈夫だ。……俺の方こそ、すまなかったな。約束したのにも関わらず、俺は初めて会った時と同じように君を泣かせてしまった。」

「僕の方こそ……! ……貴方の事を、苦しめてしまいました……… ………」

「……もう気にしなくて良い。今は目の前の討つべき相手の事を、第一に考えよう。クラウの安否は、その後また確かめればいい。死んだとは、渡してきたアイツも言っていなかったからな。」

「!! ……はいっ!!」

心配そうに問いかけてくる彼に返答をすると、ストレンジャーは再度彼に詫びる言葉を告げた。例え真実を告げなければならない場に立たされても、自分は考える事をせず相手に真実を告げてしまった。言い方を考え直せばもっと良い伝え方があった、柔らかく伝え相手を傷つける様な事も言わなかったかもしれない。彼はその事だけを後悔しており、彼の事を励ましていた。

少しだけ気分を紛らわせてあげようと思ったのか、ストレンジャーは彼の安否は終わってから確かめに行こうと言った。例え負けてしまったと言っても、自分達が勝った時の様に負けたのかもしれない。だからこそ死んだのではなく、何処かで生きているのかもしれないと希望を持ったのだ。その言葉を聞いて、アルダートは頑張って元気を出そうと力強く返事を返した。

淡い期待かもしれないけれど、自分は寂しい顔をしたくない。彼の期待に応え、彼の事を苦しめないようにしたい。互いにそう思った様子で、再びいつもの表情を取り戻して行った。

「行こう、皆……… ……街を、元に戻すんだ。」

「おうっ!!」

アルダートが元気になったのを見ると、ストレンジャーは再び皆に一言告げた。すると後方に居た皆が一斉に返事を返し、その声を聞いて彼は持っていた流星石の力をその場で開放した。栓を抜き瓶をほおると、流星石は馬車へと姿を変え彼等が乗れるだけの形へと変化した。

馬と思われる動物達は元気な様子で軽く鳴いており、乗り込んだ存在達の声を聞いて出発し出した。


そんな彼等の様子を見て、管理課の塔の中では動きを見せていた。




「ニャッニャーン。奴らがこの塔を目指してやって来たのニャ。何処で手に入れたのかも解らない力を使ってニャ。」

塔の最上階付近に存在する大広間では『茶色の猫』であるネコSが何かを見つけた様子で報告に駆け込んできた。しかし何処となく焦りが無い彼は真実を知っているのか、動揺せずその場に居た存在達に報告していた。

「あら、またけったいな輩がこの塔へと足を踏み入れようとしているの? 何度も何度も………いい加減にしてもらいたいものだわ。」

その報告に対し返答をしたのは『真紅の妖精』メイリーであり、あまり機嫌が宜しくない様子で意見をしていた。彼女にとって乗り込もうとする存在達は後を絶たず、そのたびに赴き二度と起きないためにもと全力で制裁をしていた。

そのたびに塔の大地は汚れに満ち溢れ、その処理もしなければならないのだ。

「でもニャー 行動をしたがるのも存在なのニャ。ろくでなしが多い世でも、こうやって力を付けてくる輩も多いのニャ。」

「そのたびに私達が穢れに触れて、塔の大地が汚れるなんて御免だわ。今回も早々に片づけて、牢に放り込んで奴隷や苗に代えさせてあげる。」

「ニャ~ その辺はご自由にどうぞぉっ」

彼女の機嫌を知りつつもネコは返事を返し、彼女が行動する様を見届けていた。空を飛んでいた彼女は流星石を手にし、もう片方の手には使い慣れているステッキを持っていた。その後塔の麓へ行くための扉へと向かい、行動しようとした。

しかし、

「………」

「アスピセス、何をしているの! 貴方も私と一緒に、彼等を排除するのよ。」

大広間の隅に座っていたアスピセスに彼女は声をかけ、行動を共にするよう命じた。しかし彼はすぐに行動を起こす気にはならない様子で、普段の笑顔は無くとても暗い表情を見せていた。

「……俺、今回パス。」

「何を言っているのかしら、こんな時に。貴方は管理課の長なのよ、私達の大切なプリンセスを護る行為を行わないと言うのかしら。」

「………」

再び苛立つ彼女をしり目に、アスピセスは行く気力が無い様子で返事を返した。だがそれで納得する彼女でもなく、彼の元へと向かい軽くステッキの先端で彼の頭を小突いた。

「貴方もあの穢れた獣の様に、目の前で裁かれて朽ちたいのかしら? お望みとあらば、私の苗にしてあげてもよろしくてよ。」

「それは御免だな。……第一、俺様にだって気乗りしない時がある。行きたいなら一人で行けば良いだろ。」

とはいえ気乗りしないのも事実な様子で、アスピセスはステッキの先端を退かしながら立ち上がった。元々仲が良い二人ではない事もあり、意見が衝突する事は珍しくは無い。

二人のやり取りをネコは見るも口を挟まず、どんな結末になるのだろうかと見守っていた。

「何を言っているのかしら、こんな時に!! ……そう、ならその行動を行わない事をプリンセスの目の前で告げて来ればよろしいんじゃなくって?」

「……… 乙女………」

怒りを通り越して呆れたのか、メイリーは彼にそう告げその場にいたもう一人の存在に宣言してくればいいと言った。その言葉を聞いた彼は一瞬身構えるも、静かにその存在の居る場所を向き歩き出した。

大広間へと入るための扉の奥には大きな吹き抜けのテラスがあり、その近くには彼等の護るプリンセスが衣服を風になびかせながら立っていた。決して上を向かず俯いている姫の元へとアスピセスは移動し、静かに横へと移動し視界に入るよう配慮した。

すると、それに気づいた様子で姫は彼の事を見た。

「乙女……… ……すまない、今の俺には……貴方を護るだけの事が出来るとは、思えないんだ……… 貴方の事は大切だけれど、どうしてか………自信が持てない。」

「………」

相手の目が自分に向かれた事を確認すると、アスピセスは思っている事を相手に告げだした。自分の意欲が落ち行動する気になれない事、大切だと思っているのにも関わらず動き出す事が出来ない事。意識の低さを暴露するかのように話しだし、彼はそのまま話を告げた。

「俺は所詮何も出来ないし、貴方の事を笑顔にさせる行動すら………アイツに負けていた。……もっと力があれば、貴方の事を護る事も助ける事も出来たはずなのに……… 俺は………」

「アスピセス………さん。」

自虐する彼の様子を見て、姫はそっと彼の頬に手を置いた。そして優しく彼の頬を撫でながら上へと移動し、静かに頭へと置き撫でた。その手の優しさを感じて、アスピセスは伏せがちだった顔をゆっくりと上げた。

「………無理、しないで…… 私は、貴方達に無理をさせている側………辛いのであれば、無理をして欲しくない。……優しい笑顔を、見せて欲しいな………」

「乙女……… ……俺。」

「優しい貴方でいて……? ……私は貴方が、一緒に居てくれる存在だと信じてるから……… ……お願い。」

姫から告げられる言葉を聞いて、彼は言葉に迷いつつも静かに相手からの言葉を聞いていた。その言葉はどれも相手を励ます物であり、自分のために無理をさせている相手にこれ以上そうはして欲しくない。一緒に居てくれる相手なのであれば、もっと力を抜いてほしいとお願いしていたのだ。

そんな姫からの言葉を聞いて、アスピセスは静かに手を取り握り返した。彼の行動に一瞬驚く姫であったが、それでも彼が気持ちを落ち着けたのだと思い好きにさせていた。

「乙女……… 俺は無理なんかしていない、俺の気持ちが揺らいでいただけだ…… 安心してくれ、俺様は必ず………貴方の味方で居続ける。約束する。」

「………」



「行くぞメイリー! 奴等を落とすんだ!!」

「えぇ、望むところだわ!」


そして気合を入れた意気込みを叫ぶと、彼等は共に外へと向かって出て行った。広間に残された姫とネコは静かに彼等を見送り、ネコは姫の元へと移動した。

「……貴方はどうするの、ネコ。」

「ニャーは常に道化師なのニャ。プリンセスには辛いかもしれないが、ニャーも対抗するべき策は常にとるのニャ。ニャーが負けた時は、プリンセスの好きにすればいいのニャ。」

「………うん。」

その後軽いやり取りを交わした後、ネコは持っていた流星石の栓を抜き投げ放った。地面に触れた瓶は煙と共に姿を変え、巨大な機械兵へと姿を変えた。軽く唸りながら主人を見つめる機械兵を見た後、ネコは手に乗り姫を見た。

「待っていろニャ。必ずニャーが、プリンセスの苦しみを取り除いてあげるのニャよ。」

「………行ってらっしゃい、ネコ……」


バシュンッ!


手に乗ったネコの言葉を聞き返事を返すと、機械兵は自ら動きだし広間の窓から外へと飛び出した。巨大な身体をもろともせず俊敏に動いた機械兵は、そのまま背中と両足に着いたブースターを点火させ、目的の場所へと向かっていた。

ネコは相変わらず手の上に平然と立っており、機械兵もそんなネコを手の上に載せていた。

『………そう、君はそのまま待っていた方が良いのニャ。無理をして相手に行動を起こしても、すれ違いに起こった絶望に身を浸す事も無いのニャ。……ニャーがちゃんと、取り除いてあげるのニャ。』

そのままネコは目的の塔の階へと到着すると、中へと入り待機するのであった。その後の行動次第では、最終の結末を描くかのように。ただ一人、道化師となるのだった。


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