全てを変えたあの場所で 2
クラウに託された流星石『幻想車』に導かれて、彼等は崖の上の虚無の空間を渡っていた。煌めく馬達は足場のない場所に、まるで地面があるかのように駆けており、彼等を管理課の塔へと導いていた。これこそが管理課しか持たない流星石であり、街に存在するどんな流星石よりも強いとされた力であった。
その内の一つが幻想車であり、四つの内の一つの『追撃』の流星石でもあった。
ガタガタッ………!
「っとっ! 到着!!」
幻想車に運ばれ塔の中へと潜入すると、彼等は塔の麓である地面の上へと降り立った。そこは先ほどまで居た街の雰囲気を感じさせない立派な作りをした大地が広がっており、目の前には塔の入口と思われる階段も見えていた。
そしてその前には、二つの影があった。
「フフフッ、お待ちしてましたわ。改革を求め、塔の中へと踏み入れし存在達。」
「悪いがこの先に行かせるわけには行かないんでな。ココで俺様達に敗北して、自由の権限を剥奪してやるよ。」
やって来たアルダート達を見た影は口々に言い、数歩前に出たと同時に光を浴びた。そこに立っていたのはメイリーとアスピセスであり、管理課直々の挨拶を彼等に告げた。
「メイリー……… やっぱり、貴方達が待っていたのね。」
彼等の出迎えを受けたベルミリオンは数歩前に出ると、予想していた様子で相手の名前を呼んだ。彼女とは因縁の関係の様子で言葉を口にしており、戦う事は解っていても対峙する事は望んでいなかった様子。
本気にさせたら大変な相手、と見ているのだろう。
「当たり前でしてよ、私達の管理する塔ですもの。もっとも、貴女達の後方に居る存在は………ちょっと予想外ではあるのだけれども。」
「あぁ、本当だなぁ。お前等も、この戦いに参戦する者達ってことで、良いんだよな。今ならまだ引き返す事は出来るぜー せっかくだし、顔だけ覚えて見逃してやるよ。」
相手からの発言に返答をすると、アスピセスはスティックを構えつつ後方に立っていたカツキ達に引き返すなら今だと言った。元々戦う事になる相手だったとしても、彼等は彼等の考えがあり敵は少ない方が良い。負けたら自由を失う事もあるため、逃げて欲しいという考えの裏返しの発言だった。
「そんなのはゴメンだ!! 俺達は、この街を変えるためにやって来た!! 今更振り返る事なんて………! 出来るわけねぇんだよ!!」
「そうです! 僕達は、街を変えるためにココへ来たんです! ……クラウさんのためにも、僕はもう振り返る事なんでしません!」
アスピセスからの発言を聞き、シップスとアルダートは口々に考えを告げた。それを聞いたカツキ達も自分の考えを個々に口にしだし、同時に言うも対峙する2人の耳に届く声量で発言した。
その後、静かにストレンジャーは前にでて彼等に言った。
「………俺達は、確かにお前等からしたら邪魔な存在でしかないだろう。でも、この行動を行う上での考えを持ってここへやって来た。負ける事を恐れて逃げる事は、きっとしない。……道を開けて欲しい。俺は、誰かを傷つける事を望んでここへちゃって来たわけじゃない。………クラウ達の気にしていた、プリンセスに話をするために来た!」
「それがどれだけ愚かな事なのか、貴方は理解してその場にいらっしゃるのかしら? プリンセスへ直に謁見だなんて、不作法にもほどがあるわ。」
「無論、俺がそれだけの存在だとは思っていない……… ……それでも、俺はその人と話をしなければならないと思っている。託された願いを、俺は叶えたい。」
彼の考えを聞いたメイリーは眉を顰めながら彼に言うと、ストレンジャーは理解してその発言に至った経緯を話した。この場に来るまでに戦いを繰り広げ、それでもなお叶えたい願いを持ってやって来た事。誰かと対立する事を恐れる事はせず、必ず話を交えてその戦いを終えたい。彼はそう考えている事を話した後、ココまで運んできてくれた幻想車を瓶の姿へと戻し静かに彼等の前へとやって来た。
そして、その瓶を静かに差し出した。
「……コレは、元々君達の所にあるべき物なのだろう。俺は確かに託されたが、俺はどの人にこれを渡せばいいか解らない。……教えてくれないか、その相手を。」
「その模様……… やっぱり、貴方達は【幻想車】を使ってここへ来たのね。あの汚れた獣に託された力を使ってくるなんて、中々やるじゃない? ……良いわ、その努力に免じて誰に渡せばいいか教えてあげる。もっとも、教えた相手に貴方達が辿りつける保障なんて、ありはしないのだけれどね?」
彼の発言を聞いたメイリーは不気味な笑みを浮かべつつそう言うと、静かに手にしていたステッキと流星石を構えた。それを見たカツキ達は同様に自身の持つ流星石を手にし、相手の動きを見て攻防しようとしていた。相手の動きに対しストレンジャーは特に何も言わず、渡すべき相手がこの場に居ない事を感じた様子で瓶を上着の中へとしまった。
そして、彼女はこう告げた。
「お相手は、私達の長であるプリンセスただ一人。……でも、その瓶をあの方に渡す事は私は望まないわ。彼はもう破門して、ココに存在してはいけない相手。この場に持ち込む事は、私は許さないわ。今すぐ壊しなさい、その力を。」
「………悪いが、それは出来ない。託された相手の為にも、そのプリンセスのためにも。……俺はこの力を、その人の元に届ける。」
互いの意見と条件を提示するも、両者は一歩も譲ろうとはせず交渉は破談となった。敵であるがゆえに話し合う時間は長くは無く、それでいてなお行動を迫られているこの空間では、その話すらも無駄だったのかもしれない。
彼女はそう悟ると、静かに後方へと引きアスピセスの隣に並んだ。
「そう。……それじゃあ、交渉は決裂って事で良いのよね、貴方。………せっかくだから、名前くらい聞いておいてあげる。名乗りなさい。」
その後彼の名前を覚えておこうと思った様子で、名前を名乗るよう命じた。すると彼は彼女同様静かに数歩下がり、静かに息を吐いた後にこう言った。
「名乗るべき名は持ち合わせていない。……だが、仮の名前はあるからそれを言おう。俺の名前は『ストレンジャー』 この街に知っている人は居ない、見知らぬ存在だ。」
「ストレンジャー………ね。フフッ、中々楽しいお名前です事。……それじゃあ、消えてもらうわ!!」
その後名前を聞いたと同時に彼女は微笑み、持っていた流星石の栓を引き抜き瓶を宙へと放った。同時にアスピセスも栓を引き抜いた流星石を足元に置き、彼等はこの世界に一つしか存在しない強力な力を展開した。
宙へと投げられた瓶からは濃い濃霧が発生し、周囲の視界を徐々に奪って行く。大地に置かれた瓶からは強い風と共に流砂が舞い、濃霧と共に相手の視界を奪いだしたのだ。相手が動いた瞬間を見て、一人がその行動を見て叫んだ。
「作戦通りだ………! 皆、行け!!」
「おう!!」
シュンッ!
「っ!」
「何ですって!?」
作戦を事前に立てていた様子で、ドリフトの発言を聞いた一部の存在達は一斉に返事をし彼等の横を走り抜けて行った。不意な事に驚き動きを封じようとするも、アスピセス達の元に飛んできた気配を感じ二人はその場から跳び出し攻撃を避けた。無論それも彼等の攻撃の手を避けるための囮であり、作戦が成功しアルダートを含む一部の存在達は塔の中へと踏み入り装置を使って上へと登って行ってしまった。
まんまと作戦に乗せられたことを知り、一度周囲に展開した力を弱めつつ二人は再び大地に降り立った。するとそこに残っていたのは『ドリフト、アシュレー、ライト、フェース、ギラルド、トライム、スターライト』達七人だけだった。先ほどまで大勢居た場所に半数以下の存在達しか居ない事を目にし、彼等は驚いた。
攻撃の気配元はギラルドであり、彼の手元には狙撃銃が握られていた。
「あら、作戦って言うからどんな戦力が残っているのかと思ったのだけれど……… 驚いたわ、半端な存在達ばかりじゃない。」
「ましてや互いが信頼している創造主達を行かせるって言う事は…… お前等、本気で乙女の元に誰か辿りつかせるつもりだって言うのか。」
驚きに対し彼等は平然を装いつつ告げ、視界を一度塔に向けた後正面を向いた。すでに発動された流星石の力によって濃霧が濃くなる中、ドリフト達は個々で持つ力をそれぞれが戦力となる形に変えていた。
「まぁな。俺達よりもアイツ等が、そして………」
「ストレンジャーが、この先を変えてくれると……! 我等は信じてるのだ! ……お前等の相手はハニーでは無く、我がするのだ!!」
「お前等なんかに屈しない! 覚悟しろ!!」
「フフッ、良いわ。せいぜい足掻いて頂戴ね、改革者の内の雑魚達!!」
「お前等に未来栄光の、奴隷となる権限をくれてやらぁああ!!!」
そして互いの考えと曲がらない考えを述べた後、全員が大地を蹴り、戦いに身を投じて行った。それぞれが抱く、願いを護るために。




