気遣いの授受 3
事情を知る二人の話が終わり、個々で出かけていた皆が戻ってきた後。
ストレンジャーは何事もないかの様に彼等の指揮をとり続け、アルダートはそんな彼の指示を支えるかのように皆の行動を見守っていた。幸いにも出かけた班全員が流星石を最低1つ持ち帰ってこれると言う成果を果たし、食料調達班も持ちきれないほどの食料を持って帰ってくる者もいる程だった。何処にそれだけの食料があったのかと問いかけもあったが、単に設置されていたモデルハウスの中にあったとの回答が返ってくるほどであった。
ストレンジャーの考えたプラン通り、彼等はなるべく慣れたコンビを組み行動を続けていた。ローテーションで行動そのものは変わるものの、自らが任された行動を全うしようと皆はその声に答えていた。人目に付かない所でサボる者もしばしば居たが、それもまた一人一人の行動に気楽さが見えているのだとストレンジャーは判断し左程指摘する事も無かった。
皆が皆を大切にし、誰かのためになれる様行動する。それこそが、大事だと思わせる習慣が二日間続いていた。
「……ぁっ、ありましたよ。流星石。」
外部での流星石調達に出かけていたストレンジャー達。突入を明日に控えた彼等は、補充するための流星石の確保を終え別の作戦で必要な流星石を集めていた。とはいえ元々の流星石に『空を飛ぶ』ための力がある事はアルダートも聞いたことが無いため、中々の苦労を予感させる展開となっていた。
「おぉ、やっぱ目が良いなー アルダート。」
彼等と行動を共にしていたミークはアルダートの持ち帰って来た流星石を見つつ、賞賛の声を上げていた。塔からの散布がここ数日間ない事もあり落ちている期待値が低かったのにも関わらず、アルダートは出かけだした短時間ですでに3個ほど見つけていた。その上どれも同行していた皆が見つける前に彼が見つけ、軽く駆け寄りながら流星石を壊れ物を扱うかのように丁寧に手にしていた。
「僕、これくらいしか皆さんのお役に立てないので。でも良かったです、思った以上に流星石が回収できて。」
「そうですね。……この様子なら、私達の流星石も液体切れの心配をしなくて良いかも。」
彼の持ってきた流星石を見て、ベルミリオンは笑顔を見せながら彼に言った。今居る集団はアルダート以外が消耗する流星石の持ち主であり、原液を補充しなければ戦う手段そのものが危うくなる者達。
すでに二日間の収集期間を終え調達した流星石は、集団内で分け合い各自で補充しておくよう命じられていた。
「本当ねー 確か、出発するのが明日だったわよね? ストレンジャー」
「あぁ…… ……明日の夜明けと共に、食事を追えたら出発するつもりだ。」
「いよいよ明日かー はえーなー」
確保した流星石を彼がポケットに入れると、ペルティは不意に出発日の事を気にし出した。なんだかんだでこの地区に居座って数日間が経っており、時々敵襲があるものの怪我をする者もおらず安全が保たれる状況が続いていた。とはいえ力の消耗もあってか、やはり早めに事を済ませたいようだ。
彼女の考えを悟るかのようにストレンジャーは答え、朝食を済ませ皆で移動し塔へと行く事を伝えた。現状ではアルダートと考えた流星石は完成に至っておらず、今日収集した流星石で何とかしようと考えていた。事前に配る前の流星石から良さそうな物もアルダートが餞別し、住処の方には置かれている。
だが、中々未知の流星石を創り上げる所までは至っていない。
「……でも、早く街が元に戻ると良いわね。私もそうだけど、カツキさん達も元の生活に戻りたいみたい。」
「シップス達もそうよ。結局学生で居る事を止めちゃったけど、それでも何かしたいって軽く足掻いてたし。そのための切欠に過ぎないんじゃないかしら、この行動って。」
「ぁー それは言えるかもな。……つっても、こっちで一緒に行動していたアイツ等も同じことを考えてるのかって言われると、俺は保障できないけどさ。いいじゃん、気楽って。」
軽く話し込みながらも散策を続け、不意にベルミリオンはこの後の事を話しだした。すでに改革を目の前まで捉える事の出来るようになった彼等にとって、その後の事も重要な決断だ。元の生活に戻りたいと願う者も居れば、新しい行動をしたいと思う者も居る。無論どちらでもないと言う相手も居るため、その後の事はやはり個々で決めるしかない。だが、
皆平和が良いと思っている。
それだけは、変わりようのない事実であった。
「僕も早く皆さんと一緒に過ごせる日が戻って来てくれると嬉しいです。僕が居た地区はもう変わり出してるので、終わって帰った頃にはたくさんの変化があると思います。」
「ぉ、そいつは楽しみだな! また一緒に住むか!」
「賛成ー」
すでに一足先の地区変化を起こしているのがアルダートの居た場所であり、彼等が帰る頃には姿も形も変わっているであろうと言った。その際昔の様に一緒に過ごそうと言う案にミークは即答し、ペルティとベルミリオンも嬉しそうに賛同していた。
そんな話を聞きながら、ストレンジャーは少し笑みを浮かべつつ辺りを見ていた。
「ストレンジャーさんも………良ければ一緒に住みませんか?」
「ぇ……?」
軽く話を聞いていると、不意にアルダートは彼に提案を上げた。不意な事だったためか彼は小さく驚き声を上げると、目線をアルダートに戻し何故そんな事を言いだしたのかと気にしていた。
「……何故、俺に住んでほしいと思うんだ。アルダート。」
「ぁ、いえ。僕はただ……これからも、ストレンジャーさんと一緒に居たいなって思ったからです。この街には優しい人達はたくさんいましたが、僕の事を支えてくれる人はとても少なくて。……ここまで一緒に来てくれたストレンジャーさんと、これからも一緒に居たいんです。僕、寂しがり屋なので。」
「………」
質問に対しアルダートはそう答えると、答えながらも言い出した内容に軽く照れていた。自分から何かをお願いする事はためらう時もあったが、どうも彼に対してはあまり躊躇する気持ちはなくなった様だ。
それだけの信頼が生まれた、そう見るのが妥当だろう。
「ぁ、でも…… ストレンジャーさんにも、探す人が居たんですよね。ごめんなさい。」
しかし不意にアルダートの中で彼がここに居る目的を思いだし、改めて自分から言い出した事を取り消そうと思った。探すための時間を裂かなければならない相手をわざわざ引き止めると言うのは、身勝手な事であり相手を束縛してしまう。この街ではすでに浸透した事ではあるが、大切な相手だからこそそうはしたくないとアルダートは思った様だ。
「……いや、君の提案は俺の願いには支障はない。詫びる事も無い。」
「え?」
「一緒に住みながら、俺は一人でその行動をしても良いと思う。……この街の事を見てきたが、感覚的にココに居ると見ても間違いはなさそうだ。長い年月がかかるのなら、俺は君と一緒に住もう。……むしろ、迷惑を言うのは俺の方だ。」
そんな彼の考えを悟ったのか、ストレンジャーは彼にそう言いつつ軽く頭を撫でた。意外な返答に驚くアルダートであったが、彼の考えを聞くうちに自分の考えている事と彼の考えている事は違う事を目の当たりにした。束縛していると思った事は違う感覚でとらえられ、なおかつプラスとして住処を提供してもらえると彼は認識した様だ。その上誰かと一緒に過ごすのであれば、かえって申し訳ないのは自分の方だと言い出す程だった。
彼の考えを聞き、アルダートは嬉しそうにストレンジャーの腕にくっついた。
「?」
「僕、嬉しいです! ストレンジャーさんとこれからも一緒に居られるのなら、僕もう寂しくないです!」
「……そっか。俺も、そういう相手に慣れたって事なんだろうな……… ……あの人に会えたら、喜んでもらえると良いな。」
不意な事に驚く彼であったが、純粋に嬉しい気持ちはあった様子で再び笑みを浮かべていた。そんな二人を見てか、ミーク達も釣られて笑みを浮かべた。
そんな時だった。
『………』
「?」
不意にストレンジャーは表情を戻し、何かを感じたかのように辺りを見渡した。すると、近くに立っていた家影から影が静かに消え、誰かが見ていた事を彼は悟った。
「……どうかしましたか? ストレンジャーさん。」
突然の行動にアルダートは驚き、彼の見ていた方角を彼等は見た。しかしそこにはすでに影の姿は無く、ただの家影となっていた。
「あの家が、どうかしたのか?」
「……いや、なんでもない。気のせいだったみたいだ。」
「?」
何が居たのかと問いかけてくるミークに対し、ストレンジャーは気のせいだと告げ心配させないようにと気遣った。不思議そうに見てくる4人を見て、ストレンジャーは先へ進もうと言いだし彼等を先導しその場を後にして行った。




