彼が目指した光 3
戦いの火蓋が切って落とされ、シップス達の真夜中の戦いが始まった。月が視えない程に黒い雲で覆われた地区を照らす、明るくも激しい豪炎の熱気。相手は巨大な豪炎を纏った怪物であったが、彼等はひるむ様子を見せることなく、果敢に立ち向かって行った。
「行くぜっ!!」
後方に居たソニルス達の体制が整うと同時に、前に立っていたアシュレーは剣を構え、怪物に向かって特攻を仕掛けだした。しっかりと剣を固定する様に右手を左手で支え、走り込みながらも何時でも攻撃が仕掛けられる体制に入っていた。それを見た怪物は地響きを起こすほどの咆哮を上げ、炎を纏った右手を大きく振り上げ、彼諸共地面を殴る様に攻撃を繰り出した。
怪物の動きを視たアシュレーは避ける様に屈んだのち、すぐさま膝を伸ばして高く跳躍し、殴った反動で素早く動けない怪物の右手に狙いを定め、攻撃を行った。
「はぁあっ!!」
炎を纏った拳に剣刃の軌道が走り込み、まるで皮膚を切り裂くかのように、感触がない一線の切れ目が相手の手に生じた。しかし相手の炎の質量が大きいためか、すぐに切れ目が炎で修復され、引き戻された拳の攻撃が、再び彼に襲い掛かろうとしていた。
それを見た彼は地面に着地しながら相手を見据え、こう叫んだ。
「チッ、固形じゃねえから切れねえか。 シップス!」
「あぁ! まっかせなっ!!」
迫り来る攻撃を見たアシュレーは、冷静に左後方へと跳び退きつつ、後方で待機していたシップスに行動を促す様に叫んだ。彼の声を聞いたシップスはそれに対する返事をし、構えていた武器を幾多も生成し、銃剣を構え相手に向けて幾多も投げ放った。
放物線を描きながら銃は怪物目掛けて飛んで行き、アシュレーを攻撃しようとした右手に突き刺さり、燃え盛る炎に飲まれるかどうかの場所で、姿を保ちながら刺さっていた。援護とばかりにやってきた攻撃を見た後、アシュレーは再び剣を構えながら走りだし、突き刺さった銃目掛けて剣を振り下ろした。
「うらぁああっ!!」
ガキンッ!!
【グルァアアーーッ!!】
突き刺さった銃と剣が触れた衝撃で、刺さっていた銃はまるで爆弾の如く炸裂する様にはじけ飛び、先ほど以上の切れ目を拳に生じさせたのだ。すると、先ほどよりも再生する速度が遅く、切れ目から遠い部位の炎が徐々に消える様子を伺う事も出来た。
痛覚に通じたのか怪物は悶える様に叫び出し、それを見た2人はアイコンタクトを取った後、再び攻撃を仕掛けようと武器を持ち、隙を伺いだした。
「っしゃあっ! この調子なら行けるぞ!!」
「ヒャァッハーーッ!! ざまぁみろ怪物めぇっ!!」
【!! グルァアアアーッ!!】
「うおっ、ヤベッ!!」
「火炎放射か!!」
だが彼等の喜びも束の間であり、すぐさま怪物からの反撃が開始された。怪物の口から放射された炎は地区を飲みこむように発射され、炎の波と化しながら彼等へと襲い掛かった。大地を走る様に炎の波が接近するのを視た彼等は、慌てて近くの物陰へとそれぞれ避難し、難を逃れたと思われた。
その時だ。
ジジジジッ・・・
「!! アヂヂヂヂッ!! 尻尾尻尾ッ!!」
「ちょっ、何やってんだ馬鹿ッ!! 尻尾くらいの余裕みとけよな!?」
「テメェよりもデケエんだから仕方ねえだろ!? ぁーっ、尾先が焦げたッ・・・! クソッ!!」
壁から出ていたであろうシップスの尻尾の尾先に火がともり、焦げた臭いと共にシップスが悲鳴を上げだしたのだ。彼の声を耳にしたアシュレーは慌てて彼の元へと走り込み、燃え盛ろうとしていた彼の尻尾の炎を摘み、指の圧力で消火を行った。
だが戦場と言う事もあってか、双方ともに考えと余裕をもって行動するべきだと口論しだしてしまう始末。コンビネーションが良いのか悪いのか、何とも悩ましいほどに仲が良いと思われた。
「ニャッニャッニャッ、そのままウェルダンにしてやるのニャッ 怪物よ、やぁーっておしまいっ!」
【グルァアアアーーッ!!】
そんな2人のやり取りを耳にしてか、ネコは再び怪物に指示をだし、炎の波の発生を促した。ネコの声を聞いた怪物は再び咆哮した後、再び地区を飲みこむ様に口から炎を放射し、次々と地区に残る雪達を消失させていった。
「ゲッ、また来るぞ!」
「このままじゃ地区全体が火事になっちまう・・・!」
再びやってくる攻撃の波を見た2人は物陰に隠れつつ、どうやって攻めるかと考え出した。地区を丸ごと燃やし尽くすかの様に放たれる波は熱く、一発でも飲まれてしまえば、ネコの言った通り丸焦げになる姿が彼等の脳裏に過っていた。
簡単に負けてしまうほどの相手の攻撃を放置しておけば、今度は自分達が隠れている建物全てが火事になり消えてしまう事も、時間の問題と言える事態。どうするべきかと考えていた彼等の目の前を、別の影が走り込みこう叫んだ。
「まっかせてー! シップ、アシュレー!」
「! ソニルス!?」
やってくる炎の波をもろともせず、彼等の前を走り抜けたソニルスは、大きな電動のこぎりを両手で持ち、果敢にも立ち向かっていく姿が映った。彼の後方ではライトが狙撃銃を構えており、どうやらシップス同様コンビネーション攻撃を仕掛ける様子を見せていた。
「【電動裁剣】で、切れない物はないっ・・・! うぅーらぁあっ!!」
ブンッ!!
「援護するぞっ、ソニルス!」
振り上げた武器でソニルスが周囲を薙ぎ払うと、仰がれた火炎放射は風で角度を変え、彼を裂ける様に周囲に拡散しだした。後方で待機していたライトが彼の武器目掛けて発砲すると、剣刃に触れた銃弾が拡散し、仰いだ風に乗って炎を飲みこむ巨大な竜巻へと変化したのだ。大火事に成りかけていた炎を次々と風が巻き込みだし、天空へと運び消し去って行った。
幸いにも、上空には湿気と氷の粒を備えた厚い雲があった事もあり、炎の熱と交差し次々と蒸発しだした。それによって隠されていた三日月が姿を現し、彼等を明るくも優しい光で支援する様に輝き出したのだった
危うく飲まれそうになった地区が無事難を逃れると、シップス達は物陰から飛び出し、ソニルス達と合流し怪物を視上げた。
「どうだっ! 参ったかっ!!」
「まだ何もやってにゃいジャマイカ、お主等。まだまだ戦いは続くのニャよっ!」
「どんどんかかって来いやぁあっ!!」
威勢よく彼等はそう叫ぶと、それぞれが手にする武器を構え、怪物への攻撃を再開していった。




