彼が目指した光 1
ようやく彼等の探していた友人の手掛かりを掴み、シップス達は雪の降る真夜中の街を駆けていた。つい先ほどまで温まっていた身体は徐々に冷えだす中、全速力で彼等は道を走り、ペルティから情報を得た『地区を仕切る大扉の前』へと到着していた。
「ハァ・・・ハァ・・・ アシュレー、時間はっ・・・!」
「ゼェ・・・ゼェ・・・ だ、大丈夫だ・・・時間には間に合ってる!」
「ぁー良かったぁ・・・」
とはいえ、いきなり寒い所に出た後の体力の消耗は中々のものだったらしく、彼等は再び息を整えようと両手を膝に付き、息を整えていた。その後落ち着いた様子で深呼吸した後、彼等は周囲を見渡しソニルスの姿を探した。
だが夜明け前の地区内は暗く、街灯の明かりしかないその場は雪の白さで朧気に辺りがぼんやりと認識できる程度でしかない。
「・・・おかしいなぁ。ペルティの話じゃ、ソニルスが居るはずだったんだけど・・・」
「まぁ、言ってたのは『夜明け前にココに着く事』だけだしな。とりあえず、相手が現れるまで待つしかないだろ。」
「シップスの言う通りだ。ライト、念のため流星石を持っとけよ。怪物が何処から来るかも解らないからな。」
「う、うんっ・・・」
周囲の警戒をしつつも彼等はそれぞれが調合した流星石を取り出し、栓に手を触れた状態で辺りを見渡した。その後徐々に3人は道路の中央に集まり、それぞれが互いの背中をカバー出来るようにと陣形を組み、警戒していた。
その時だ。
「れっでぃーす・ぇーんどぅ・じゅぇんとぅるめーんっ!!」
「!?」
彼等の居た環境に響く、一声を彼等は耳に捕えた。声を聞いた3人は一層辺りを警戒し出したその時、ライトは何かを見つけ、背後の2人に解る様に目標に対し指を指した。
そこには雪の降る大地を静かに歩く、小さな人影だった。
「ニャッニャッニャッ、はぁ~いっ 狐子に釣られてやってきた狐ちゃん達、大変長らくお待たせしましたのニャッ」
「ぇっ、ネコ・・・?」
「いや、ただの猫じゃない。・・・お前、まさかとは思うが・・・管理課の『茶色い猫』じゃないだろうな。」
「管理課・・・!?」
そんな彼等の元にやって来た人影が街灯に照らされ色味が付くと、ライトは現れた人物に拍子抜けた声を発した。しかしそれを聞いたアシュレーがすぐさま訂正するかのように言葉を付けたし、そこに居るのは自分達にとって敵視しても良いであろう相手である事を2人に伝えた。
それは彼等の居る地区を管理する、街を支配する管理課の事だと。
「ニャーン、よぉーく知っておいでですニャ。針鼠ちゃんっ」
「気色悪い言い方するなっ・・・! お前、何しに現れた。」
軽くからかわれながらもアシュレーは相手に問いかけ、何しに現れたのかと質問した。元々彼等は地区を管理する存在ではあるが、それ以上に街に住む存在全員を『支配』する形を取っている。だが彼等の居る地区はすでに『統一』された学業の場であり、彼等の出番が聊か妙だと考えている様だった。
「何って言うのは心外ですにゃあ。おミャー達が探しているであろう相手を、わざわざ拾ってきてあげたのですニャよー?」
「拾った・・・だと?」
「左様、ニャーは単に拾っただけなのニャ。」
パチンッ
ドサッ・・・!
「!? ソニルス!!」
そんな問いかけを軽く流しながらネコは目の前で指を鳴らすと、彼等の背後で何かが雪に埋もれる物音がした。物音のした後方を視ようと一同が振り返ると、そこには俯せで倒れるソニルスの姿があった。彼を見つけたライトはすぐさま駆けつける様に彼を抱え起こすと、息をしている事を確認し、無事である事をシップス達に告げた。
「・・・拾った、な。信じたくはないが、お前が何もしていない証拠はあるのか。」
「ニャーニャッ ニャーも中々の嫌われ者に格上げされましたニャ。まぁでも~、それはこっちにとっても中々都合の良い流れ。それで構いませんニャよ?」
「・・・」
何事も無く探していた友人を見つける事は出来たが、アシュレーは未だに信用出来ていない様子でネコに問いかけた。
外傷はなくとも気絶しているソニルスに何かをしたとは言い切れず、また彼が何もしていないとも言い切れない現状。ましてや相手が管理課の1人だと言う事もあれば、当然と言えば当然であろう。問いかけに対しネコはそれで良いと言うところも、また気にかかる点であった。
そんな気がかりな点が浮かぶ中、ネコはこう言い出した。
「あぁ、それと~ 君達に会いたがっている相手が居るから、そちらも連れてきてあげましたのニャ。」
「会いたがっている? 誰の事だ。」
「ん~ そうニャねぇ・・・ そこの大きい狐さんが、ある意味知っているかもしれませんニャね。」
「俺?」
彼等の探していた友人以外に、彼等に会いたがっている存在が居る。意味深な言葉を吐いたネコの問いかけに皆が耳を貸す中、ネコはシップスに関係があると言い出したのだ。一体何の話だろうかと首を傾げるシップスであったが、意味も理解しない間に号令がかかった。
「いでよっ!! クァム・ヒィァアアーッ!」
何かを召喚するかの如くネコはそう叫ぶと、周囲に変化が現れた。
ズーン・・・ ズーン・・・ ズーン・・・
「・・・? おい、お前に地響きのデケェ知り合いなんて居たか?」
「言わるけねぇだろ、アホアシュレー ・・・? 雪が・・・」
「止んだ・・・?」
彼等の居る周囲に轟く地響きを耳にした直後、彼等の周囲を舞っていた雪達が姿を消した事に気が付いた。隣で言葉を耳にしたアシュレーも空を見上げると、止む事がほとんどない地区の雪が止んだ事を彼も確認した。
つい先ほどまで降っていた雪が、突然止む事などありえるのだろうか。一同がそう思っていた、その時だ。
ズーンっ・・・ ズーンっ・・・!
【ゴォオオオオーーーー!!!】
「くっ!!」
「うぉあっ、うっせぇえっ!!」
彼等の元に、突如雷鳴の如く轟いく鳴き声が大地を震わせた。耳で感じ取れる音域限界に等しい音量の咆哮を耳にし、彼等は耳を塞ぎ音を遮断しつつ、物音のする方角を眼にした。
するとそこには、街中に立ち並ぶビルに手をかけた炎を纏う手があり、その先には炎を纏った大きな怪物の姿が映った。本物の炎を纏っているらしく、炎に照らされた大地は明るく照らされ、怪物の周囲にある雪達は即座に蒸発し、周囲に湿気のある空気を漂わせるのであった・・・




