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英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
外伝・シップスシナリオ
43/155

安定と変化の違い 4

「さーってっと、そろそろ頃合いね。」

「ん? 頃合い?」

長丁場になりかけていたギャンブルゲームがひと段落した頃。主催者であるペルティが意味深な言葉を呟き、それを聞いたシップス達が一斉に彼女に視線を向けた。

「貴方達の求めていた情報、そろそろ良い頃だから教えてあげるわ。」

「おい、良い頃合いってどういう意味だよ。」

「それは、貴方達がこれから向かった先で解る事よ。これから言った場所に、確実にその時までに向かって。そうすれば、彼が見つかるはずだから。」

「ソニルスが、か・・・?」

彼女の言い出した頃合い、それは彼等が探している『ソニルス』との接触を図れる時間の事だった。初めから時間つぶしが目的だったのかと彼等は首を傾げる中、彼女は気持ち的に明るくない様子を見せ、彼等から一度視線を逸らし、こう言った。

「アタシの聞いた話だと、彼は夜中にある場所へ赴いたって話よ。学校の裏話を、貴方達も一回は耳にした事があるはず。」

「裏話って・・・ あの『非常階段の怪談』か?」

「そうよ。彼は1人あの場所へと赴いて、ある罠にかかったらしいの。その日は曇天で辺りも暗かったから、目撃情報も無かったって言うし。恐らく、捕獲されたわ。」

「捕獲って・・・!! どういう事だよ!?」

彼等の探していたソニルスは昨晩の内に『捕獲』され、その捕獲主を捕まえなければ彼を助ける事が出来ない。それを聞いたライトは動揺しながら席を立ち、彼女に詳細を求めた。

しかし彼女は詳しい情報全てを知っているわけでは無いと告げた後、両肘をテーブルの淵に付けながら彼等を見た。

「原因の発端は私には解らないけど、そう言う事。これから貴方達が向かうのは、捕獲主が現れるポイント。この地区の大扉がある、あの通りに向かいなさい。明方までに。」

「明方って・・・ 後2時間か。捕獲主って、どんな奴なんだ?」

「詳しくは知らないけど、こう言われたわ。『怪物』だって。」

「ッ・・・」

彼等がこれから奪還する際に接触する相手、それは街の中では噂すら聞いた事のない『怪物』だと彼女は言った。無論どんな相手なのかも解らないため彼等に助言をする事は出来ないでいると、言葉を聞いたライトは怯む様子を見せ、どうするかと考え出した。

彼等がそのような相手に対抗するには『流星石』を使うしかないが、どんな相手なのかが解らないため有効性がどれくらいあるのかも彼等には想定が付かない。抜群の効力を発揮するかもしれないが、逆を言ってしまえばまったく無力となってしまう可能性だってあるのだ。どうするべきかとあれこれ考える彼に対し、隣に居たアシュレーは左程ためらう様子を見せておらず、ライトの様子をしばらく見ていた。


集団内で一番ソニルスを助けたいと願うのは彼であり、彼が一番無茶をしても不思議ではないと言う仮説は立てておかなければならない。彼の安否によっては冷静さを保てるかもしれないが、危険な状態であれば自分達ですら危険な賭けに出かねないのだ。戦闘はどうであれ、彼にとっての気に書ける点は『仲間』そのものにある様にも思えた。

そんな彼の心配は前に立つライトに限らず、さらに彼の隣に座っているシップスにも同様の事が言えた。アシュレーは今の彼はどんな様子なのかと思い目線を向けると、そこには形態をみつめるシップスの姿があった。携帯をみつめながらボーっとしており、何か考え込んでいる様にも見える。

「シップス? どうした?」

「ん? ・・・いや、別に。」

「隠すなよ、こんな時に。携帯、何を視てたんだ。」

「・・・ ・・・さっきの話で、ちょっとな。俺の事を心配してくれた奴って、アシュレー以外にも居たのかなって思っただけ。それだけだ。」

「俺以外に?」

「言うほど、俺は友人が多い方だとは思ってねえからさ。学校生活での大半が虐めの記憶しかねぇし、学力も言うほど高くは無い。趣味に逃げてばっかだったし、何時だって気に入った親友との時間しか大切にしてなかったと思ってな。ちょっと後悔してた。」

「・・・」

そんな彼に対し声をかけると、彼は軽く誤魔化そうと言葉を口にするも、再度アシュレーからの問いかけを聞いて素直に腹を割って話してくれた。

ゲームで楽しんでいた際に耳にした『心配してくれる仲間』の事を思いだし、彼は自身に対し誰が心配してくれていただろうかと考えていた事。1人は自分の隣に座るアシュレーに他ならないが、他にも彼には思い当たる人物が何人か居た事。それを想い出した際に顔を見たくなったため、携帯を見つめて考え込んでいた事。

いろいろと普段から意識する事が無い事を考えていたと聞き、アシュレーは不思議そうな表情を見せながらも、彼の考えていた事を思い言葉を考えていた。

『コイツ、普段はそんな事話さないのに・・・俺等が楽しんでた時に、悩んでたのか。気が付かなかった・・・』



「後悔してるのね、意外と。」

「ん。・・・まぁな。柄に合わないとか普通に言われるけど、俺も存在(ヒト)だからな。そんくらいする。」

「でも、それって案外良い事なんじゃないかしらね。悩むって事は、それだけ経験を積んでるって事なんだし。」

「経験?」

そんな彼に対し考えていると、アシュレーよりも先にペルティが彼に対し声をかけだした。彼が話した本心の言葉を聞いて思った感想を告げられ、彼は耳にした言葉に対し首を傾げる様子を見せた。

彼女が言うほどの事を、彼はその様に受け止めた事が無かったのだろう。新鮮な感想を聞く様に、眼を向けていた。

「人生ってどういうものなのかはアタシは興味ないけど、貴方みたいな突撃馬鹿っぽい子が悩んでるのを視るのは嫌いじゃないわ。」

「今サラッと酷い事言ったな・・・ どーせ馬鹿だよ、俺は。」

「じゃあ、今度は馬鹿っぽく行動してみる? その方が、かえって悩みも吹き飛んで良いかもしれないわよ?」

「んー・・・」

軽く現実に戻される言葉を放たれるも、彼は彼女からの言葉を聞き軽く悩む仕草を見せた。確かに彼自身も自分らしくない事を考えていると思っていた様子で、その様子は何処となく楽しい物を見つけようとする無邪気さも視えた。

常に悩み続ける様な存在が自分なのか、それとも悩まずに感じた気持ちを素直に行動に移すのが自分なのか。そう思い考えた頃、会話を聞いていたライトが言葉を発した。

だが、

「ぉ、おいっ 相手は怪物だろ・・・? そこまで迷惑は」



「明方までにそこへ行けば、ソニルスを助けられるのか。」

「かけられ・・・? シップス・・・?」

彼の言葉を遮り、シップスはペルティに対し間接的な答を求める様に問いかけた。言葉を遮られた彼は一瞬驚く仕草を見せるも、彼女の返答を聞こうとする彼の邪魔にならない様言葉を慎んだ。

「えぇ。確実に奴は来るわ。」

「ん、じゃあ行くか。アシュレー、ライト。ソニルスを迎えに行くぞ。」

「ん? ぉ、おう。」

「ちょっ、待ってシップス! 本気なのか!?」

返事を聞いた彼は即決した様子で席を立ちあがり、すぐさまソニルスを迎えに行こうと言い出した。それを聞いたアシュレーは軽く驚きながらも同様に席を立つが、嬉しくも発言に理解出来ないライトが彼等の前に立ちはだかった。

少し意外な行動をされたと思い、彼は説明を求めたかったのかもしれない。

「ん、俺は一応真面目に言ったつもりだぞ。邪魔だったか?」

「ぁ、いや・・・そう言うわけじゃないけど・・・ ・・・良いのか、相手は怪物だって言うのに・・・」

「別にいーよ、んな事。どーせここには、俺の友人はお前等しかいない。それにこういう時に動けないんじゃ、本当に俺の意志で動きたい時に動けないだろうからさ。言っちゃ悪いけど、予行練習みたいな感じだ。死ぬ気のな。」

「シップス・・・」

協力する事に対し否定されたのかと思い首を傾けたシップスを視て、ライトは誤解を解きながらも彼の決意に至った経緯を知りたいと口にした。それを聞いた彼は軽く右腕を回しながら退屈そうに説明し、彼の中で燃え滾る、この先に起こるかもしれない障害に立ちはだかる勇気を教えてくれた。

彼からの言葉を聞いたライトは呆気にとられながらも、彼の協力に心の中では喜んでいた。

「ライト、行こう。こういう時のシップスは、何を言ったって無駄だ。」

「あっ、ちょっ! お前も酷い事言うなぁ・・・」

「ったりめーだ、馬鹿狐。しおらしくクールに決めてると、槍でも振ってきそうな気分になるんだよこっちは。」

「テメッ、言って良い事と悪い事があるんだぞっ!! 俺の名言を返しやがれっ!!」

「何が名言だ!! どーせゲームの受け売りだろうが!」

「それ以外あるかぁあ!!」

しかし和みのムードは一変、突如目の前で殴りあいの喧嘩が始まるかのような口論はスタートしてしまった。両者の言葉を聞くも反応に困っていたペルティは仲裁をするべきかどうか迷っていると、2人は互いの服の襟元を掴み殴りかかろうとした。その時だ。

「・・・ ハハハ・・・」

「んぁ? どうした、ライト。」

「コイツの馬鹿が移ったか?」

彼等の怒りを収めたのは、彼等を視て苦笑するライトの笑い声だった。声を聞いた2人は正気に戻りながら彼に説明を求めようとするも、アシュレーの言葉を聞いたシップスに再び喧嘩のスイッチが入ろうとした。

「うっせっ! 尻敷かれ針鼠!」

「黙れっ! 童貞狐!!」


「ゴ、ゴメン・・・そう言うつもりじゃないんだ。 ・・・ただ、ソニルスの事で熱く成ってくれる存在(ヒト)が居たんだなって思ってさ。」

「・・・」

「アイツ、なんだかんだで友達と居る時もあるけど・・・君達と居る時ほど、楽しくなさそうだったからさ。アニメとかの話も、絵の話も。だから、ちょっと嬉しくなってさ。」

だがそんな彼等を止めようとライトは両手で両者の腕をそれぞれ掴み、笑った事に対する弁解を図りだした。

自分がやり取りを視ておかしい気持ちを抱いたのではなく、そんな彼等が熱くなるほどに自分にとって大切な人のために熱くなってくれた事。彼にはそれがとても嬉しく思える事だったらしく、じつはそうでは無いのではないかと思っていた自分に対し、笑っていたのだと。ライトからの説明を聞いた2人は握っていた拳をおろし、互いに顔を見た後、苦笑しだした。

「喧嘩してる所悪いけど、さ・・・ソニルスを迎えに行きたい。一緒に来てくれないか?」

「ぉ、おうっ そうだったな。」

「ぁー、無駄に口論したぁー・・・」

何かと収まりが良いのか解らずに彼等は話を戻し、ソニルスを迎えに行くと決めた様だ。軽く楽しかった時を思い出すかのように彼等は戯言をぼやきながら、ペルティに軽く手を振りその場を後にして行った。

彼等の様子を見たペルティは彼等に対し手を振り返し、視えなくなるまで彼等を見送った。

『・・・ さてと、アタシも暇つぶしに見に行こうかしらね。 3人の雄達と、怪物の死闘を視に。』

その後遊んだテーブルで使用した道具達を定位置に戻した後、彼女は軽く横髪を直し、彼等の後を追うようにその場を後にして行った。


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