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英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
外伝・シップスシナリオ
42/155

安定と変化の違い 3

「お前、ソニルスが何処に居るのか知ってるのか!?」

「一応ね。」

突如彼等の前に現れた彼女の言葉を聞き、ライトは血相を抱えながら彼女に近づいた。平然と立ちながら静かに言う彼女に対し、落ち着きが無いが仕方がない。

彼はとても、急いでいるのだから。

「頼む、教えてくれ!! アイツは何処に居るんだ!?」

「ちょっと、痛いじゃないっ!」



パシンッ!


「うぐっ・・・!」

「レディの身体に、妄りに障らないで。なんて不躾なのかしら、ここの学生達は。」

「わ、悪い・・・ ・・・」

「悪い、ちょっと急ぎなんだ。俺からも頼む、教えてくれないか。」

しかしその慌て振りは相手の反感を買う事もあり、不作法も相まってか手痛い一撃を彼は受ける事となった。礼儀やらなんやら以前にあまり嬉しくない態度だった事が、今回の原因と言えよう。軽くライトを落ち着かせながら、アシュレーは代わりに居場所が何処なのかを問いかけた。

「ふーん、そう。・・・教えてあげても良いけど、条件があるわ。」

「条件?」

「そう。貴方達がそれを飲んでくれるって言うのなら、教えてあげるし力を貸してあげるわ。どう? 悪くない話でしょ?」

先を急ぎたい3人に対し、彼女は不意にある条件を提示した。それは求める情報を与える対価として貰う物であり、彼女にとっての『何か』をすれば提供する、と言う物だった。一件聞いている限りではシンプルな内容だが、読み解き方を間違えれば何をするか解らないとも言える。

彼女の言う何かが解らないためか、頬を摩りながらライトは言った。

「そ、その条件にもよるぞ・・・! 飲めるかどうかな」


「あら、知りたくないの? 彼の場所。」

「んっ・・・ぐぅっ、弱味を握るとは・・・」

「丸出しの分際で言わないの。さっ、3人居れば少しは紛らわせそうだし。イイ事して遊びましょ?」


「「イイ事?」」


その後条件を飲まざる得ない状況に持ち込まれてしまい、渋々3人は彼女の条件を受ける事となった。軽く良い様に事を運ばされている感がありながらも、一同は彼女に続いてその場を後にした。




一行が向かった場所、それは商店街から離れた住宅街とは違った場所だった。その場所は昔の学校があった土地を開拓して造られた『宿屋』であり、一行が入ったのは近くに建つ小さな家。玄関を開け中へと通された3人は恐る恐る入室し、靴を脱いで奥へと向かった。

廊下を歩いた先にある扉を開けると、そこは暗がりの強い部屋の様な場所だった。しかし視界が効かないため、何があるのかが解らない。

「・・・あれ、暗い。」

「今灯りを付けるわ。」



パチンッ


「・・・ぅぉおおっ!!」

「えっ、ちょっ!! 何だこれ!?」

彼等が居た部屋の明かりが灯された瞬間、3人は目の前に広がる光景を目にし仰天した。入室した部屋に現れたのは幾多の『ギャンブル用機器』達であり、灯りと共に華やかなネオンカラーを光らせる物も存在していた。茶色を基調とした部屋に置かれているのはルーレット台であり、壁際には種類が違うスロット台が数多く存在していた。また別の場所にはディーラーの入れるトランプゲーム用の台も備わっており、普通に遊べるだけの設備が整っていたのだ。

普通に考えて、一式がそろっているだけで驚けるレベルである。

「ココが、アタシの趣味の部屋よ。さっ、適当な場所に荷物を置いて、テーブルに付いて。」

「テーブルって・・・ これ『ルーレット台』だろ?? どっからこんなもの・・・」

「通販で買ったのよ。」

「通販って・・・」

驚きを隠せないアシュレー達が手荷物を適当な場所に置いていると、一足先にテーブルへと向かったシップスが質問を投げかけた。だが質問に対する返答はあっさりとしたものであり、有無を言わさずに彼等のゲームがスタートした。


ディラーとして立ったペルティが親となり、シップスとアシュレー、ライトは参加者として賭け金を置くする側となった。賭ける場所は幾多も存在し、色と偶数、はたまたグループに分けられた数字に当たる事を、彼等は好きなだけ賭けられる。用意されたコインは自腹ではないため、初めは渋々だった一同も徐々に楽しい雰囲気へと入り込んで行った。

賭け金をセットした彼等を視た後、彼女は静かにルーレット台にボールを投入し、抽選が開始された。静かかつ綺麗な軌道を描きながら回り続ける銀の弾は彼等の視線を釘付けにし、自身が投入したコインに当たる事を祈りだす。シップスの賭けた黄色いコインか、アシュレーの賭けた灰色のコインなのか。はたまたオレンジ色のコインを賭けたライトに対し、勝利の女神がほほ笑むのか。

皆は今か今かと、結果を心待ちにしていた。その時だ。



カランカランカラン・・・


「黒(ノワール)の『26』!!」

「ぉっしゃぁああ!! 当たったぁあ!!」

「ゲェッ、お前が当たりかよ!?」

「おめでとうアシュレー」

ボールの入り込んだ場所に賭けていたアシュレーが歓喜の声を上げ、隣でハズレを引いたシップスが頬杖を突きながら文句を足れていた。何時しか完全にのめり込んでいた様子で、とても嬉しそうに彼は喜んでいた。

その後しばらくゲームはルーレットで続き、3人は何だかんだで一時を楽しんでいた。盛り上がりに乗じて用意されたレモネードは冷たく、軽い食事と共に彼等は満喫していた。

しかし、



「・・・なぁ、何時になったら教えてくれるんだよ。ソニルスの場所。」

気付いた頃には彼等は沢山の時間をその場で費やしており、気付いた時には深夜になろうとしていた。食事が出されていたため空腹感による時間の経過に気付かなかったのも、1つの理由だろう。

「教えるわよ、後で。」

「後でって・・・ 俺達急いでるって言ったじゃん。ルーレットも楽しいけど、ソニルス心配だし・・・」


「過保護なのね、貴方。」

「ぇっ?」

情報を持っているであろう彼女の返答に不満げな様子を見せるライトに対し、彼女はルーレットを回しながらそう呟いた。一言呟いただけだったためシップスとアシュレーはよく聞き取れず、彼等も話に耳を傾けだした。

「過保護って言うほどなのか・・・な、これって。普通だと思ってたんだけど。」

「あら、それなりに好意のある相手を心配するのは良い事だと思うわよ。同性同士でも、異性でもね。変な意味なしで。」

「まぁ、そうだろ?」

「でも、半日留守にしたからって声を荒げて心配するのは過度よ。アタシだったらみっともないって、思うわ。」

「・・・」

不意に前で交わされ出した話を聞いて、2人は顔を見合わせた後ライトの顔をみた。軽く慌てていた事もあってか彼女の言葉をダイレクトに受けた様子で、少し表情が暗い様にも伺える。

「アタシもね、そう言う人を見た事あるから・・・ あんまり無駄な心配をして、疲労で疲れ切らない方が良いって思うの。貴方、結構根が良さそうだしね。」

「そ、そうかな・・・」

「そうよ。ちょっと顔は思い出せないけど、アタシの知り合いだったら普通にそう言うと思うわ。『心優しい存在は、心優しい存在達からの愛で出来てる』ってね。」

「愛なぁ・・・ イメージ沸かねえな。」


「まっ、男だものね。 ロマンの欠片も無い。」

「グサグサ言うなぁ、マジで・・・」

とはいえ、そんな彼に対し感情を揺さぶる言葉を彼女は何度もかけていた。心配になってしまうほどの相手ある事を知り、なおかつ短時間で血相を抱えてしまう自身の事。一緒になって探してくれる友人達が居たからこそ、独りで無茶をせずに済んだ事。

幾多の状況が重なった今だからこそ、冷静になって考えられるのかもしれない。終いにはオチと言わんばかりの一言を告げられ、彼は自然と苦笑を浮かべ、笑顔になっていた。

「とりあえず言いたいのは。ちょっとでも心配してくれる人が居るのなら、その人は心配をかけない様何かをするべきって事。貴方がそれなりに想うって事は、相手も何かをしないといけないって事。バランスは常に付きまとうから、あんまり大きくし過ぎると、相手の重荷になるのよ。」

「重荷に?」

「そっ。だから、今は忘れて楽しくしてた方が良いわ。押し潰しあうんじゃなくて、一緒に重荷を背負い合うの。それが出来てスッキリしたら、アタシはちゃんと貴方に教えてあげられる。」

「・・・そっか。解った。」

「うん、良い子。」

素直に全てを話す事無く、彼女は彼に理解させるように言った後、台に腰を下ろしたまま静かに彼の頭を撫でた。まるで子供を宥めているお姉さんの様にも感じるその風景を視て、シップスとアシュレーは顔を見合わせた後、静かに笑った。


『・・・心配をしてくれる相手、か・・・ 居たのかな、俺にも。』

その後再び始まろうとするゲームのコインを賭けた後、シップスは不意に考え事をしながら天井を見上げた。ネオンカラーを浴び煌めく様に輝くシャンデリアは気品あふれており、今居る部屋の雰囲気にとてもマッチしている様にも見えた。

自分達が今何をしていて、何を意識し、何を忘れなければならないのか。そんな事を、ただ朧気に考えていた。

『・・・ ・・・少なくとも、アシュレーはしてたな。毎日顔を見てるからって言うのもあるけど、何時も・・・してた。・・・そういや、もう1人居たな。昔に。』

不意に宙を眺めていた彼の脳裏にある光景が浮かび上がり、彼はポケットにしまい込んでいた携帯電話を取り出した。画面を弄り画像ファイルと漁った後、彼は一枚の写真を呼び出した。

そこには並んでカキ氷を食べる自分と、灰色の狼の姿が映っていた。待受けにしていた茶色の犬達と共に出かけた際に撮った写真であり、2人の両サイドには顔は視えないが友人達の手足が映っている。自身は冷たそうに頭を押さえる中、隣で笑顔を見せながら食べている友人が、とても印象的な写真だ。


『・・・そういえば、ラプは何してるんだろうな。俺・・・言うほど何もしてなかった気もする。見てると笑ってるのに、礼って言うほどの事・・・してないよな、そういえば。絵とかも、描いてない・・・』

不意に思い出しながら見た写真の出来事を思い出しながら、彼はしばし携帯の写真を視ているのだった。


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