019 要塞づくり2
「なんじゃなんじゃ、ぞろぞろと! その様子じゃと、エルフを仲間にできたようじゃの。女に子供までおるじゃないか。もしかして、全員か?」
大森林から戻った俺達をレミーが出迎える。
相変わらずのボサボサブロンド幼女だな。
宴では耳長族の男性を八人要塞へという話だったが、いつまた魔族の襲撃があるかわからないので耳長族全員で移住したいというウッドセン村長の申し出を先輩が快く受け入れたのだ。
「僧侶のエストに弓術士のエトールよっ! それと、こちらは耳長族の村長をしているウッドセンさんっ!」
「わしはレミー魔法商店の店主をしておるレミーじゃ。封印の魔法陣はあの店の地下にある。よろしくたのむぞ」
エストさん、エトールさん、ウッドセン村長がレミーに挨拶をする。
「この度は魔族から村を救って頂いた上に全員で移住させて頂き、ありがとうございました。耳長族一丸となって魔王討伐のお手伝いをさせていただきます」
そう言ってウッドセン村長はぺこりと頭を下げる。
「耳長族は手先が器用じゃから、建築が捗りそうじゃの。どろっぷあいてむはどうじゃ?」
俺と先輩はインベントリーから資材を取り出した。
その数は相当なもので、丸太が二百、動物の皮が七十、動物の骨が五十、オークの骨が五十、ハイオークの骨が一だ。
「これだけあれば、結構な数のスケルトンが生み出せそうじゃのう。それにハイオークの骨とは、腕がなるわい。同胞よ、集え! 今こそ恨みを晴らす時! 【亡者復活】!」
レミーの呪文で骨が紫色に輝き、スケルトンの骨格を成していく。
やがて、三十体のスケルトンが姿を表した。
その中に一際一体、大きなスケルトンが立っている。
巨大な盾と剣を装備したそのスケルトンはボロボロの鎧を纏い、全長三メートルはあろうかという巨体だ。
「レミー! なんか一体でかいのがいるわよっ!」
「スケルトンジェネラルじゃ。ハイオークの骨は質が良いからのう。レベルは二十じゃ。並のモンスターにはまず負けんよ」
「この数のスケルトンが並ぶと、なんだか本格的にこっちが魔王軍みたいですね」
「「善いスケルトンだから魔王軍じゃないわよっ!」とは違うわい!」
レミーとマリナ先輩がハモって否定してくる。
女の子二人から突っ込まれるとなかなかキツイものが有るな。
建築の指示を出してこの場を誤魔化そう。
「じゃ、じゃあとりあえずスケルトンのうち十体は穴掘りに合流、他は丸太を切って柵造りをお願いしましょう! 耳長族の方達には、皆さんが生活できる宿舎を作ってもらえますか?」
「私たちはテントを張って生活するつもりですので、お気遣いは無用ですよ」
ウッドセン村長が遠慮しようとしてくるが、ここは譲れない。
ブラックな環境はスケルトン達だけで十分なんだ。
「テント暮らしはキツイですから、きちんと身体を休められる宿舎を作って下さい。あ、宿舎の前にエトールさんのベッドを作ってあげて下さいよ!」
「タツヤさんのお心遣い、しかと受け取りました。エスト、エトール! 早速作業を開始するぞっ!」
「ちょっと村長! お兄ちゃんは移動しただけでも大変なんだから、寝ないとダメですよ!」
「はっはっは、もちろんエトールの作業は寝ることさ。本当にエストは兄思いだな」
「お恥ずかしいかぎりです」
そういって頭をポリポリとかくエトールさんは満更でもなさそうだ。
俺もエストさんみたいな妹が欲しい。
三人は最後にぺこりと頭を下げると耳長族達と合流して、テントの設営作業を開始した。
「アンタ、意外と気遣いできるのねっ!」
「先輩ほどじゃないですけどね」
「いやいや、なかなか良い采配じゃよ。わしのスケルトン達も、ちょっとは労って欲しいがのう」
「こき使えと言ったのは、レミーさんじゃないですか!」
「そうじゃったか? 歳をとると物忘れが多くなっていかんの。ほっほっほ」
幼女の若い脳なんじゃなかったのか、このやろう。
「さて、そろそろ学校へ戻るわよっ! 放課後が終わっちゃうわっ! レミー、エストの教育頼んだわよっ!」
「あのお嬢ちゃんをアンデッドのダンジョンへ送ればええんじゃな?」
「エストさん一人ですか? なんだか不安だなあ」
「僧侶だから、アンデッドには強いはずよっ!」
確かにゲームでも僧侶はアンデッドに強い事が多いな。
意外となんとかなるのかもしれない。
「なに、ちゃんと死なないよう手加減はしておくからの。心配はないはずじゃ」
「そういうことなら、よろしくお願いします!」
「じゃあ、帰るわよっ! またねっ!」
そう言うと先輩は、指輪を見つめて帰還の呪文を唱えた。
「【帰還】!」
ダンジョンから戻って目を開けると、すっかりと夕暮れになったヨガ同好会の部室だった。
佐々木先輩はヨガマットの上に転がって寝てしまっているようだ。
佐々木先輩からすれば俺とマリナ先輩はずっと瞑想していたから、暇だったんだろうか。
「こっちの世界では二時間くらいしかたってないんですね」
「ちょっと違和感あるわよねっ! 早くなれるといいんだけど」
現実世界の空気を吸って感慨にふけっていると、下校の時刻を伝えるチャイムが鳴り響く。
「むにゃむにゃ……とろとろの……プルプルで……」
「ヒロコ先輩っ! 下校のチャイムよっ!」
「ふにゃっ!?」
佐々木先輩がマリナ先輩に叩き起こされる。
ふにゃってちょっとかわいいな。
動きに合わせてたゆんたゆんと揺れる胸もグッドだ。眼福眼福。
「わ、私としたことが瞑想しようとして寝てしまっていたようです!ごめんなさい!」
「俺達も寝ていたようなものですから、気にしないでください。ね、先輩?」
「そうっ! 無問題よっ!」
「初日から恥ずかしいところをみせちゃいましたね。ヨガ愛好会の活動は毎週火曜日と金曜日だけなので、明日はお休みです。また金曜日にお会いしましょう。」
「金曜日ですね、了解しました!」
「それじゃあ今日はもう遅いし、下校しましょう」
佐々木先輩、マリナ先輩と部室を後にする。
下駄箱で佐々木先輩と別れると、マリナ先輩からメールアドレスの交換を求められた。
「ダ、ダンジョンの情報交換のためよっ! 勘違いしないでよねっ!」
先輩は顔を真っ赤にしてスマートフォンを取り出している。
もしかしたら、俺が聞かなきゃいけなかったのかもしれないな。
先輩からメールドレスを聞くなんてこと、滅多にないだろうから緊張しているのかもしれない。
「気が回らなくてすみません。これが俺のアドレスです」
スマートフォンに表示されていた先輩のアドレスに、メールを送る。
「明日の放課後もヨガ同好会の部室に集合よっ! 同好会は休みだから、思う存分攻略部の活動ができるわっ!」
「それは楽しみですね! それじゃあ、また明日」
「また明日っ!」
先輩は小走りで校門へいくと、止まっていた黒塗りの車に飛び乗った。
やっぱり先輩はお嬢様らしい。
耳長族にオークに魔族にエルフに僧侶か。
今日もいろんな事があったなあ。
指輪のダンジョン攻略がおもしろすぎて、ネトゲをやる気が起きてこない。
明日もまた、アツシに小言を言われることになりそうだ。
今回で第二章は終了です!
次回からは「三章 大坑道とドワーフたち」を開始予定です!
今後ともよろしくお願いします!




