017 VSヴェステリテ
繰り出された幾つもの刺突が同時に襲い掛かってくる。
盾と棍棒で懸命にガードするが、全てを防ぐことはできなかった。
右肩と左足に鈍い痛みを感じる。
「私の刺突を受けて致命傷を受けないとは、多少は見直してあげましょう」
ヴェステリテは余裕たっぷりでニヤニヤと笑っている。
受けに回るのは得策じゃない。
コンパクトな攻撃を連続で繰り出して、乱戦に持ち込もう。
棍棒を短く握り直し、素早く振り回す。
「おや、大振りだけの脳筋ではないということですか? 結構結構」
俺の連撃は、華麗な動きで躱されてしまう。
敵は目の前にいるのに、あまりにも遠く感じる。
こうなったら、余ったステータスポイントを全て素早さに振ってしまおう。
”名前:石橋タツヤ
職業:騎士
レベル:18
【ステータス】
TP:2060/2060
MP:4/4
STR:10
VIT:5
DEX:7
INT:1
WIS:1
ステータスポイント:0
【スキル】
超・一閃 消費TP:150
超・乱れ斬り 消費TP:1000
|超・シールド・バッシュ《ぶちかまし》 消費TP:500
スキルポイント:17
【パッシブスキル】
超える者
”
体が軽い。これなら。
俺の繰り出す攻撃は先程のものよりも数段早いものへと変化した。
これはまるで、先程受けたヴェステリテの同時刺突攻撃のようだ。
涼しい顔をしていたヴェステリテの表情がぐにゃりと歪む。
「貴様! 三味線を弾いていたのか! 小癪な真似を!!」
身のこなしだけでは避けきれなくなったのか、レイピアも防御に活用される。
このまま行けば、押し切れるぞ。
「お二人とも! 大丈夫ですか!」
その時だった。
ウッドセン村長が耳長族を引き連れて加勢する。
剣を持った前衛と弓を持った後衛が、俺という前衛を失って防戦一方だった先輩と合流してオークの軍団を殲滅し始めた。
個々の戦闘能力は高くはないが、連携が上手く取れており戦闘には安心感がある。
「下等な亜人共が! ならばこちらも切り札を切らせてもらおう!」
ヴェステリテは一足飛びに後退すると、懐から取り出した毒々しい実を近くにいたオークに食べさせた。
「フガッ、フゴォォォ…… フゴオオオオオオオオオオ!!」
オークの体が波打ち、ぶくぶくと巨大化していく。
手に持った斧は握りつぶされ、遠目でもわかる暴力的な力こぶがいくつも隆起する。
たちまち五メートルはあろう巨大なオークに变化した。
「魔王様の魔力から作り出されし、進化の実よ。その魔力にいずれ身体は朽ち果てるだろうが、光栄であろう? ハイオークよ。小癪な耳長族共を蹴散らせっ!」
ヴェステリテの指示に、ドスンドスンと地響きをたてながらハイオークが耳長族達へと迫っていく。
「タツヤっ! アイツはマズイわっ! 私達の援護をっ!」
「はい!」
先輩の方へ合流しようとするが、迫ってくる刺突攻撃に阻まれてしまう。
「貴方の相手はぁ、この私ですよ」
ヴェステリテを無視して先輩へ駆け寄れば、たちまち串刺しにされてしまうだろう。
棍棒とレイピアが激しく交差する。
「ぐはぁっ!!」
ハイオークの一撃は重く、耳長族に受け止められるものではなかった。
その丸太のような腕から繰り出される一撃を受け、一人、また一人とその数を減らしていく。
先輩も必死に土壁で攻撃を防いでいるが、このままでは全滅は時間の問題だ。
「くそ! そこをどけよこの野郎!」
「まだまだ闘いはぁ、これからですよ!」
俺の連撃はヴェステリテにほぼ防がれてしまうものの、数発はその身体を捉えていた。
しかし、短く持った棍棒が原因だろう。
なかなか致命傷を与えられずにいる。
はやくしないと先輩が……。
覚悟を決めて棍棒を握り直す。
繰り出すは連撃スキルだ。
「超・乱れ斬り!!」
「――なっ!?」
高速の連撃がヴェステリテへと襲いかかる。
スキルを使用しただけのことはあり、先程までの攻撃とは重さも速さも数段上だ。
超・一閃を受け止めてみせたヴェステリテだったが、か細いレイピアでその全てを受け止めることはかなわない。
最初の一発は防がれたものの、二発、三発、四発と棍棒がヴェステリテの身体を蹂躙していく。
スキルを打ち終わった所へ、トドメの一撃だ。
「超・一閃!!」
「ぐはぁっ!」
ヴェステリテの腹目掛けて放った超・一閃は見事に命中し、ヴェステリテの身体が宙を舞う。
この隙きに先輩を助けなくては。
先輩の方へ振り返ると、まさにハイオークの拳が先輩へと迫る瞬間だった。
「先輩!!」
全力で地を蹴るが、このままでは間に合わない。
先輩がハイオークの攻撃を食らう?
嫌な想像が頭を支配する。
「タツヤっ!」
先輩の叫び声と共に、ゴキンという嫌な音が響いた。
ぼたりぼたりと滴る血。
しかしその色は、毒々しい紫色だ。
「危ないところでしたね」
先輩を庇うように、一人の耳長族がハイオークの拳を拳で受け止めていた。
その体は小枝のように細く、顔はやつれて土気色だ。
しかし、体中から吹き出す銀色のオーラが圧倒的な力強さを感じさせる。
エストさんの兄、病気で寝込んでいたはずのエトールさんがそこにいた。




