013 大森林3
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悲鳴が聞こえた方向へ走ると、一人の少女がモンスターに囲まれていた。
少女は金髪ロングヘアーに碧眼で、尖った長い耳が特徴的だ。
「そこの人っ! 大丈夫かしらっ!?」
先輩が声をかける。
「た、助けてください!」
「任せなさいっ!」
少女を囲むモンスターは人間のような背格好をしているが、鼻が異様に低く、下顎から大きな牙が生えており、その顔は豚に似ていた。
中肉中背な体に皮の鎧を着込み、手には剣や槍が握られている。
「フゴッ!」
リーダー格であろう他の豚達よりも一回り体格の良い豚の指示で、三匹の豚がこちらへと向かってきた。
「先輩! 待望の人形モンスターですよ!」
「今夜は焼豚ねっ!」
「先輩まさか食べる気ですか!?」
「食べるわけないじゃないっ! 見るからに不味そうよっ」
「フゴオオオオオオオオオッ!」
先輩の言葉が伝わってしまったのだろうか。
豚達は怒った様子で先輩に斬りかかる。
「お前らの相手は俺だって!」
先輩と豚の間に体を滑り込ませ、棍棒で斬撃を打ち払う。
体勢を崩した豚の土手っ腹目掛けて、スキルを放った。
「シールド・バッシュ!」
派手に吹き飛んだ豚は続いて攻撃しようとしていた仲間に衝突し、三匹で仲良く倒れ込んだ。
「紅蓮の火球よ。我が敵を屠れ。【火炎弾】!」
すかさず先輩の放った火魔法が命中し、豚達が燃え上る。
外見の通り油分が多いのだろう。
最初は火を消そうとしていたが、すぐに火だるまになって動かなくなった。
「ほーらタツヤ、焼豚よっ! 遠慮なく食べなさいっ!」
もしかしてこれ、先輩の手料理って事になるんだろうか。
モンスターだけど豚っぽいし、火もちゃんと通してあるんだよな。先輩の手料理か。ゴクリ。
「タツヤっ! 大きいやつが来るわよっ」
先輩の手料理を前に理性と欲望の闘いを続けていると、リーダー格の豚が動き出した。
しゃがみこんだかと思えば、次の瞬間にはこちらへと跳躍していた。
そのまま両手で斧を振りかぶる。着地と同時に叩きつける算段だろう。
でかい図体であんなに高く飛ぶなんて、意外と厄介な相手かもしれないな。
威力はあるのだろうが、あんな大振りを受け止めてやる義理もない。
回避に集中する。
リーダー豚の大振りを冷静に避け、そのまま隙きだらけの体に向けて棍棒を振るう。
――つもりだったのが、斧が打ち付けられた衝撃で地面がズズンと揺れ動いた。
「おっと!?」
体勢を崩した俺のもとに、リーダー豚の斧が迫る。
かろうじて盾で攻撃を防ぐことができたものの、一発がとても重い。
盾を持つ腕が痺れ、全身の骨が軋んでいる気がする。
受けに回るのは良くないな。
「裁きの雷よ! 我が敵を穿け! 【電撃】!」
「フゴッ!?」
先輩からの援護魔法が命中する。
見た目の通りタフなのだろう、少し怯んだだけで効果は薄そうだ。
炎魔法にしなかったのは、俺が巻き込まれることを恐れてのことだろう。
この隙きを活かさなくては。
「乱れ斬り!」
リーダー豚は斧を器用に使って連撃をガードしていたが、すべての攻撃を防ぐことはできなかった。
棍棒の一撃が肘に命中し、骨を砕いた感触がする。
リーダー豚の右腕はダラリと垂れ下がった。
「フゴオオオ!」
リーダー豚は必死の形相で斧を振り回すが、これを盾で防ぐ。
片手になってしまえば先程までの重さは感じられない。
斧を盾でかち上げ、右側頭部目掛けてスキルを放った。
「【一閃】!」
スキルは命中し、リーダー豚の頭はひしゃげ、片目が飛び出す。
それでも抵抗しようと、フルフルと震える腕で斧を構えようとしている。
「火の矢よ、我が敵を穿け。 【火矢】!」
先輩の放った火の矢はリーダー豚の胴体に命中し、体を貫いた。
「フ……ゴ……」
たまらず倒れ込むリーダー豚。
立ち上がろうとするがその余力はないようで、そのまま動かなくなった。
「「「フゴッ」」」
リーダーが倒されたためだろう。
少女を囲んでいた豚達は一目散に逃げ出した。
「ありがとうございました。私だけではオーク達に連れ去られてしまっていたでしょう」
ホッとした様子の少女が笑顔でこちらへと歩いてくる。
華奢な腕にバスケットを持ち、その中には山菜のようなものが入っていた。
「私はエストといいます。貴方達は人間……のようですね。お名前を聞かせてもらえませんか」
「私はマリナっ! こっちはタツヤよっ!」
先輩の紹介にあわせて礼をする。
「マリナさんにタツヤさんですね、よろしくお願いします。病気の兄のために薬草を積んでいたのですが、運悪くオークの群れに囲まれてしまって。ぜひお礼がしたいのですが、私達の村へ招待させてもらえませんか」
「お言葉に甘えるわっ! 誰だって借りを作ったままじゃ気持ち悪いわよねっ」
私達の村だって!?
ダンジョンの中に村があるのだろうか。
それにあの長い耳だ。もしかして行き先はエルフの村か?
エルフの隠れ里なんてオタクとしてはワクワクが止まらない。
「エストさんはもしかして、エルフという種族なんですか?」
軽い気持ちで聞いてしまったのだが、エルフという単語を聞いたエストさんの瞳は大きく開かれた。
「私は、耳長族です……! 私の村では絶対にその単語を使わないで下さい」
「し、失礼しました。もう絶対に使いません」
さっきまでの和やかムードはどこへやら。何か地雷を踏んでしまった気がする。
先輩まで居心地が悪そうな顔をしているではないか。
「わかって頂ければ、大丈夫です」
そう言うと、エストさんは笑顔に戻った。
エルフは禁句、エルフは禁句。
肝に銘じておこう。
「では、着いて来てくださいね」
エストさんを先頭にして、森の奥へと歩いていく。




