第7話 合体ですよ
「ねえ拓海! この前『どっちも不合格』って怒られた金と銀のヴァルガイザーだけど……天界の技術部が『合体させれば文句ないだろ!』って、特別に緊急合体ギミックを追加入力してくれたのよ!」
ポンコツ女神が押入れから引きずり出してきたのは、神力によってまばゆい光を放つ金と銀のヴァルガイザー。
拓海が制止する間もなく、女神が「神聖合体!」と叫ぶと、2体のロボが空中へと浮き上がり、カチカチと音を立ててパーツが組み替わり始めた。
「待て! やめろ! ろくなジョイント設計もなしに勢いで合体させるな!!」
拓海の叫びも虚しく、まばゆい光とともに姿を現したのは——「巨大な人型ロボ」ではなく、どこをどう見ても「ただの金と銀がゴチャゴチャに絡み合った金属の塊」だった。
「……できたわ! 題して『黄金銀河神』よ! どう!?」
「……っ!!??!?」
拓海は胸をかきむしり、その場に崩れ落ちた。その顔は苦悶に歪み、まるで致命傷を負ったかのように喘いでいる。
「た、拓海!? どうしたの!? どこか痛いの!?」
「あ……あ……脚が……脚のパーツが……胸のど真ん中に……刺さっている……っ!!」
「えっ、あ、これ『胸部装甲』らしいわよ!?」
「嘘をつけぇぇぇ!! あれはただの腿パーツだろ! 向きを90度間違えて無理やり押し込んでるだけじゃないか! クリアランス(隙間)が死んでるんだよ!!」
拓海は床を転がりまわりながら、指を震わせて『合体ロボ』を指さした。
「見ろ……あの腕の長さを……! 肘関節の位置が低すぎて、直立すると手が膝を通り越して足首まで達している……! まるで手長猿だ……! プロポーションの黄金比が……崩壊している……っ!!」
「そ、そんなに酷い!? でもほら、背中には豪華な金の翼が——」
「あれは翼じゃない! ただの『裏返えしになった背負い物』だ!! 接続ピンが丸見えなんだよ! なんでモールド(ディテール)もない肉抜き穴が丸出しの面を正面に向けてるんだ!! デザイナーは正気か!? 上層部は現場の試作を確認しなかったのか!!」
「現場のせいにしないで! 上級神様たちが徹夜で作ったのよ!?」
「もっとタチが悪いわ!!」
拓海は胃を押さえ、うずくまったまま絶叫した。
「余ったパーツ(余剰パーツ)はどうした!? まさか……余ったパーツがないだと……!?」
「すごいでしょ! 完全合体だからパーツは一個も余ってないのよ!」
「だからこんな『無理やり全部詰め込みました』みたいなゴミ山になるんだよ!! 余剰パーツが出るくらいなら、差し替えパーツにして余剰を潔く割り切るか、専用のサポートメカに格納するのが男の美学だろうがぁぁぁ!!」
「変な美学を押し付けないでーーーっ!!」
あがあがと空気を求めながら、拓海は這うようにハンダごてと精密ニッパーへと手を伸ばした。
「……解体だ……。今すぐこの悪夢(造形崩壊)を解体する……! 企画段階から設計をやり直させてやる……!!」
「神様の合体メカを『悪夢』扱いしないでぇぇぇ!!」
深夜のワンルームに、立体物としての美しさを損なわれたオタクの悲痛な苦悶の叫びが響き渡るのであった。




