第二話 転生
選択の自由があるということは素晴らしい事だ。
『……生涯記録の集計が完了しました。』
『徳・業・人格傾向を算出します。』
青い結晶の内部で無数の光が高速で明滅する。
しばらくすると、目の前の空間へ半透明の青い画面が浮かび上がった。
《魂解析結果》
個体名:佐藤 俊夫
享年:86歳
徳:1,287,432
業:3,418
秩序属性
Law:68
Neutral:51
Chaos:28
人格傾向
探究性 95
規律性 60
社交性 48
共感性 78
精神安定性 89
『以上の結果を基に、転生可能な種族を表示します。』
画面が切り替わる。
《転生可能種族》
天使
天女
龍人
妖魔
妖精
妖鬼
妖鳥
霊鳥
鬼女
妖樹
聖獣
魔獣
夜魔
精霊
有翼人
獣人
魔人
人間
画面の一番下には赤い文字が表示されていた。
《徳・業値もしくはレベル不足により選択不可》
竜神
女神
熾天使
破壊神
魔神
邪神
死神
???
俊夫は画面を何度も見返した。
「……え?」
「ちょっと待て。」
「どういうことだ?」
「徳……百二十八万?」
思わず声が裏返る。
「いやいやいや。」
「俺は別に世界を救ったわけでもないし、国を救ったわけでもない。」
「ただ機械を直して、家族と暮らして、定年退職して……旅行して……普通に生きてきただけだぞ?」
青い結晶は何事もなかったかのように答える。
『徳ポイントは、生涯の善行・功績・他者への貢献・精神性・影響力など、多数の要素を総合的に評価した数値です。』
「総合評価って……。」
俊夫は頭を掻いた。
「……で。」
画面をもう一度眺める。
「人間が一番最後なのは何なんだ?」
「普通こういうのって、一番上じゃないのか?」
人間
・・・・
Unknown Error
『その質問には回答できません。』
「回答できない?」
『管理者権限が必要です。』
俊夫は眉をひそめる。
「管理者?」
『お答えできません。』
「……融通が利かないな。」
『仕様です。』
俊夫は思わず苦笑した。
「死んでもコンピューター相手か。」
「これ、他にも種族はいるのか?」
『存在します。』
「……そこそこ多いな?」
『表示文字数の制限により、一部のみ表示しております。』
「文字数? 何そのメタい理由。」
『仕様です。』
「まぁ、いいか。」
俊夫は一覧を眺める。
「例えば、この『天女』を選んだら?」
『天女種へ転生します。必要な徳ポイントを消費し、転生処理が開始されます。』
「なるほど。」
「種族ごとに能力も違うのか?」
『はい。』
青い結晶が淡々と説明を始める。
『例として龍人種は、非常に高い身体能力・知性・長寿・魔力適性を有します。また、高い保護能力と戦闘能力を兼ね備えています。』
『一方で、希少種であるため他種族から狙われやすく、精神傾向として傲慢性が現れやすい特徴があります。』
「長所だけじゃなく短所もあるのか。」
『全種族にはメリットとデメリットが存在します。』
「なるほどな。」
「じゃあ、種族固有の能力とかも?」
『ございます。』
『天族は飛行能力を有しています。』
『精霊種は自然魔法への高い適性があります。』
『龍人種は竜化が可能です。』
『鬼族は高い再生能力を持ちます。』
「なるほど。」
「ファンタジー作品やゲームに出てくる種族の特徴と、大体同じって認識でいいんだな。」
『概ね、その認識で問題ありません。』
俊夫は腕を組み、一覧をもう一度見渡す。
「さて……。」
「一瞬だけ"Unknown"って表示されたのが気になるが……。」
「いや、ここは――」
「天女になって、美少女ライフを満喫するという選択肢も……フヒヒ。」
『…………』
数秒の沈黙。
『不適切な妄想を確認しました。』
「監視してるのかよ!」
『思考補助インターフェースに接続しております。』
「プライバシーって知ってる?」
『知りません。』
俊夫は大きくため息をついた。
すると再び青い画面が切り替わる。
《追加設定》
『種族選択後、固有スキルを選択できます。』
『種族固有スキルはSPポイントを消費して取得します。』
『なお、高位スキルを取得した場合でも、必要レベルに到達するまでは使用できません。』
『スキル取得に伴い、対応するポイントが消費されます。』
「なるほど。」
「スキルだけ先に買っておいても、レベルが足りなきゃ使えないってことか。」
『その認識で正解です。』
「……ますますゲームっぽいな。」
『それでは――』
『転生する種族を選択してください。』
俊夫は腕を組み、一覧を見つめる。
「天使か……。」
「龍人も強そうだな。」
「やっぱ天女なんてわがままボディに決まってるだろ。」
どれも魅力的だった。
普通なら迷わず選ぶだろう。
しかし、俊夫は画面から目を離さなかった。
「なぁ。」
『はい。』
「種族って、生まれ変わった後でも変えられるのか?」
『レベル・職業・条件を満たした場合、上位種への進化、あるいはクラスチェンジは可能です。』
「つまり最初に選んだ種族が一生固定って訳じゃないんだな。」
『その認識で問題ありません。』
俊夫は顎に手を当てる。
「じゃあ逆に聞く。」
「人間にしか出来ない事はあるのか?」
数秒の沈黙。
『……』
『検索しています。』
『回答権限を確認しています。』
『ERROR』
『管理者不在。』
『情報の一部が欠損しています。』
『回答できません。』
俊夫は思わず笑った。
「またそれか。」
「でも、その反応で十分だ。」
『……?』
「もし本当に人間が何の取り柄もない種族なら、『ありません』って即答できるはずだ。」
「答えられないってことは、人間には何か秘密がある。」
結晶は沈黙した。
「それにさ。」
俊夫は一覧を見渡す。
「天使も龍人も、聖獣も最初から完成形に近い。」
「俺は機械屋だった。」
「完成品より、伸び代がある素材の方が好きなんだ。」
『……』
「強い部品を組み合わせるだけなら誰でもできる。」
「でも、一から調整して育てる方が面白い。」
俊夫は迷いなく画面へ手を伸ばした。
「決めた。」
『選択を確認します。』
『種族――』
『人間』
『本当によろしいですか?』
「うん。」
「八十六年間、人間として生きてきた。」
「次も人間でいい。」
「いや――」
俊夫は少し笑って言った。
「だがそれがいい。」
『……選択を受理しました。』
その瞬間。
画面が一瞬だけ乱れる。
人間
↓
Unknown
↓
人間
『……種族選択完了。』
『人間への転生を開始します。』
俊夫は、その一瞬の表示に気付かなかった。
しかし、どこか遠くで誰かが呟く声だけが聞こえた。
【ようやく、選んだか。】
※世界設定メモ
下位種族と上位種族があります。基本的には最上位クラスは神になります。
また、性格システムにより職業が変化します。
一般的なRPGのアライメントに加え、社交性・思考傾向を別軸にすることで、性格を立体的に表現できます。
↓※一例です。
Law 規律
聖騎士
Law 社交性
裁判官
Law 共感性
セラピスト
Neutral 規律性
軍人
Neutral 社交性
バーテンダー
Neutral 共感性
研究者
Chaos 探求性
海賊
Chaos 規律性
革命家
Chaos社交性
ギャンブラー
Chaos 共感性
教祖




