第一話 転生管理局
天国でも地獄でもない。この世界の死後の世界。
意識がゆっくりと浮かび上がる。
「……ここは?」
佐藤俊夫は重い瞼を開いた。
最初に目に飛び込んできたのは、見渡す限り銀色の世界だった。
床も、壁も、天井も、鈍く光を反射する金属で覆われている。
まるで巨大な工場。
いや、それ以上に精密な何か。
壁一面には太いものから細いものまで、無数の金属製パイプが張り巡らされ、青白い光が脈動するように流れていた。
その光はまるで血管のように施設全体を巡っている。
機械エンジニアとして四十年以上働いてきた俊夫ですら、これほど巨大で複雑な設備は見たことがない。
「プラント……いや、違う。」
配管には継ぎ目がない。
溶接跡もない。
金属であるはずなのに、まるで生き物のようだった。
ー静寂。
機械音すら聞こえない。
だが確かに、この施設は動いている。
俊夫が周囲を見回すと、部屋の中央に一つだけ異質なものがあった。
高さおよそ一メートル。
人の胴ほどもある、透き通った青い結晶。
深い海のような青。
その内部では星空のような無数の光がゆっくりと揺らめいていた。
あまりの美しさに、思わず見入る。
すると――
『個体識別番号 JP-1940-XXXXXX』
『佐藤俊夫』
『享年 八十六歳』
『魂の回収を確認しました。』
機械とも男とも女とも判別できない、感情を持たない声が空間に響いた。
俊夫は眉をひそめる。
「……夢か?」
『夢ではありません。』
「じゃあ……死んだのか。」
『はい。』
『あなたは死亡しています。』
妙にあっさり認められた。
俊夫は少し考え、
「なるほど。」
とだけ呟く。
八十六年も生きたのだ。
驚きよりも納得の方が大きかった。
「それで、ここは天国か?」
数秒の沈黙。
そして青い結晶は淡々と答える。
『いいえ。』
『ここは――』
『六界魂管理局・転生管理部 転生室』
『通称、転生管理局です。』
俊夫は思わず苦笑した。
「死んでも役所があるのか……。」
その瞬間。
結晶の表面に無数の文字が流れ始める。
『個体認証完了』
『生涯記録読込開始』
『徳ポイント算出中』
『業ポイント算出中』
『人格傾向解析中』
『転生適性判定中』
そして部屋全体が青白く輝き始めた――。
※世界設定メモ
この世界の死後、魂は転生管理局に移送されます。例外も有りますが基本的にはそのようです。




