合法ロリの困った姉貴 異世界転移なのです!!前編
夜更けの静かな部屋には、キーボードを叩くタイピングの音が小さく響いている。
提出期限を間近に控えた俺は、レポートを貫徹でまとめようとしてるのだが、既に挫け掛かっていた。
姉貴とレイナちゃんは、今晩は早々に床に付ついているので、今頃は夢の中だろう。
う〜〜ん、物音のしない静かな部屋でパソコンの稼動音だけを聴いていると、不思議とその音に催眠効果があるのか、段々と目蓋が重くなってくる。
……………無理です、諦めました。 不可抗力の力に逆らうのは摂理に反します。
パソコンの稼動音には、睡眠導入の効果がある事を確認し、眠るべくベッドに潜り込んだ。
アレッ!? 顔に雨が当たっている。
なんで、パジャマのまま屋外にいるんだ?
霞んだモヤが晴れて行く様に、意識が覚醒していく。
「………………………………………エッ!!!」
目の前には、信じられない光景が広がっていた。
森に囲まれた、僅かな平地には火事で屋根が焼け落ちたのか、レンガ壁だけが取り残されてる家屋がポツンとあり、その周囲には夥しい数の死体が草むらにばら撒かれていた。
雨が降ってる地面の所々にある水溜りは、血で真っ赤に染まり、あちらこちらから呻き声と泣き叫ぶ声が聴こえてくる。
恐怖に胸が締め上げられる。此処はドコだ?………俺って誰なんだ?
混乱している俺の目の前で、腹に剣が突き刺さったままの化物が倒れ蠢いている。逃げ出そうとしているのか、血を流し続けているソレは、必死に泥の中を這いずり、目で追っている僅かな間に動かなくなった。
現実? 違う!!!夢だ!!
そう信じたかったが、五感から流れ込んでくる情報は余りにも生々しく、吐き気を抑え切れない程にリアルだ。
粗末な服に身を包み、ひと目で粗悪品だろうと解る武器を持った人間と、武装したオーガにオーク、ゴブリン、ドワーフなどの化け物全てが、死んだ者は静かに血を流し倒れ、大怪我を負ってる者は、のたうち回りながら叫び声を上げ血を流している。
「ハァ、ハァ、ハァ、 冗談だろう?」
呼吸が速くなり、血の気が下がって貧血で倒れそうだ。
一陣の血なまぐさい風が頬を撫でた時、ソイツは俺の目の前で立ち上がった。
ドワーフ?
怪我を負っているのか、よろめきながら巨大な斧を構え 殺意を纏った目で睨んでくる。
ソイツの片手の指は殆んど欠損しており、そこから流れ出した血が脚元の水に溶け、赤い水溜りを作っていた。
俺を殺したいのか? 訳が分からない。…………ただ、このまま立ってるだけじゃあ、確実に不味い事になる。
帰らないと……………………。
ん?今、何が思い浮かんだんだ?帰るって何処へ…。
血を流してるドワーフが、脚を引きずらせ近付いてくる。
生きて帰るんだ!!殺せ!邪魔する者は排除するんだ!
「………………殺せって?………ど、どうしよう」
俺は、訳の分からない焦燥感に駆られ、地面に落ち泥に 汚れている、粗悪な鋳鉄製のショートソードを拾いあげた。
利き手で剣の柄を持ち、逆手で鍔を押さえ腰溜めに構える。
剣なんか握ったコトは無いので、全くの出鱈目だ。
直感で斬撃よりも刺突の方が生き残れる可能性が高いと 感じられたからだ。
表情までハッキリ判る距離まで近付いたドワーフは、長い髭を泥で汚し、太い眉毛の下にある瞳には、何故か憎しみの中に哀しさを湛ている様な気がする。
雨に濡れた髪の毛から、水が滴り目の中に入る。全身の 力を抜き、相手との間合いだけに集中し息を整え待つ。
ドワーフが、一刀足の間合いに入った。
剣先を相手に向け、飛び込む様に間合いを詰める。地面の水が脚元で跳ね上がった。
太い腕に掴まれた斧が、上段から振り下ろされたのが、 刹那の瞬間に感じられる。
先に突き刺さった剣により、相手の斧は軌道をずらされ、身体ギリギリを掠め、地面を穿つ。
ドワーフの懐に入ってる俺の剣は、刀身の3分の2程が 相手に埋め込まれ、溝落ちから背中に向け突き抜けていた。
最後の足掻きなのか、斧を離した手で首を締めてくる。
俺は剣を突き入れた、そのままの姿勢で、柄を中心に鍔を90度捻った。
身体の中を掻き回され、力が抜けたドワーフの瞳には、もう憎しみは感じられず哀しみがあるだけだった。
寄り掛かる様に身体を預けて来るドワーフと間近で見つめ合う。雑念が消えた目は、幼子に戻ったように無垢で力無く涙を流している。
この、何かを諦めなければならない目を見て理解する。
コイツにも帰りたい場所が有り、待っててくれる者が居るのだ。
もう、2度と会えない。それが悲しく泣いているのだろう。
力なく崩れ落ちたドワーフは、静かに息を引き取った。
仕方がない!仕方がないんだよ!!!
俺にも、待っててくれる人が居るんだ!!
「レイナちゃん………………?」
そうだ!思い出した!!俺は村人で、小さな寒村の外れに僅かな畑と、慎ましやかな家を持っている。ソコで帰りを待つててくれている女の子の名は玲奈だ!!
…………何故、忘れていたのだろう?
自分の装備を確認する。麻布の粗末な服装と使い潰される寸前の皮靴。革製の防具と粗末なショートソード。後、玲奈から戦場に向う時に贈られたカメオブローチは大切なのでポケットに入れられている。
森の向こうから、剣戟の音と鬨の声が微かに聴こえてくる。戦場が移動しているのだ。
早く戦場に戻らないと…………。ん? 何故、戦わなければならない?
そうだ!!玲奈を守る為に、戦場に来たんだ!!
つづく




