7節(完節) 消える本と最後の結末
目の前に大量の本がある。どうやら図書館に戻ってきたようである。自分は本の前で意識を失っていたようだ。私は自分の服を見ると、その服は最初にあの本を手にした時と何も変わってなかった。
目の前にある本を手に取る。
『消える本と最後の結末』
私がかつてここから取り出してあの世界へ行くために持っていた文庫本と同じだった。
作者名はない。
今まで私がやってきたことがそのまま記されていた。
あの後のことについて読んだ。
主人公だとされる私は君と呼ばれていた。
『あの後、君は勝ったんだ。色々と話す前にミルキーウェイたちのバトル前あたりから説明しよう。
まず、お前に命令していたボス・コックリを率いる『FK』と私が率いる『CW』との対立があったことを知らされたであろう。
あいつらは今の世界を作ることを目的とすること。つまり君がいた元の世界に帰れることを目的としていた。だが、私のいる本を壊せば帰れるという噂がたってたらしいけどな。そんなことは不可能なんだけどな。逆に俺たちはあの世界で何度も繰り返し生きようとすることを目的としてたんだよ。まっ、クローバーという能力を持つ者のおかげではあるがね。
さっき肉を落としてクローバーが使用した技名である『地愚葉食』……ってこんなゆったり話してる暇はないな。技名と使用者のタイプは以下にまとめたから見よ。
【クローバー、葉タイプ。
地愚葉食漢字なし……口の形をした肉食葉っぱ。恐ろしや。
クローバーエンド……精神統一などの効果を終える。逆にクローバースタートで開始。
十一月二十三日之儚沙……クローバーの希望と絶望が同時に重なった時の思いが儚さであり、必ずそれがこの日であることを思って口に出して使用できた技名。事実上、彼女はこの技により君を庇って敵と共に自滅した。
次は眼鏡野郎か。
止刑死刑……二つの十字架が交差して相手に向かう。交差してるドクロの目から逃げることはなかなか不可能。
止気破魚釣解き放つ……大きな魚を地面から浮き上げて敵を食わせる。
無範能無反応……今起きてる自分が感じた変なことを無効化させる。
時黒羽管利曲時空間管理局……黒い配管に羽が生えて飛んでくる。邪魔だな』
その後もあの時使用した技名が次から次へと書かれていた。しかし私にとってはもうその情報は必要なかった。なので流し読みでざっと見ていった。この本の紙に何を書いてもそれは反映されなかった。
『ナチュラルディサスター(天変地異)……禍々しいオーラを持ち、神に近い人を斬り殺したという伝説を持つ黒い剣による攻撃。
デスワールド(終焉世界)……神を殺したとされる黒い剣の技。上のとこれに関してはこれ以上詳しい話は禁じられている。それほどの伝説の剣】
これで技名に関しては以上だ。まぁ、流し読みでもいい。なぜなら、もう関係なくなるからなぁ。さて、次は最後の戦いだ。ついにお前に命令していたボス・コックリを率いる『FK』と私が率いる『CW』がぶつかり合う。まぁ、俺が誘い込んだからでもあるがな。そして最後の状況を説明する前に技の説明をすべて書いて置くことにしよう。ただ、俺にも限界が来ている。お前が書こうとしてるのに書けないのもそのせいだ。お前が初めて使用した技名から書くことにする。ぶはっ。
ニセモノと君との戦い時。
無迂流蛾射……前にも書いたが、蛾を無数に飛ばす攻撃技。
絶対絶命……黒いモヤを出し、それに触れた者は必ず命を絶つ。
無火突苦……黒い火の矢が相手に向かって飛ぶ。火か氷もしくは天じゃないと防げない。
無駄遣無駄使い……相手が攻撃してきた場合のみ対応して攻撃を相手に与える。
絶対的心理…… 審判によって不利な相手を殺すことが可能な最後の技。自分に食らうデメリットもある。また、相手がその直前に使用した技は利用不可能になる。もし使用したら生き残れた相手もその瞬間、即死する。今回の場合、君の技が攻撃だと思って判断してた場合、君のニセモノに攻撃は当然あたる。しかし前述の無駄遣は彼が攻撃しないと君には攻撃出来ない。だが、攻撃したら彼に攻撃は帰ってくる。そう考えた時、不利にいるのはニセモノの君だったという訳でこのような結果となったのだ。
ぶはっ。俺らとの戦いの時だ。大臣は雷で俺は天だ。
威雷羅……雷でできた大きな弓矢を放つ。術者によっては地球一個分に値するほどの大きさになることもある。
火眼花彼岸花……花が開くように火が広がる。
天鳥店長……上から光が鳥のように包み込む。
凍風東風……風が広がるように相手を凍らせる。
雷月来月……月のようにまぶしい光を空に映った瞬間、そこから雷が出る。
そして君にあえて言わなかった絶望的な技だ。この上の火眼花から雷月の四つの技名の中からそれぞれ一字を取り除いて組み重なった技だ。我々はすでに打ち合わせ済みだったんだよ。そう、それが下の【花鳥風月】だ。
花鳥風月……前述の四つの技が合体して白い光を出して術者たち以外は滅ぶ。我ながらとんでもない技。
しかし今回は違った。これで終わりかと思ったが、君には参ったよ。
これを我々が使用した時だった。
君は偽物たちの前に立って無意識にこう言い放った。
「無我夢中」
無我夢中……無我を使用しながらも使用者以外を消滅させる技。いわゆる全滅させる技。
そして俺らのいた世界は消滅した。
まるで君が持っている本のように。
これだけは言っておく。
楽しかった。ありがとう』
こうして自分が持っていた本が消滅した。私はその場から離れた。
家の方の最寄り駅に着くと、改札口でメアちゃんのような姿を機械を挟んですれ違った。その近くにはセロリアさんらしき人がいた。私が振り返って彼女たちを呼ぼうとした時、そのセロリアさんらしき人物は彼女に言う。
「メルリア、はぐれないでよ?」
「うん、分かった。セロ姉」
彼女たちはそう言ってホームへの階段を駆け上がっていった。
「たとえあなたの認識がなくても私はまたあなたと会えるまでさよなら……か」
メアちゃんの最後の一言をぽつりと言ってから私はその場を離れた。そして家に向かった。消え去ってしまった男女の親がいつものように生活をしていた。そして私を見るなり、「おかえり」と言うので「ただいま」と言った。
その後は本のように戦うことはなかった。
会った時は違和感を感じたが、図書館にいた人たちも親友もみんな平気だった。
大臣も平気だ。
戦争はやはりやらないことになっている。
あの世界に入る前のままだ。つまり何も変わってない。ただ時間的には入る前のその直後から流れているようではあるが。
後日、消滅した本のことをノートに書いて机の引き出しに閉まった。
あの後、また例の本が出現したかは分からない。
ただ二度と争いが起きないことを私は祈るだけであった。
=完=
今まで閲覧などありがとうございました。これにてこの作品は完結となります。評価などは引き続き募集中です。これからも何卒よろしくお願いします。




