5節 無と絶
目の前にいる瓜一つの私は含み笑いをしてから私に声をぶっかける。
「震えたその体で何も出来やしねぇ。お前は恐れているからなぁ。そうだろ、廃棄原型よ」
私は心の中で彼に言われた言葉を自分の胸に問う。
(今の恐れとは何だ。メアちゃんたちが消えたことの恐れ?クローバーさんの繰り返すというあの恐れ?こいつらに負けるという恐れ?いいや、全てだ。だが、俺はこれらの恐れを打ち勝つために今、ここに立ってるんじゃないのか?みんなの思いを代表として。だったら震えるな。相手をしっかり見ろ。そして……)
「楽にしてやるよ、絶対絶命」
「楽だと?笑わせるな。お前が俺に似てるからか分からないが、さっきから無火突苦んだよ」
「ちっ、マスターめ。余計なことを教えたな」
黒い煙となったモヤに対して消すかのように黒い火の矢が放たれる。
「今ので三つほど分かったことがある。一つはお前は絶を入れながら使うこと。二つ目はお前の姿は俺自身だが、これまでの知識などは共有されてないこと。最後の一つは戦う思いが俺よりも低いってことかな?」
「おい、原型だからって調子に乗るな。いいだろ、俺はお前を超える。それで問題は……」
「大ありだからお前を殺すんだろ?無駄遣!!」
「させるかよ、絶対的心理」
そう言った彼の体はみるみる薄くなって行く。
「ちっ、俺の負けか。なら、教えといてやる。その技は今のでもう使えない。そしてお前が危機になったら親に頼れ。じゃあ……な……」
消えてしまった。
(親に頼れか。お前は消えてなどいねぇ。俺のここにいる。いや、今まであった全ての人もだ)
私は心臓のある胸にそっと右手を置く。そして鋭い目付きで残りの四名に向き合う。私である彼の放った言葉が目のあたりになることは間もなくであった。そしてそれと同時に最後の決戦になることを示していた。




