4節 マスターとニセモノ
黒いマントを靡かせた男は私に向かって話しかけてきた。その側には本と出会った時のあの図書の男女二人がいる。火と氷だったか?どうせ戦う相手だ。そんなもん、どうでもいい。
「君はこのまま世界が滅ぶのを見届けたいか?」
「見たくはない」
「そうか。……なら俺と戦え」
「元からそのつもりだが、和解とかせずそうするのはなぜだ?俺がボスたちと付いたからか?」
「いいや、元からお前がそっち側に付くのは知っていた。そして和解はしねぇ。なぜなら、君は見たくなくとも俺は見たい。世界が荒れ狂う姿を。ただそれだけだ」
「今……なんて言った」
「だからこの世界の荒れ狂う姿を見てやりてえって言ったんだ。お前の無我という無意識の殺戮兵器を使ってな?」
「無意識に仲間のことを気にせずに戦わせてくれるのはありがたいが、お前のためじゃねえ」
「無意識にさせるとはいったが救うとは言ってない。君の無意識でこの世を狂わす……なぜなら俺がこの世界を作ったボス……いや、神だからだ。神に従うのがその下の役目だろう?」
「黙れ。俺はお前を神と認めたわけじゃねえ。……なるほど。だからすべてを変えるという意味か」
出口を探そうと周りを見る。
やはり何もない。あればみんなを救えると考えたが、それも今は無駄だろう。
「意味ない行動。俺を殺せば元に戻れる」
「元とはどういう意味だ」
「お前が筆術について知らなかった頃の世界へ」
「それは父さんたちもみんな生きている世界か」
「ああ、そうだ」
自分の前にどこにいたのか分からないが、いつの間にかもう一人男が現れる。自分とそっくりの男。その男を見て私は思った。メアちゃんたちも偽物ではあることを。それでもオリジナルの私のために今も戦っているということを。
「よう、もう一人の自分よ」
「偽物が……」
「マスター。俺が本物の俺を殺してもいいよな」
「ああ。構わない」
黒マントが少し遠ざかる。
「さあ、はじめようか」
「邪魔だ。どけ」
「ふうん。死ねって言われたら君は死ぬ。死なないよね。だからどかない」
彼の言葉を受けて私は次のように思った。
(私がここで死ねばもう一人の俺と黒いマントが世界を支配する。そしてまたクローバーさんの力で繰り返される。何としてでもいいから止めなくてはならない。このエンドレスの苦しみから)
その時だった。赤い髪の毛が私の目の前で散った。私は上を見ると、光の塵が綺麗に輝いていた。
「うそ……だろ?」
私はその言葉を思わず口にした。
「マスターのおっさん、こいつらの仲間と他の奴らは虚しく死んだぜ?」と眼鏡の真ん中を人差し指で押さえながら言う。
「ご苦労だった。残る相手は彼だけだな?」
「えぇ。あっ、そうだ。奥にいる方の海塚……メアって言う奴から伝言だ。”たとえあなたの認識がなくても私はまたあなたと会えるまでさよなら”だって。ぷっー、死亡グラフにはちょうどいいなぁ?」
私は拳を握り締めて力強く人差し指を突き上げる。
「無迂流蛾射……」
眼鏡野郎に向かって無数の蛾が飛び交う。
「おいおい、お前の相手は俺だよ。毒絶……」
蛾は黒い鞭のような先の尖ったものに刺されて消されていく。まるで意味のない攻撃と言わんばかりだった。
(もっといい技を……思い浮かべなくては)
「なんだ。もっと攻撃してこないのか。それもそうだよな?あ前の技はほぼ防御系か回復系のどちらかだもんな」
(攻撃力のある高い技名を出さなくては。これではまた繰り返されるに決まっている。何か出ろよ。俺の脳内!!そして震えるなよ、右手!!)
こうして私はもう一人の自分との戦いを始めるのだった。そしてその側にいる四人の相手もせねばならなかった。いや、それだけではない。今は眼鏡野郎の筆術で止められているであろう無数の敵たちも相手にしなくちゃならないのだ。
ここにてお礼を書かせてもらいます。お立ち寄り及び評価などありがとうございます。もうちょっとで完結となりますが、最後まで付き合って頂ければ幸いです。




