1節 届かぬ手と復活者たち
私の耳から一瞬だけ金属音が伝わる。私は目を開けた。いつの間にか立たされた私の体を囲むかのように黒い鉄越しの柵が目の前にあった。そして私を引き繋ぐ小さな手の先にはメアちゃんがいた。私の立っているところには床も天井も黒い板が私を挟んでいた。いわゆる黒い檻のようだった。そんな私とは真逆に彼女たちの立つ場所は開放的だった。何もない空間で真っ白い世界そのものだった。
「ほう。これがあの本の中か。お前ら、いつまで手を繋いでる?」
ボスの一声に徐々に離されていく手。そんな手の中でメアちゃんだけは私の手を離さなかった。
「ふはははは。こりゃあ、久しいなぁ。なぁ、てめーらよ?」
私はその声に聞き覚えがあった。眼鏡野郎だ。奴が少し先に私たちを見て言っている。いや、それだけではない。あの図書の男女も神々三体も。あの黄金の校長。黄金の時に戦った人たちや親友。私が戦ったこともない人たちもいる。それだけではない、クローバーさんやあの野球バットを持ってた弟、神たちとともに戦っていた仲間たちもいる。
「あーぁ、またウザさに汚れたお姉ちゃんを見てしまった」とあの弟はその姉に向かって言う。
姉は言葉にならない声を出している。確かに精神的に辛いことだろう。しかしボスの一言で彼女は我に帰る。
「目の前にいるのは一人の人間だと思え。例えそれが知っている野郎だとしても。なぜなら、俺らはこいつらがいる場所を知っている。なぁ、そうだろ?クローバー!!」
彼もまた苦しんでいるのだ。この間までいた仲間たちが敵になるのだから。だからこそ本当のボスとして敵である以上、仲間たちに躊躇を与えないのだろう。
「それぞれ戦え!!そして必ず終わらせるぞ、こんな世界!!」
「ふっ、相変わらず口だけは達者だな。ボス野郎!!」
上から私の聞き覚えがある声が聞こえた。剣を手に入れた時のあの男の声だ。閉じ込められた檻の中で私は虚しくそれを見るしか今はなかった。




