3節 虚しく散る斧
私たちは建物の階段の前で仁王立ちしている男に足止めをくらっている。彼は斧を手にしてる。短髪でジャージにジーパンだ。
「メアちゃん、こいつ。恐らく『斧』を用いて筆術使用してくる。気を付けて」
「お兄さん、その考えはかなり甘いです。筆術をなめ腐ってます」
私たちを見るなりに頷く。そして言う。
「俺は八番目の斧寺誠。ついでに言うが斧は違う読み方もできる。斧羽迅、そして斧回」
彼の言葉で斧は回転しながら私の方に勢いよく飛んで来る。
「無理難題変換」
斧は彼の方に飛んでいく。彼は斧を横に動いて交わした。
「あいつ、なんか変なこと教えたな。どうせ、お前ら、あいつに強くなるのは文字数が多いとか言われたんだろ?おのれ……あっ?何待ち構えている?」
彼は私たちが構える格好をしているのを見てにこやかに声を上げて笑う。
「そうかそうか。お前ら、"おのれ"という言葉に反応したのか。"れ"という漢字はないから心配するな」
私は彼の話の間中、メアちゃんにあることをひそひそ声で指示する。
「は?俺はなぜお前ら敵なんかに教えてるんだ?まぁ、いいか。殺せばいいんだからよ。」
「斧羽迅、そして斧回」
また斧が回転しながら私をめがけて飛んでくる。
「無理難題変換」
「同じ技なんかしてくるなよ?……なっ!!」
彼の後ろで私が指示したのを答えてくれたようにメアちゃんがパンダのぬいぐるみを彼の後ろに配置し両手両足を動けないように掴んでいた。彼の心臓辺りに見事に斧が刺さる。返り血がこちらに飛んできそうな勢いでその場に崩れ落ちた。彼もまたその場で光となり消えた。
「同じ技を使ったお前にだけには言われたくなかった。それがお前の敗因だ、いないけど。ん?メアちゃん、どうした?」
「私も死ぬ時は血を流してあんな感じに消えるのでしょうか?あなたに殺されて……」
私は家で槍と戦った時の"無我"を思い出す。よく考えたらメアちゃんを手にかけることもありえるのだ。
メアちゃんは我に戻り、私に声をかける。
「あっ、今のは忘れて下さい。それよりも今は櫻木さんを助けないとです」
メアちゃんは階段を見つけて指を指す。
「あぁ、そうだね。行こう」
私はそう返答し、その階段をメアちゃんと共に私が先頭で上っていく。普通の鉄ハシゴの階段だ。ほんの少しの間だけ私は自分の右手を握り締めた。




