2節 布と布が絡んでいくとロープになる
サングラスの男性はまた何か仕掛けようとしていた。
「布着」
私とメアちゃんの体に地面から伸びてきたタオルが勢いよく私たちに襲い掛かろうとしていた。
「無攻」
タオルは消えることなく私たちに向かって飛んでくる。
「なんで?」
「危ない」
私の前に立ってピンクの傘を目の前の多雨に向かって広げる。私たちはその傘のおかげで何とか防げたようだ。傘も穴など開いていない。
「ふむ。口だけではなく、骨がある奴らだな。俺は布山辰三。十武人の九番目の男だ。ちなみにお前らのところに行ったのは十番目の槍だ。つまりあいつより俺は強い、ということは数字が減れば減るほど強者揃いだ。合いたくねえなら、逃げてもいいんだぜ?あの女がどうなるかは別だがよぅ?」
「誰が逃げるって言ったか?」
「兄さんの言う通りです」
「そりゃあ、よかった。大人しくここで死んでおけ」
サングラスの男はタオルを右手で持ちながら「布身斬利」と指で漢字を書きながら叫ぶ。手に持っていた彼のタオルが硬直している。
「布迂摩」
彼がタオルを振ると、白い線がこちらに向かって飛んでくる。
「無理難題変換」
私の筆術で彼の方にそれらが飛んでいく。
「布自身」
砂埃に黒いシルエットが二つそこに出たかと思うと、片方は消え去った。そしてその正体は彼が作り出した風によって姿を現した。そこにあったのはどこからでてきたのかは分からないタオルや服などだった。メアちゃんは男の下着を見つけるなり、目を泳がせていた。
「お前ら、筆術ってどうやれば強くなるか知ってるか?読みに合わせた漢字をより長く言えば強くなるんだよ。こんなふうにな。布迂凛花斬引螺囲」
タオルやそこら辺にあった布、地面から湧いてきたハンカチなどが私たちを囲みながら包もうとしている。まるで花を咲かせるつぼみを中から見ているような感じである。ただし真上は開いている。なるほど、私たちを閉じ込めて中で斬るという戦法だろう。
「無害一致……ダメか。すぐに出るかよ」
「妖虫囲軌剣陣物止雨雷」
メアちゃんはそう言い、いつもよりも長く指で漢字を一つ一つ書く。私たちの周りに羽の生えた剣が飛び回る。そして私たちを囲んでいた布を全て切り裂いた。
「ありがとう、メアちゃん。無迂流蛾射」
サングラスの男に向かって無数の蛾が飛んでいく。無数に集まっているので大きな蛾のように見える。そのまま蛾は彼に直撃し、彼はサングラスを頭から離れて真上に飛ばしてその場に崩れ落ちた。蛾は空に飛ぶなり、白い光を散らかせて消滅した。
「暗い視界で見てるなよ。ちゃんと見えないじゃないか。お前の目を」
私はサングラスから外れたその男のたくましい目が瞼に閉ざされているのを見ながらそう言った。彼は地面に静かに落ち去ったサングラスとともに光となって消え去った。
私はメアちゃんを引き連れて建物に入って行った。




