1節 仕掛けられた開戦
私たちがしばらく歩いていると、鉄パイプで組み込まれた建物に来ていた。
「よう、さくらぎぃ」
サングラスを付けた黒ジャージ姿の男がこちらを見て話しかけてくる。手にはタオルを持っている。その時だった。急に銃声と共に私の周りに煙がはばかる。
「煙幕か。二人とも気を付けろ」と私は叫ぶ。
「布着と布樹上蛾利」
「きゃあ!!」
私たちを案内してくれた櫻木さんの悲鳴が聞こえる。
「櫻木さん!!」
「何これ。動けない」
メアちゃんの声が聞こえる。私も動けなかった。何かに縛りあげられているようなそんな感じである。
「じゃあ、見せてやるよ?お前らの今の状況をなぁ?暴布浮」
急に風が吹き上がる。煙が消え去った。私は地面から生えたタオルに体を縛り上げられていた。その隣でメアちゃんも同じように捕まっていた。
「無様だな」
私たちの前にタオルを回転し終えて下に垂らした状態のさきほどの黒いサングラスの男がそこにいた。
周りに櫻木さんの姿はない。
「彼女を探してるのか?探し物なら上だ」
彼が言う上を見てみると、一番上の階で今にも落ちそうな足場で彼女は両手両足にタオルを縛られて首を坊主頭の男に掴まれていた。その男の背中には何かがあるが、ここからでは見えなかった。ただそこから発される禍々しい何かが私の体を怖ばせる。その隣に棒を持つ男と大きな刀を持つ男がこちらを見下す。その二つの武器はやはり彼女の首に向けられていた。
「この女を助けたいなら上に来い。まぁ、上に来れればの話だがな。お前ら、そいつらを任した。お前らにいいこと言ってやる。俺らはあの槍と十人で構成されている。つまりここには九人敵がいるってことだ。ふっ、グーの音も出ねえよな。所詮二人だもんな」
「……それがどうした!!てめーらなんか俺が全部潰して上に上がってやる。それまで大人しくそこで景色でも眺めていやがれ!!」
「くっくっくっ。おもしれぇ奴で良かった。そうじゃねえと後が楽しくないからなぁ。行くぞ、お前ら」
三人は建物の中に入っていく。
「お兄さん、姉さんもジョルダーさんも来ないよ。連絡を取ったけど、別件で来れないらしい」
「メアちゃん、君だけでも逃げていい。無就成」
私たちを縛り上げていたタオルが取れる。そのタオルは地面に落ちて行く。
「何を言ってんですか、お兄さん。私も戦いに来たのです」
サングラスの男はこちらをじっと見つめる。
「なら、共に上を目指すだけだ」
「もちろん、承知です。でも、その前に……」
彼女はピンク色の傘でサングラスの男を指差して言う。
「この視界が黒い人を倒さないとですね。上を目指すと他にもいるでしょう。でも私たちなら……」
「可能性はゼロではない」
「ですね」
サングラスの男はにやっと笑い、「遊び甲斐がありそうだ」と呟く。
こうして十武人との本当の戦いが始まるのだった。




