5節 壊された扉
彼女はメアを引き連れてその場に現れた。どうやら、服を着ているようだ。それも母親の私服を。
「なぜ、私にこのような服を着させる?」
「うーんとね、防衛のためかな?」
前を向いている彼女に気付かれないように私に向かって口元に人差し指を立てながら
メアちゃんはそう答える。
私は体を起こした。
「大丈夫か?」とその女性は言う。
「えぇ、あなたの手当てのおかげでなんとか」
「いや、君の回復力が早かった。君は一体何者なんだ?そうだ、相手の名前を名乗らせるよりも先に自分の名前を名乗れだな。十武人の一人、双剣使い櫻木花蓮だ」
「私は海塚と言います。見たまま通りの一般人です。こちらはメアリーちゃんです。分け合って今は私の側にいます」
「補足といえば伝説のあの本を持つ男よ。あなたも聞いたことあるでしょ?万年筆術師って名前を」
彼女は恐ろしく怯えた顔で私のことを見る。
「だからあの時……今までの行い恥じてお詫び申し上げます。その反省として切腹させて頂きます」
彼女は一つの剣を持ち、自分の腹に刺そうとしている。
「いや、待ってください。何か知りませんが、ここではやめてください。それにあなたの綺麗なお腹をこれ以上汚すところは見たくたいです」
「やはりあなたもそう言うのですね。私を女だと」
悲しみと悔しさを交えた顔と声で彼女は私に訴えかけてきた。メアちゃんはそんな私にむっとした表情で睨んで来る。どうやら、彼女が女であることに今回の件が深く関わっているようだ。
「私と共にあなたの頼み事を解決しましょう。それが私があなたに捧げる唯一の許しです」
「……はい」
彼女はその剣を彼女の背中に抱えている鞘に戻した。
「ところで向かう場所は?」
「出かける準備をしたら案内します」
そう言われたのでメアちゃんと私は外に出る準備をする。もちろん、戦いに挑める姿である。
赤いジャケットに黒いズボンを身に付けてリュックを背負った私と先ほどセロリアさんが置いていったであろう黒いドレスを身に付けてピンクの傘を持つメアちゃんが彼女の前に現れる。
「では、参りましょうか?」
私たちは扉から出ようとした。しかし玄関の扉は壊されたままだった。
「これじゃあ、泥棒が来るわね」とメアちゃんは言う。
「こちらもその許しの一つとして失敗した際の保険として入れておいてください。双治祈」
彼女は指を動かしながらそう言った。扉がどういう原理か分からないが、みるみる元に戻っていく。ありえない例えではあるが、まるで誰の手も借りずに砂浜だったものが自ら城になるような感じで形作られていくような感じである。
私がその扉を触ったり開け閉めしたり、鍵を閉めてもいつも使用している扉と何も変わらなかった。
「ありがとう」とそう言いながら、私は自分を含め三人出たことを確認しつつ扉の鍵を閉めた。
「では、付いてきてくださいませ」
そう言われて女性の後ろをメアちゃんと共に付いていくのだった。メアちゃんは何やらスマホで例の二人と文面での連絡を取り合っているようだ。




