1節 運と能と金
大きなその部屋には三つの大きな机とそれぞれその下に四つの椅子があった。机の上に二から五と書かれた看板と六から九の書かれた看板と十から十三と書かれた看板が三つ伸び上がっていた。
私はこれがトランプの生き残った数字と直感した。やはり一は生き残ることは出来なかったようだ。
「海塚さん」
私を呼ぶ声に目を向ける。いつの間にか私の側にいたメアちゃんだった。
「生き残れたんだ」
「えぇ。私、トランプの数二だったけど、一の人がいたから勝てたの。それよりも私、このゲームで勝たなくてはならなくなった。あなたをも潰してまでやらないといけなくて」
「誰かに何か言われた?」
「言われたのではなく、やられた」
「何を?」
「私の姉……セロリア姉さんを。私はその敵討ちをしなくちゃならないの。私、本当はメアリアって言うの」
私が口を開こうとした時だった。またアナウンスがかかる。
『見事な戦いぶりだった。それは褒めてやろう。しかしここでとあるゲームをして二名だけが私に会える。君たちはここで本当の賭け事をしてもらう。金のな。もちろん、『金』に値する物ならそれをかけてもらっても構わない。ちなみに君たちもまた負けたら同じように落ちてもらう。それを決めさせてくれるゲームで取っておきのといえば『大富豪』だろう。座る席はそれぞれトランプの数に当てはまる場所だ。ん?生き残りは三人だって?それはその時に話させてもらう。とにかく楽しんでくれたまえ』
メアちゃん……いや、メアリアは私のことをお構い無しに自分のトランプの席に座る。私はその横の席に座る。
「これはラッキーだねぇ、海塚君」と聞き覚えのある男性の声。
「図書室ではさんざんお世話になりましたね」とこちらも聞き覚えのある女性の声。
「いてっ。まだ傷癒えねぇよ。ったく、何で『無』がいるんだよ」と眼鏡を支ながら痛そうにしている男子学生の声。
そう、私の机には最悪のメンバーしか揃っていなかった。私から見て右にいるのは図書館であの本と初めて出会った時に火を使ってきた女性。そして目の前にいるのは『止』という筆術を使用するあの眼鏡野郎。最後に残った左側の男性は図書館で氷を使用してきたあの男性だ。
奴らが狙ってるのはこの本だ。ぶっちゃけ私は今、お金はあまり持っていない。奴らは今、この本を喉から手が出るほど欲しがっているだろう。ならば賭けてやるか。さっきの戦いではメアちゃんのことを思っていたら勝てた。今度はこの本を思えば勝てる……はず。
この机の下にある引き出しのようなボックスに入れればいいようだ。
他の三人も入れたようだ。机の真ん中の上のランプが赤く四回点滅した。すると近くに先ほどの女性が来た。私はその人に「先ほどはどうも」と会釈しながら言うと彼女は鳩が豆鉄砲を食らった顔をした後、首を傾げてカードを配る。
数字を順序よく入れ替える。一と二だけ右に持っていく。
「都落ちやJバック、八切りなど使用できます。また筆術を使用してのゲームも可能です。ちなみに紛失した場合はこちらが対処するのでその場でお待ちしてください。それでは、皆さん。用意できましたか?」
女性は四人のそれぞれの顔を見る。四人は首を縦に振った。
「では、順番を決めます」
ビー玉のような玉を彼女は真ん中に持っていき中指と親指をこすって回した。動くビー玉は眼鏡野郎のところで止まった。
「そちらの方から女性が最後の順番で回ります。では……開始!!」
私たち四人のイカサマ付き大富豪がついに幕を開けた。




