7節 月の裏は何も無いかのように暗い
掲示板には最後の生き残りの二名が表記されていた。
『ラストステージ
最終戦 海塚航平 VS 月野輝夜』
最後になってフルネームで出るのか。ってか月野輝夜って何?かぐや姫のアレですか?月に帰っちゃうあの人ですか?
「さて、この部屋も最後になりますね。お互い準備はいいですか?」
「えぇ」
いや、待て。何で着物。教師か?いや、絶対生徒だろ?
「海塚さん?」
「あっ、はい。大丈夫だったです」
大丈夫だったですって何だよ。インパクトガールのせいで間違えたよ。
「では、始め」
着物を着た目の前の女性は文字を書いて言う。
「表月」
彼女の後ろから眩しい月が現れる。
「月見」
体が重い。骨が軋み出しそうだ。何とかしなくては。
「無攻」
何も起こらない。なんだ、この圧迫感は。
「無血」
ダメだ、効かない。
「無権」
よし、軽くなった。権利はないと自由になれるからな。あの月さえ壊せば。私は月に向かって拳を引き寄せながら持っていく。月に向かって腕を伸ばす。
「あら、残念。反月」
壊すどころか私が吹き飛ばされた。あの月はただ眩しいだけではないのか。眩しい?それだ。
「月って光がないと暗くなるよね。まるでその裏のように。光無」
私は走りながらそう言って月に拳を一撃食らわせる。月にヒビが入ってきた。近くにいた彼女はにこやかに笑う。
「本当に残念ね。私、月なんてたくさん増やせるのに。増月」
私のいるところから円を描いて三百六十度に月が増えた。体が軋むのはそれ以上だろ。いや、潰れる。それは困る。
「無海」
月の下で波音が聞こえる。そして三百六十度の月が一斉に消えた。
「無束」
「体が動かない」
「無寝火傷」
「あつい……ねむい……でもあつい!!」
そう叫びながら彼女はその場に倒れ込んだ。
どうやら、決着はついたようだ。
「勝者、海塚!!あちらの門から階段を上がって行ってください」
私は言われた通りに行く。月野さんの姿はいつの間にか消えていた。静かな部屋を背にして私は階段を駆け上がる。大きな部屋が姿を現した。




