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第六十二話︰codependence

 ※※※


 「能力のコントロールは、こころのコントロールなのです。」


 マルニイの背伸びした声音が聴こえる


 マルニイの声が好きだ


 大切な わたしの親友


 ※※※




「能力のコントロールは、こころのコントロールなのです。」

 わたしの目の前に居る金髪の子は、そう云って胸を反らした。観るからに高貴な雰囲気の漂うまるでお姫さまの様なこの外国人の女の子は、凄く素敵だった。わたしも、こんな風に産まれたかったと思う。しなやかに揺れる金髪は、より一層その高貴さを際立たせていた。突然、能力をコントロールする方法を教えるからって教室に走り込んで来た時はびっくりした。わたしの事知ってた事もびっくり。なにがなにやらわからない。真知も教室に居ないし、わたしどうしたらいいのかわからなかった。彼女に云われるままに、学校の裏山へ登った。こんなところには来たことが無い。実際何も無いし、道らしい道だって無い。人が登る事なんてきっと無いに違いない。そんなところに彼女はわたしの手を引いて、ずんずんと登って行くのである。見た目とは違い、随分とワイルドな人なのかも知れない。

「さあ、観季さん。ゆっくり深呼吸して。」

 すぅぅはぁぁ

 素直に従う。きっと、そのときのわたしはまだ、混乱していたんだろうと思う。この人がなんで、何をしようとしているのか? とにかく、早く解放されたかった。

「こころの状態をコントロール出来れば、能力はコントロール出来る様になります。」

 能力って、やっぱり、わたしのアレの事なんだろうなあ。真知がこの子に話したのかなあ。この子、真知の何だろう。わたしの知らない真知が居る事実が、わたしを不安にさせた。

「観季さん、私の動きに合わせて動いて。私と同調させて。」

 金髪の女の子は、なんか怪し気なゆっくりした動きを始めた。まるでそれは太極拳の様だった。大人しく従い、変な動きに合わせる。合わせるとなんか、この子とこころが近付いた様な、そんな気がした。

 真知がわたしの事思って、この子に頼んだのかなぁ。なんでこんな事になったんだろう。

「赤部さんの事、好きなのね。」

 え? 唐突な彼女の言葉に戸惑った。なに?

「こうして、同調させてると、お互いの心が通う様になるのですよ。」

 そう云って笑う彼女は綺麗だった。この人の心には、黒いものなんてないんだろうなぁ。そう思う。益々、自分が嫌になる。

「私にも、あなたにとっての赤部さんの様な、大切な人が居るの。」

 わたしは始めてこの子に興味を持った。先程の、容姿が綺麗とか、そういう表面的な事では無くて、簡単に云えば、この子の事をもっとよく知りたいと思う様になったという事。そんな事は、真知以外には、始めてだ。

「どんな人? この学校に居るの?」

 意図せず、自然に問い掛けていた。真知が観ていたら卒倒する位に驚いた事だろう。わたしが自分から真知以外に積極的に話し掛ける事など無いからだ。彼女も驚いている様だった。その碧い瞳が一瞬大きく見開かれた。でも、すぐに優しい顔になって話しを続けた。

「ずっと遠く、もう二度と逢えないかも知れない位に遠く離れた処に居るわ。」

 そう云って、その碧い瞳は、空の彼方を見上げた。

 彼女の言葉は暗に、相手の死を想わせる口ぶりだった。それでいて、その死を認めたくない感情が溢れ出していた。わたしには耐えられない。もし真知が居なくなり、二度と逢えないとか、考えるだけでも気が狂いそう。

「その子が、この訓練を教えてくれたの。」



  ※※※



「ニーナの奴、待ってろって云ったのに。」

 教室に戻ると、ニーナの姿は無かった。どこ行きやがったんだまったく。携帯を取り出しニーナに掛ける。そういえば、ニーナに掛ける事って無かったんじゃないか? 掛けた記憶は無かった。

 五回程コールした後、プチッ っと切られた。


 え?


 なに?


 なんで?


 なんかしたっけ? 自分


 いやいや、なんか事件に巻き込まれたとか?!


「なに狼狽えてんのよ。」

「うわっ! 赤部、なんで此処に? お前の教室は隣だろ!」

「いやぁ、観季も居なかったんで、もしやと思って来てみた。やっぱり、ニーナって子も居ないのね。拉致られたな、これは。」

 ニーナの奴、まったく無茶しやがる。

「探しに行くぞ。」

「は? なんで?」

 赤部は心底不思議そうな顔で首を傾げていた。

「別にニーナって子は危ない子じゃないんでしょ?」

 まあ、確かに、危ない奴ではない。危なっかしい奴ではあるが。

「それに、観季も付いて行ったって事でしょ。なら、問題無いんじゃない?」

 まあ、確かにそうだが。なんだろうなぁ、このざわざわした感じ。

「ふっ、目の届く処に置いてないと、落ち着かないって感じね。」

「別にそんなんじゃねえよ。」

 過保護って事かよ。いや、でも、ニーナってやっぱり、放っておくとなにしでかすか心配だしなあ。

「じゃあね。私は帰るわ。」

 そう云うと赤部は、スタスタと廊下を進んだ。

「なあ、赤部。」

 なんとなく、声を掛けてしまった。ふと思ってしまったんだ。もし、もし……

「観季の影響が無くなったら、テニス続けるのか?」

 赤部は、一瞬立ち止まったが、すぐにまた歩き出し、問い掛けに応える事は無かった。


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