↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の姫さまが空から降ってきたとき  作者: 杉乃 葵
第四章 麗美香

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/162

第四十五話『油断大敵』

 目の前に立っているnullさんは、初めて逢ったときと同じ、女子生徒の制服を着ていた。そして、胸がでかかった。


「ああ、この胸か? 急に成長してな。びっくりだ」


 ええええ?!


「もちろん、冗談だが。お前が、巨乳好きだと思ってな。再会を祝うサービスにと思ってな」


 nullさんは、楽しそうににやにやと笑う。


「そんなサービスは要りません」


「おしゃべりは後だな。こいつを屋上全体に撒け」


 nullさんから渡されたのは、タンクとそれに繋がっているホースだった。


「おい、そこでハルバード振り回している金太郎みたいな奴!」


 あ、やっぱり、みんなそう思うよね。麗美香ってどうて見ても金太郎。


「き、金太郎!?」


 麗美香はそう思ってなかったみたいだな。


「今から液体を撒くが、人体には影響無いから気にせずに続けろ。それと、後だな少しだけ時間を稼いでくれ」


「時間稼ぐってどのくらいよ! まじでそろそろやばいんだけどぉ!」


 最後の力を振り絞るようにハルバードを横一線、周りにいた怪物どもの首が飛ぶ。見事なもんだな。


「そうだな。あと三分といったところか」


「上等ううぅぅぅ!」


 麗美香は少し元気を取り戻したようだった。残り三分に全力を投入するつもりなのだろう。


 ホースの先に付いているスイッチを押すと、タンクの中の液体が噴出された。消火器みたいなもんだなと思った。


 nullさんも同じようにホースから液体を撒いていた。


「使い切るまで全体に撒け」


 液体のせいで、麗美香の手が滑らないか気になったが、問題なく彼女は闘っているようだった。

 俺たちの方に来ようとする怪物どもを的確に倒したり、奥へふっ飛ばしたりしていた。

 中央で戦っている麗美香に掛からないように注意しながら、屋上全体に撒く。


「nullさん! 全部使い切りました!」


「よし、おい! ニーナまだか!?」


 え? ニーナ? あいつは帰ったんじゃ?


 紅いタンクを2つ抱えて、ニーナが屋上にヨロヨロと現れた。


「重い……」


 ニーナはタンクを降ろして、その場に倒れた。


「よし、次はあのタンクで撒くぞ。急げ」


 nullさんの指示に従い、ニーナの持って来た紅いタンクの1つを担ぐ。

 倒れているニーナが気になったが、いまはタンクが最優先だ。


「いいか、こいつは、今いる場所より後ろには撒くなよ。脱出できなくなるぞ。そして、今の場所より前には絶対に出るな。わかったな!」


 nullさんの真剣な声に、ビビりながら頷く。


「おい! 金太郎! 今から撒く液体には掛かるなよ。動けなくなるぞ。闘いながらこっちに戻って来い」


「なに、無茶言ってんのよ!」

「怪物どもと一晩過ごしたいなら止めはせんが?」


 にやにやとnullさんは笑っている。


「勝手言ってくれちゃって! 覚えとけよおぉぉ!」


 麗美香は叫びながら、闘う位置取りを変え、徐々にこちらに近づいて来た。


「金太郎の周りは、わたしが撒く。おまえは、それ以外を頼む」


 紅いタンクの液体を撒く。麗美香に掛からないように注意しながら。

 暫くすると、怪物どもの動きがおかしくなってきた。脚が地面から離れなくなったようだ。動こうとして倒れた怪物に、なにやら粘液が絡みついている。これは?


「よし、固まり始めたな。まあ、あれだ。その、とりもちみたいな物だ。二つの液体を混ぜると固まるように造ったんだ。どうだ? いけてるだろ?」


 とりもちって言うと、ネズミとか捕まえるやつだったっけ。

 ゴキブリホイホイみたいな感じか。


「これ造るのに、数ヶ月時間が掛かってしまってな。でもまあ、間に合って良かったよ。おまえってやつは本当に性急に過ぎる。もう少し時間をくれてもいいだろうに」


「今までずっとこれ造ってたんですか?」


「そうだ。中々上手くいかなくってな」


 なんで、こんな物を? というか、


「こうなることが、わかってたんですか?」


「ん? まさか。可能性はあると思っただけだ。そのときに、どうすればいいか、あらかじめ考えて用意しておいた。それだけだ」


 nullさんは、さも当たり前のことだろう? と言わんばかりだった。


 怪物どもの動きが完全に止まった。いや、止まったというより、動けなくなって藻掻いていた。


「ちょっとぉ〜、しゃべくってないで、手を貸してくれない?」


 麗美香の方を見ると、こちらに戻り切れず、途中で脚が、地面に引っ付いてしまったようだった。

 三メートルぐらい先。俺も手が届かない。


「靴脱いで、こっちまで跳べるか?」


「こんな距離跳べるわけないでしょ!」


 怒られた。あ、そうだ。


「そのハルバードを使って、棒高跳びみたいにやればいけんじゃないか?」


「おー」


 麗美香は、やる気になったようだ。まあ、麗美香なら、できそうだしな。


 麗美香は靴を脱いでその上に立ち、ハルバードを構えた。助走が付けられないから、スカートが地面に付かないように注意しながらぐっとかがみ、跳び上がってハルバードの柄を地面に突き立てて、俺の方に向かって来た。


 ハルバードから手を離すとき、ふんっとさらに飛び跳ねた。

 胸に飛び込んで来た麗美香を、俺は受け止める。

 どんっと受け止めると、勢いで後ろに数歩下がった。


 1日に2回も、こいつをお姫様抱っこするとは思わなかった。


「あんたにお姫様抱っこされるなんて、最悪ぅ〜」


「いや、二回だし」


「えっ?! いつ?! うそ!」


 麗美香は、腕の中でジタバタと暴れた。


「ほら、あいつに倒された時に……」


 メイの方を見上げると、まだ儀式を続けていた。


 しまった! まだ歪は閉じてないんだ!


 新たに落ちてきた一体が、動けなくて藻掻いている怪物の上に着地した。

 そして、こっちに飛び掛かろうとしゃがみこんだのが見えた。


 怪物の上に落ちたから、こいつは動ける。ここまで跳んで来れるのか?


 麗美香のハルバードは、さっきの棒高跳びでとりもちの中だ。恐らく取り出せない。


 そして怪物は、こちらに向かって跳躍した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。