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隻眼の竜  作者: 白木
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矢内健二と言う男

 矢内が言うと、


「いえ、隻眼の鳩を否定している訳ではありません」

「えっ!」


 磯川始め、周囲がその言葉に静まった。川上氏も香月の顔を注視する。


「可能性としまして、その鳩を訓練する幾つかの方法があります。しかし、私が選択枝を種鳩として一番にあげたのは、矢内さん、貴方はヤンセン系×アンダーソン系の鳩達と同一条件で使翔する事にあります」


 川上氏が言う。


「おいおい、一男君。否定してやってくれよ。希望を持たせたら、鳩も矢内さんも可哀想だよ」


 正論だ。磯川も、香月も頷いた。


「そうですね・・磯川さんの言う通り、否定しましょう」


 香月が答えると、矢内ががっくり肩を落とした。矢内が何をこだわるのか・・それは、ハンディを背負うから正常な者と同一な行動が出来ないと最初から決め付けて、否定する事が納得出来ないからだ。その不憫を矢内は強く心に持っている。そして、それは矢内の過ごして来た人生観の中にある・・。徐々にその事が明らかになるが、この話はそこまで。

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