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噂話

少し日が空きましたが第三話。

文章のぎこちない感が凄い。

 「ねーねー人喰いジェントルマンって知ってる?」


 「えー何それ、なんかの怖い話みたいなやつ?」



 「違う違う、最近流行りだした噂だって」

 「うーん、聞いたことないかも。どんなやつ?むしゃむしゃーって人を食べちゃうの?」


 「食べないって!ていうか人をむしゃむしゃ食べてたら、全然ジェントルマンっぽくないから」



 あははは



 「話し戻すけどそれでね、その人喰いジェントルマンっていうのはね、ジェントルマンっぽい格好をしててね、夕方のこの街のどこかに現れるんだって、しかも目の前に突然だって」


 「ジェントルマンっぽい格好って」


 「ちょっとー!人がせっかく教えてあげてるのに、笑って茶化さないでよ。もう!」


 「ごめんごめん、ちゃんと聞くから、ゼヒオシエテクダサイオネガイシマスー」


 「なんで棒読みなの……まあいいや、それでね……そのジェントルマンに会った人はね、パッって一瞬で消されちゃうんだって!しかも消された人は、みんなに存在したことを忘れられて、一生そのジェントルマンの奴隷にされちゃうんだって!やばいでしょ!?」


 「うーん……会った人消されて、みんなに忘れられちゃうなら噂にならないでしょ、しかも奴隷とかなんか変態っぽいし、どうせ男子が流した噂っぽくない?」


 「そうかなー、でもこれすっごい流行ってる噂だよ。きっと何かあるんだって」




 ここは、不知火と歩夢の所属する2年D組の教室である。現在は休み時間で、どこのクラスでも賑わっている。


 普段の休み時間は机に突っ伏して寝て過ごす不知火だが、昨日夕方まで寝過ごした反省からか、今日は窓際にある自分の座席から、窓の外を眺めながら、クラスの話しに耳を傾けている。


 現在この学校でもっとも話題になっているのが、人喰いジェントルマンの噂である。


 この教室でも、大半の人がその話題で盛り上がっており、いつもなら、このような噂話に興味を示さない不知火も、自分の座席の目の前で、盛り上がるクラスメイトの女子二人の話を聞いているうちに、若干の興味を持ち、ふと違和感を感じた。


 (あらためて意識してみると、教室のどこでもこの話題でいっぱいだな。こんなに流行っているのに、クラスにも知らなかった奴がちらほらいるし、聖者の中に犯罪者が紛れ込んでるみたいな、気持ち悪い違和感を感じる)



 不知火は話しから感じた違和感について考えていると、背後から突然、背中への衝撃と共に、「えいさっ!」と言う掛け声が聞こえた。


 声の主はささっと不知火の目の前に回り込み、「歩夢ちゃんでしたー、どう驚いた?驚いた?」と、相変わらずのハイテンションで、駆けるように不知火に話しかけた。


 相変わらず元気な奴だなと、半分呆れつつも返答をする。


 「おはよう委員長。凄い驚いたよ、ところで突然どうしたの」


 「あーっ!あーっ!あーっ!また委員長って呼んだ。昨日あれだけ言ったのに!歩夢ちゃんって呼ぶって言ってたのに!酷いよ酷いや、不知火君の意地悪っ」


 歩夢は頬を膨らめせて、怒った様相で、ふんっと顔を横に逸した。


 「ごめんね歩夢さん……ついうっかり……僕って色々忘れっぽくて」


 不知火は申し訳なさそうに歩夢に謝る。


 「もう!不知火君は忘れっぽすぎるよっ!アルツなんとかだよっ!いい加減堪忍袋の緒が切れちゃうよっ」


 すでに教室での恒例行事となる、この二人のやりとりに、クラスメイトはまたやってると思いながら、遠巻きに二人の様子を眺めている。


 「ほんとにごめんって……」


 「メモ」


 「えっ」


 無言の間を打ち破った歩夢の唐突な単語に、不知火は反射的に声をあげてしまった。


 「もう忘れないように、メモするのっ」


 「分かった。もう忘れないようにきちんとメモするよ」


 人喰いジェントルマンの噂話の影響だろう、忘れるということに対して、少し過敏になっている歩夢は、いつも以上に食い下がる。


 不知火は、そんないつもより過敏な反応をする歩夢に、少しばかり疑問を感じながら、おとなしく従うことにした。



 『委員長を必ず歩夢さんって呼ぶ』



 「メモったよ。ところで歩夢さんは、僕に何の用だったの」


 「あっ!そうだった、えっと……大した用じゃないんだよっ、ただ不知火君が昨日遅くまで学校に居たから、帰りに人喰いジェントルマンに食べられなかったか心配で、確認にきたんだよっ」


 さっきまでの不機嫌は嘘のように、ビシっと楽しそうに敬礼をする歩夢。


 「確認って……教室にいるんだから確認も何も……」


 不知火は少し苦笑をする。


 「でもほら、話しかけてみたらパッって消えちゃうかもしれないでしょ、念のためだよ」


 「念のためって……なんか歩夢さんらしいね」


 不知火の笑い慣れていないような、少しぎこちない笑みを見て、歩夢は「私らしいって何よっ」と言いながらも、してやったりと、弾けんばかりの笑顔でその笑顔に応えた。


 歩夢の一挙一動は元気に溢れていて、自然と周囲の視線を惹きつける力を持っている。


 不知火は、そんな歩夢と話していると、なんとなく楽しい気分になる自分が居ることに、最近気づき、それを悪くないと感じている。


 とある理由から、普段は話しかけづらいオーラを纏っている不知火も、そんな歩夢の影響により、この時は普段のなりを潜めて、ごく普通の一般的高校生に見える。


 普段から正反対の理由で目立っている二人が、楽しげに話しており、また、容姿が整っている部類に入る二人の楽しげな光景は、少しばかり絵になることからも、クラスの視線も自然と集まってくる。


 自分たちに向けられる好奇の視線が、すこしばかり多いことに気づいた不知火は、「ちょっと歩夢さん」と、少し慌てたように不知火が話しかける。


 「何々、どうしたの」


 「歩夢さん、ちょっと周りみて、なんかみんなこっち見ているみたいだよ」


 「えっ」


 歩夢はすっとんきょんな声をあげて、周囲をキョロキョロと見回す。


 クラスメイトは、歩夢の突然の動作に少し遅れながらも、ほぼ同時に顔を逸した。


 「気のせいだよっ、誰も見てないよっ」と全く気づいた様子のない歩夢の姿に、クラス一同は、面倒な展開にならずにすんだと、内心ほっとした。


 そんなやりとりをしている内に、休み時間の終了を告げるチャイムが鳴り響き、ざわついていたクラスメイト達も、そそくさと自分の席に戻っていった。


 不知火は、授業が始まった後も、なぜみんながこっちを見ていたのか考えながら、なんとなく窓の外を眺めていた。


 窓に薄っすら写る自分の姿を見て、肩まで伸びた襟足と、右目を隠すように伸びた前髪が気になり、少し鬱陶しげにいじり始めた。


 不知火は、髪の毛と格闘しつつ、授業時間いっぱい考えたが、結局その理由はどれも的外れのものばかりであった。


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